エンジンだって見え過ぎちゃう



その先にはJ-79ジェットエンジンが。
F-104に使われてたもので、純粋なターボジェットエンジンです。
(噴流の全てをそのまま噴き出させ、その反作用を推力とする。
出力は大きいが、燃費はメチャクチャ悪い。さらにウルサイ)
日本ではこれも石川島播磨重工業がライセンス生産していたはず。

ターボジェット、しかもアフターバーナー付きですから、
ベラボ―な長さがあり、全長で5m超えます。
F-104の全長は16m前後ですから、胴体の1/3はほぼこのエンジンで占められてるようなものです。



これ、切断モデルになっていて、ありがたい事に、かなり判りやすい説明が付いてます。

左方向から空気が入ってくるのですが、まず左側で多段に重ねられた圧縮タービンのファンで
空気を次々に圧縮して高圧にします。
圧力が上がれば熱も上がるので(ボイル・シャルルの内、シャルルの法則による)
ここで空気は極めて高温、高圧になります。
それが燃焼室に導かれ、そこに燃料を噴射すると爆発的な燃焼を起こします。
これは圧縮空気の爆発的膨張に他なりませんから、その高速の噴流を、
そのまま後ろ向きに噴出させ、その力の反作用で機体を前に押し出すのがジェットエンジンの原理です。

ただし最初にあった圧縮タービンの動力をどこかで得る必要があるわけで、
これを燃料室の後ろのタービンで回収します。
高速噴流が風車のようにこのタービンのファンを回すため、
その力で前部の圧縮タービンを回すのです。
でもって、この部分、日本語だとこれまた排気タービンなんですね。
まあ、確かにその通りではあるのですが、初めて知りました。

ちなみにこの排気タービンの軸の先にさらにプロペラを取り付け、
圧縮タービンと一緒に回せばターボプロップエンジンになるのです。

それだとプロペラを動かす分、排気のエネルギーは失われ、ジェットの推力は落ちますが、
プロペラ推力を使った方が燃費は良くなり、このため低速時の飛行には向いてます。
その状態でもピストン式のレシプロエンジンよりはるかに高出力ですし、
エンジンも小型にできるのです。また、上下、左右運動するピストンがないので振動もありません。
(その代わりピストンエンジンに比べればずっと燃費は悪いが)

つまり、それほど高速で飛行せず、それでも高出力がいる機体では、
レシプロエンジンでもジェットエンジンでもなく、ターボプロップエンジンの方が
小型で高出力となり、さらに不快な振動もなくなりますから、適している事になります。
(ただし繰り返すが燃費は悪くなる)
こういった条件で最初に思いつくのはヘリコプターですが、
実際、現在のヘリコプターのほとんどはターボプロップ、というかガスタ―ビンエンジンです。

噴流の力を推力として全く使わす、
全てを軸回転に全て振ってしまったエンジンがガスタービン エンジンです。
(厳密にはジェットエンジンもガスタービンの一種だが)
噴流は軸を回転させるのに、そのエネルギーを使い切ってから
排気されるため、ジェットエンジンほど高速高温では無く、普通に放出される事になります。

ちなみにガスタービンは、ヘリコプターなどだけではなく、陸上車両にも使われており、
アメリカの戦車、M-1のエンジンはガスタービンになってます。
つまり、あの戦車のエンジンにはピストンがありません。
このため極めて高出力なんですが、その代わり燃費も悪く、
湾岸戦争では、その燃料補給に担当者が頭を抱える事になったのです。



高速高温の噴流は最後に排気されて推力を生むのですが、その前の部分、画面左側が
アフターバーナーの燃料噴霧装置になってます。

ジェットエンジンの出力である噴流の力は、その流速と質量によります。
とくに速度は2乗(速度×速度)で出力に影響するので、流速が早いほど出力は高まります。
そこで排気タービンから出て来た高速の噴流に、ここで燃料を噴霧すると、
再度爆発的燃焼が起こり、噴流は極めて高速になります(音速を超えてくる)。

これがアフターバーナーと呼ばれるもので、離陸時や戦闘時、
すなわち高速、高出力が必須の時、
ポチっとな、という感じに使用する高出力化装置となってます。

ただし、燃料ばら撒き状態になってしまうため、その燃費は最悪で、
通常の戦闘機では制限時間内でしか使えません。
あっという間に燃料が空になってしまうのです。
機種にもよりますが、1回の使用は10分以下程度でしょう。

ちなみに厳密にはアフターバーナー(事後燃焼)と呼ぶのは
ゼネラルエレクトリック社のエンジンのみで、ロールス・ロイスのジェットエンジンだと
リヒート(再加熱)、プラット&ホイットニー社のエンジンではオグメンター(増大器)と呼びます。
まあ、アフターバーナーで通じるとは思いますけどね。
私も記事中で使い分けなんてしてませんし(笑)。



ちなみにこちらはT-4に使われてる国産ターボファンエンジン、F3。
例によって石川島播磨重工業製です。

ターボジェットでは無く、ターボファン、アフターバーナー無し、
さらに出力も低め、という事でかなり小型になってます。
本体だけなら(ノズル無し)1m60cm以下の大きさしかないので、車にも詰めるような気が(笑)。

吸気部の前にあるのが、推力用のファンで、
これの軸を先に見たような排気タービン部の動力で回し、推力の一部としてます。
ターボプロップのプロペラの代わりにファンが使われてるわけです。

排気のエネルギーの一部をファンの回転に回すことでこれを推力にしてるわけで、
ターボプロップとターボジェットの中間、というべきエンジンになります。
ファンに推力を担当させることで噴流の推力は落ちますが、
燃費が向上するうえに、さらに噴流の速度が低下して騒音も減ります。

ターボプロップの機体より高速だけど、ターボジェットほど高速が必要では無い機体、
すなわち音速直前の速度で飛ぶジェット旅客機や輸送機に使われてたんですが、
今では戦闘機などにも、これが使われてますね。

ちなみに前部ファンで起こされた噴流はエンジン周辺の通気用のダクトを通って、
エンジン後部から噴き出すようになってます。
これは推力の一部となるとともに、エンジンの冷却にもなってるらしいです。


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