■それはやって来なかった



お次はまたもアメリカ陸軍の複葉機、ボーイングのP-12E。
これもまた調整用の持ち上げ棒で
胴体後部を持ち上げ状態で展示されてました。

これはアメリカ海軍のF-4Bとほぼ同じ機体で、本来は海軍機であり、
それを陸軍が改めて採用したのがP-12です。
ただし海軍はわずか27機しか発注しなかったのに対し、
陸軍では580機前後と大量採用してますから、実質陸軍機かもしれません。
ついでに後で説明しますが、P-12Eは日本にも因縁浅からぬ機体だったりします。

タイ空軍、この機体は2機だけしか購入してないのですが、
1931年12月に配備後、1949年まで使っていた、というのですからスゴイです。
つーか、2機だけ購入して何の意味があるんでしょうか…。
他の機体とあわせての維持整備が面倒になるばかりでしょうに。

日本のように欧米の技術を盗…否、参考にして新型機を造る、
なんて事はタイではありえませんし、これもタイ特有の
いろんな兵器を欲しがる病の結果の一つですかね。

ついでに、輸出用されたP-12E(輸出用機体名100E)は2機だけですが、
どうも同じ機体が数機余ってたようで、AXBの名で日本に売られたとされます。
こっちは間違いなく盗作…否、研究用の購入でしょう。

ちなみに手前のマネキンは10年前には無かったものです。
あまり誉められない形で欧米の航空博物館の影響を受けた結果でしょう。
撮影に邪魔なので、やめて欲しいなあ、と思う演出の一つです。



後ろから見るとこんな感じ。
この時代だとまだ草原がそのまま飛行場になっていたので、
軽量な機体は尾輪はなく、簡易な構造のソリになってるのも見ておいてください。

タイが購入したE型は後期生産型で、
これは鋼管(一部木造?)羽布貼りだった胴体の構造を
金属製セミモノコックに変更してしまった上、エンジンにカウルを取り付け、
さらに尾翼も大型化しております。
つまりほとんど造り直しちゃってるんですね(笑)。
ただし尾翼は波板のままという妙なデザインですが…。

なのでそれ以前のP-26Dまでと比べて、
ほとんど別の機体になってしまっており、両者はとても同じ機体には見えませぬ…。

ちなみにこの機体、確かに中身はP-12Eなんですが、
当時のアメリカ機は輸出用の機体だと別名称が与えられるのが普通で、
正式にはボーイング100Eと呼ばれてます。

ついでにP-12Eは日中戦争前の中国にも売られてますが、
それはE型の試作型であった218型(Model 218)が1機のみでした。
でもって、この試作型1機が空中戦による日本海軍の
初撃墜の機体になってしまうのです。

つまりこの機体、日本海軍初撃墜の機体の量産型ということになり
この博物館、ホントに日中戦争を考えるのに貴重な機体が多いのです。

ちなみに撃墜されたボーイング218のパイロットは
アメリカの民間人、ロバート・ショートでした。
彼は中国軍のパイロットではないのですが、
この機体の試験飛行担当として中国に来ており、
1932年2月22日、南京に飛来した
日本海軍の編隊に(一三艦攻×3 三式艦戦×3)
空中戦を挑み、戦死しています。

アメリカ人の伝記作家によると、民間人を乗せた列車が
この3機に襲われると見たショートが自分の意思で迎撃に上がったようで、
極めて勇敢といえば勇敢な行為です。
言うまでもなく、民間人の彼にそんな義務はありません。

とはいえ、買ったばかりの新鋭機(組み立て終了後1週間足らずだった…)を
無断で飛ばされた上に撃墜されてしまった中国軍は、
結構いい迷惑だったような気も…。
実際、この時ショートの戦果はゼロですし。

ただし、アメリカ人パイロットの死、という国際的な宣伝に最高な
この事件を中国は放っておかず、彼の母と弟をわざわさ中国に呼び寄せ、
国葬レベルの葬儀を行なっています。

ここら辺りの事情は例の中山雅洋さんの中国的天空(上巻)に詳しいので、
興味のある方は一読をオススメします。



今回の展示で増えていた機体、Mig-21のbis。
2014年7月から展示が始まったばかりで、北ベトナム軍のMig-21とされてますが、
ホンマかいな、という気もします。
解説はなぜかタイ語とベトナム語(怪しいアルファベット表記)のみで、
それっぽい雰囲気を演出してますが、できれば英語でも書いといて…。
どこかから購入したのか、あるいはグリペンのように
タダでもらったのか詳細は不明です。

とりあえず例によって塗装は博物館が好きに塗ってしまったものだと思います(笑)。
こんな色の北ベトナムのMIg-21は見たことないですし、
そもそも脚から開口部のフタまで全部同じ色で塗っちゃってますし…。

ただし、コンディションは悪くないので、一度はMig-21を見てみたい、
という人がタイに行ったついでに見ておく、という程度の価値はあります。



ここで新たな学生の見学がやって来る。

…って、よく見れば若い女の子ばかり、女子高の見学ですか?
既に犬猫幼児のモテモテが達成された、という事は次は彼女達か!
ついに来たか、オレのホントのモテモテ期!

と一人で興奮してたのですが、彼女達は「あらやだ変なオッちゃんが居るわ」
「少しでも近づいたら警察呼んでやるわ」といった雰囲気を漂わすだけで、
全くこちらに近づいてくる気配なし。

おのれ幼児までで終わりだったのか、オレのモテモテ期(涙)…。

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