■スピットファイアの館



はい、再びやって来ましたタイ王立空軍博物館。
さっそく行ってみましょうか。



すでに1号館と2号館は見ておりますから、その間を抜けて裏に回ります。
この辺りも何の案内も無いので、初めて来た人にはわかりにくいでしょうね…



というわけで、裏手のハンガーにやって来ました。

ハンガーの展示と言うと、実際の空軍基地のハンガーを利用した
イギリスのダックスフォード、コスフォード、
アメリカの空軍博物館の実験機の館(閉館予定だが)
を思い出しますが、ここのは博物館用に新たに建てたものでしょう。
ここは空港からも、空軍基地からも孤立してる場所ですし。

でもって、このハンガーの周りにも屋外展示の機体がズラリと並ぶんですが、
とりあえずこれらは後回しにして、ハンガー内部を見てしまいましょう。



内部はこんな感じ。
まあ、展示用だからなのかもしれませんが、
床はタイル貼りとなってます、このハンガー(笑)。

以前はF8FやF86F、F84、F-5Aなどもここにあって、戦後のタイ空軍の機体大進撃、
という展示だったのですが、現在はヘリコプターだらけ、という展示棟になってます。
あれ、そういえばF-5Eが展示から消えてるぞ、この博物館。
ひょっとして、例の士官学校オブジェ用に持っていかれてしまった…?



そんな展示棟の主ともいえるのが、これ。
スピットファイアのグリフォンエンジン搭載型。

スピットファイアの話を詳しくやるとエライ事になるので、
型番と分類についてキチンと知りたい人は、こちらを読んでおいてください。
タイは終末型ともいえるグリフォンエンジン搭載のスピットファイアを
30機以上、1951年から導入しています。

これは例のF8Fの導入と同じ時期であり、
F8Fが最終的に200機を越える配備となった結果、
あまり使い道が無くなったらしいスピットはわずかに4年の運用で引退しています。
ただし、タイに持ち込まれたスピットは全て偵察機能付きなので、
戦闘機ではなく、偵察機としての導入だったのかも。

でもって、この展示ではスピットの最終型ともいえる、
偵察型ののPR.Mk.19と書かれていますが、
どう見ても主翼から20mm機関砲が飛び出してますし(笑)、
主要下面にも武装用のハードポイントが見えてます。

よって、展示のものは戦闘機型のMk.14に偵察機能をつけた
FR.14だと考えるのが妥当でしょう。

約900機生産されたグリフォンエンジン搭載型スピットファイアの主力、
Mk.14は登場したころにはP-51B&Cは居るわジェット機の時代は来るわで、
すでに時代遅れになりつつあり、活躍の場は限られました。
(1943年末から生産開始、1944年前半から本格的な部隊投入)

このため総生産数の約半数、400機前後の胴体後部を改造し、
カメラを詰め込んだ偵察型のFR.14としてしまっています。
なのでスピットファイアMk.14の内、約半数は偵察能力も持ったFR.14なのです。

ただし、タイはFR.14、PR.Mk.19、
両方あわせて30期前後導入していますから、
PR.Mk.19もかつて持っていたのは事実です。

ついでにPR.Mk.19の中の1機はなぜかアメリカの博物館に寄贈され、
さらになぜかプレーンズ オブ フェイムの魔の手にかかって(涙)
勝手に魔改装されてしまい、現状は
シャックルトンの二重反転ペラ積んで(笑)アメリカで飛んでます。
(一部で有名な青のSpitfire N219AMですね)

これ15年近く前にチノのプレーンズ オブ フェイムのエアショーで見ましたが、
なんだこりゃ、という迫力のある機体になっておりましたが、
メチャクチャな改造でもありました。
なんで空軍の用の機体に二重反転ペラなのか、何の意味があって
ここまでして飛ばさなきゃならんのか、と思っちゃうところですが…。
あの博物館の功罪はいろいろあるなあ、と思ったり。

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