■それは木製だった
でもって、意外な発見となったのが、このプロペラ。
グリフォンスピットになってからスピットファイアのプロペラは5枚に増加したんですが、
これ、よく見ると木製ペラじゃないですか。
ドイツ機ならともかく、イギリス機で木製ペラって、またタイ空軍博物館の皆さんてば、
オシャマさん、ウフフ…とか思ってたんですが、
ただの展示用ダミーにしてはヤケにデキがいい。
破断防止に回転方向に金属のカバーまで付けてるし。
…あれ?ひょっとしてオシャマさんなのは私の方(笑)?と思って調べて見たら、
グリフォンスピットになって5枚ペラとした時、その重量増加を嫌って、
高圧縮をかけた上にレジンで固めた木製プロペラを採用した、
というイギリス人のコメントをネットで見かける。
マジですか?とあわてて2011年のRAF博物館の写真を見直したら、
あれ、ホントだグリフォンスピットのペラは木製じゃないですか!
初めて知った、というか散々見ておいて、全く気が付いてませんでした。
明るい環境で機体を展示してくれるのはありがたいなあ、と思うのと、
まさかタイ空軍博物館に教えられる日が来ようとは、と複雑な思いがします(笑)。
やや後方からUSSRで撮影してみる。
水滴風防になった上、プロペラも5枚と
ここまで来ると、もはやスピットファイアI の面影がほとんど無いですね。
主翼上面の凸型のでっぱりは20mm機関砲を収容するためのもの。
でもって胴体横に開いてる丸窓が偵察カメラを積むところです。
なのでこの機体は目標の上空で機体を傾けて旋回し、カメラを地上に向けて
パイロットが目視で確認しながら撮影する、という方式になってます。
上を通過してパシャリと撮影ってわけではないんですね。
余談ですがスピットファイアは実は偵察機としても結構活躍してまして、
昼間にベルリン上空を飛んだ最初の機体はスピットの偵察型ですし、
(夜間を通じての可能性も高いが確認できず)
戦艦ビスマルクが泊地を出港した、というニュースを
最初にイギリスにもたらしたのもスピットの偵察型です。
さて、残りの機体も見てしまいましょう。
ここの展示の8割りはヘリコプターで、左側に星型エンジン世代の旧式機、
中央部にやや新しい世代の機体、という感じでズラリとならんでます。
ただし旧世代機のコンディションはボロボロで、
あまり見る価値はないかもしれません。
あちこちで、それこそ日本国内でも見れる機体が多いですし。
まずは比較的新しいベルの206B3。
1960年代に発売された中型ヘリのベストセラーで、世界中でまだ現役の機体。
どうもカナダから中古で購入した機体のようですが、塗装からして要人輸送用ですかね。
こちらはちょっと珍しい2発エンジンヘリ、カマンHH43B。
カマンはいまいちパッとしなかったアメリカのヘリコプターメーカーです。
この機体、横から見ると単発エンジンに見えますが、
実は横に2台エンジンが並んだ配置になってます。
ヴェトナム戦でアメリカ空軍が救護、パイロット救助用に使っていたので、
それを供与されたものじゃないかと。
タイ空軍は4機運用していたみたいですが、扉に書かれてるように救難用機でした。
さりげなくUSSRで撮影。
ヘリコプターがエンジンの力でローターを回すと、作用反作用の法則により、
ローターから機体に対しても、同じ大きさの反対回転の力を受けます。
機体はローターよりはるかに重いので、高速回転することはありませんが、
それでもグルグル回ってしまうのは避けれません。
なので、通常のヘリコプターは尻尾の先にローターをつけ、
反対側に機体を引っ張る事で回転を防いでます。
(力点が重心から遠いほど小さな力で済むので尾部のローターは小さい)
対してこのヘリコプターのようにローターを二つつけて、
反対方向に回す事でそれぞれのトルク(回転力)を相殺する、という設計もありです。
ただ、通常はタンデム、縦に二つ並べる事で、
重心点に対し前後で反対のトルクがかかるようにし、回転を防ぎます。
横に並べても出来なくはないですが、他にあまり例を見ないですし
このなんだかよく判らないような状態の尾部の垂直安定板を見る限り、
あまりうまい設計ではなかったような気が…。
ついでに注目はエンジン部から後部に導かれた巨大な排気管。
HH43は当初、星型エンジンのR1340ワスプを積んでいたのですが、
B型からはガスタービン(ターボシャフト)エンジンのライカミングT53を積んでます。
一種のジェットエンジンなんですが、排気エネルギーのほとんどを
ローターの回転に使ってしまってますから、
排気にほとんど推力は無いはずです。
それをわざわざここまで引っ張り出して、
さらに下向きに排気する理由はなんだろう、
としばらく考えたのですがよく判らず…。
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