■下から見るとこんな感じ



この展示、飛行状態の機体の下に回りこめるので、
通常の博物館ではムリな角度からの撮影ができます。

よって、この真下からの角度だと、F-5のA、E型、そしてF-16という
LERXの進化の歴史がバッチグーに観察できるのです。

LERXに関しては以前にイヤンてなくらい説明したので、
そちらを読んでいただくとして、
とりあえず世界初のLERXがこのF-5Aにおける矢印の部分、
主翼付け根前部ですね。
もっともこれ、狙って造ったんではなく、
偶然の産物だったんですけども(笑)。

あれ、ついでよく見るとこの機体、国章、日本機なら日の丸にあたる
タイ空軍のラウンデルを入れてないぞ。
展示に当たって塗装しなおした時に
消してしまったんだと思いますが、何でそんなことを…?



でもって、こっちは同じF-5でもE型。
A型よりエンジンが強力になってるほか、A型で偶然発見されたLERXの効果を
さらに高めるため、矢印の部分が、より大型のものになってます。

ついでに機種下面後部にシマシマ模様の緊急制動用フック、
すなわち緊急着陸時に地上のロープに引っ掛け、
機体を急停止させるのに使うフックが付いてますが、
これ、A型には見えませんね…。
ひょっとしてこれもE型からの改修だったのか?



で、そのLERXの完成型とえいるのがF-16のこの部分。
主翼から機首にかけて繋がる大型のLERXが確認できるでしょう。

同世代のF/A-18だとさらに目立つLERXがついてますし、
エネルギー機動理論の影響を受けて造られた同世代の
ソ連戦闘機、Su-27、Mig-29にもこれは付いてます。
デルタ(三角)翼の戦闘機の運動性を上げるのに、
極めて革新的な技術だったわけです。

ちなみに原理の上では、独立した小型のデルタ翼などでも
同じ効果があります(主翼の前で気流の渦ができればいい)。
なのでヨーロッパのデルタ翼戦闘機は半ば意地なのか(笑)、
LERXではなく小型のデルタ翼を機首部に付けるのを選択してますね。



最後はそんなの知らん、という単純な後退翼のF-86F。
恐らくタイ空軍が導入した最初のジェット戦闘機でしょう。

こうして見ると、後ろに傾けた主翼と機体を繋ぐ部分の強度確保とか、
構造的にはかなり面倒なのが何となくわかりますかね。

これなら、同じ効果のあるデルタ翼に
皆移行してしまうよなあ、と思ったり。



これだけ至近距離から機体を見れるってのは貴重な施設で、
いろんな発見があるため、周辺をウロウロしていても全く飽きません。

この結果、ここでも時間を食ってしまい、空軍博物館突入が
どんどん遅れてゆくわけです…。


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