■街は神様であふれてる

もう一点、台湾を理解するポイントとして、道教の存在をあげて置きます。
アジアの旅行記のたびに道教には触れてるので、
ある程度は理解していただいてると信じてますが(笑)、
再度ここに確認して置きましょう。

単純に言ってしまえば、中国本土の土着宗教が道教で、
露骨に現世利益を願う宗教であり、福が来て商売繁盛、
大金持ちになって長生きしたい、といった欲望を直接、神様にぶつける宗教です。

それをぶつける舞台が道教の祠、道教廟で、日本の神社みたいな感覚、
あるいはそれ以上の密度で台湾中にこれが存在します。

日本の神道をもう少し俗っぽくしたのが道教のイメージに最も近く、
日本でも家内安全、交通安全、といった神社で祈願をし、お札をもらって来ますが、
(一部の大規模寺院では何の疑問もなくこれをやってるが、本来は神社の仕事だろう)
そういった、ラッキーを我にという祈りが、より生活に密着してるのが道教です。

が、中国本土では1949年に中華人民共和国が成立してしまいます。
現在の中国ですが、これは共産主義国家です。
そして共産主義はマルクスさんのありがたい唯物主義により、
宗教を精神の麻薬である、として排斥しております。

実はマルクスどころか社会主義についてすらよく理解できてなかった
と思われる毛沢東閣下ですが、なぜかこの点は熱心で、
国内からあらゆる宗教を追放、神は死ななかったけど出て行かされた、
といった状況になってしまいました。
ソ連、北極、南極と並ぶ、神様不毛地帯の誕生ですね。

迷信である、とされた道教は、中国本土からは徹底的に駆逐され、
二千年を超えるであろう歴史は突然、断たれてしまうのです。
多くの貴重な廟や神像が破壊されたと見られています。

ただし結局、毛沢東が死んだあと、1980年代に入り道教は徐々に
その存在を認められ、復権してくるのですが、30年に渡る断絶は大きな爪痕を残し、
今ではかつてのような道教文化は中国本土には見られません。
(少なくとも私が見て回った上海、蘇州、深圳(シェンゼン)ではそうだった)

ところが、国民党政府が押し寄せた台湾はその文化が生き残り、
さらに日本統治時代も神道との併存が認められていたので、
ほぼ往時のまま、その文化が残る事になりました。
(日本の植民地政策はあちこちに日本式の神道の神社を建てる、
という芸術的なまでに子供っぽい事をやってるが、
思ったほど現地の宗教を否定もしなかったように見える)

といっても、台湾に中国人が多数移住し始めたのは17世紀以降なので、
それほど歴史ある建物とかはないのですが。

ちなみに、あらゆるものを神様にしてしまうのが道教で、
釈迦仏、阿弥陀仏といった仏教の仏もその祭神にしてますし、
孫悟空と三蔵法師も道教では神様の一人です。
関羽、趙雲といった三国志の英雄も神様になってます。
さらには日本統治中には、弘法大師、すなわち空海まで台湾では祀られ始めてました。

ここら辺りはヒンズー教にも似てますが、なんとも面白い宗教ではありますね。



代表的な道教廟。
こういった派手派手な建物が街中にあります。
日本の神社より、その数は多いと思います。



一見すると街中のビルですが、よく見ると1階は道教廟の門になってます(笑)。
この奥に中庭のような空間があり、そこが道教廟でした。



廟の中も基本的には原色バリバリな空間になっており、
中国で縁起のいい色とされる紅(赤ではない)を基調に塗り上げられてます。
(日本の神社が赤い鳥居を持つのは、中国圏の影響だろう)
余談ですが、中国共産党があれだけあっさり全土を席巻してしまった理由に、
冗談でも笑い話でもなく、連中の旗が縁起のいい紅色(いわゆる赤旗)だったから、
というのがあるとされてます(笑)。

ちなみに黒が縁起が悪い(死につながる色)とされるのは日本と同じですが、
白もあまり縁起がいいとされない事があるので要注意。

道教では、日本の八百万の神にのように、無数の神様が居り、
廟ごとにそれぞれが祀られてるのも日本の神社に似てます。
ただし上の写真のように建物はド派手でバリバリ系で、日本の神社とはかなり異なりますが…。
ちなみ賽銭箱は無く、ろうそくや線香を買ってお供えする、という形になるようです。
(この辺りは蘇州の禅宗寺院でも同じだったので、中華宗教システムなのかも)

さらにそこでもらって来る御札を
(日本のように販売してるのでなく参拝したらもらえるようだ)
家に帰ってきて門や玄関に貼る、というのも普通に行われてます。
この辺り、香港やマカオでも見ましたが、その数は台湾が圧倒的で、
それこそどこにでも貼ってある、という状態でした。



こんな感じに。
縁起のいい紅のお札を家の玄関に貼る、というはごく普通にどこでもやってました。
どのくらい普通なのか、というと、



メイド喫茶店の入り口に貼ってあるくらいにです(笑)。

とりあえず、この道教文化が徹底的に行き渡ってる、
という点も、今後の記事を読むうえで覚えておいてくださいませ。


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