■ベトナムの泥沼



その横の無反動砲。
タイ語の解説すらなかったので詳細不明ですが、
おそらくこれも鹵獲兵器だと思われるので
ソ連製の無反動砲、B-10あたりじゃないかなあ。



その横の展示は、当時の平均的なタイ兵士の装備みたいです。
アメリカのM-16ライフルにナイフ、そしてアメリカ式のヘルメット。
タイがどういうポジションでこの戦争に参加したのかよくわかる装備ではあります。



その横には特に解説も無く、山積みにされた銃のパーツが。
戦争は終わった、といったようなメッセージなんでしょうか。
よく見ると同じM-16でも銃口の消炎器(flash suppressor)に
いくつかのタイプがあるんだ、という妙な発見があったりします。

ちなみに以前もどっかで書きましたが小銃の銃口に付く
消炎器は大砲の砲口に付く砲口制退器とは別物です。
小銃のものは燃焼が終わる前に銃口から噴出す火炎を防ぐもので
(銃身が短かったり強力な火薬を使うと起きる現象)
防眩用、つまり眩しくて目標が見えなくなったり、周囲から目立つのを防ぐもの。

一方、大砲の砲口制退器は発射ガスを砲口の左右上下に逃がす事で、
砲弾を撃ち出した反動の一部を砲身からそらし(力の向きを変える)、
砲身への反動を低減させるものとなってます。



その先にあった展示。

右の小銃はAK-47か、それを中国でコピーしたAK-56、
左はアメリカのハンドグレネードランチャーのM79。
グレネードランチャーというのはグレネード(榴弾)をポーンと
遠くまで飛ばすもので、遠投器とでもいうべきもの。
銃や砲ではなく、手榴弾を手で投げるよりも遠くまで放るもの、
といった感じの装置だと考えてください。

しかしなんで、この二つが
ズラリと並べられてるのかよくわかりませんし、
左下の取ってつけたような兵士の写真もなんでしょうね、これ…。

ついでに中央部の砲弾類は詳細不明。
とりあえず右端のは迫撃砲弾でしょうが。



ベトナムらしい展示といえば展示の地雷類。

例によって解説はタイ語のみですが、
真中のは対人用にしてはデカすぎるので、
アメリカの対戦車用地雷、M-15でしょう。

11kg近いTNTとRDXの混合火薬を詰め込んであるので、
無限軌道(キャタピラ)ならほぼ切断できますし、
軽量の装甲車両なら、吹き飛ばされてしまいます。

ただし単純な圧力感応信管で、磁気などには反応せず、
上から踏まれない限り爆発はしません。
もっとも、M-15はかなり長い間使われていたため
何らかの改良型があるかもしれませんが。
(ちなみに生産はとっくに終わったが現在もアメリカ軍が保有はしてる)

対してその右、箱状のものはアメリカが開発した対人用の地雷で、
一部で有名なM-18 クレイモアでしょう。
実際は単純な箱型ではなく、太鼓橋のようにやや湾曲した形状です。
これは爆発すると散弾銃のように金属球を打ち出し、
正面方向60度前後、数十m前後の距離に居る人間を殺傷します。

ベトナムでは信管にロープを結んで置き、
誰かが足をそれに引っ掛けると爆発するようにして、
ベトコンの通り道と思われる場所に敷設していたようです。



ここで、ちょっと驚いたのが左上のグレネードランチャーでした。
説明にはXM148とだけ書かれていましたが、
アメリカのXナンバー(試作)兵器がなぜタイの博物館に?
と思って帰国後に調べて見たら、
上で見たM-79の後継として開発、試作されたものだとか。

…M-79の後継ってM203グレネードランチャーだったのでは?

ここで基本的な部分を確認。
M-79のような専用グレネードランチャーだと、当たり前ですが
M-16小銃も別に持って歩く必要があります。
グレネードランチャーだけでは歩兵は商売になりませぬ。
が、これだと装備が増えるし、戦闘中に両者をイチイチ取り替えながら戦う、
という面倒な面が出てきます。

なのでM-16の銃身下にぶら下げて装備できる
小型のグレネードランチャーとして
コルト社が試作したのがこのXM148なんだとか。
ただし、同じような目的で造られたM203の方が優秀だったため、
こちらは試作段階で終わったのこと。

ところが、なぜか空軍の基地防衛の任務につく
空軍治安警備隊(Security Police)がこのXM148を気に入っており、
試作兵器の扱いのまま、かなりの数を導入したんだとか。
さらにそれが東南アジアの軍隊に供与された結果、
ここにこうして展示されてるみたいですね。
ここら辺り、実はこのXM148は優秀だったのか、
金と利権がらみで採用されてしまったのかはよくわかりませぬ。

で、その下はもはやおなじみの兵器、アメリカが開発した
使い捨て対装甲車両兵器、M72LAW。
ちなみにLAWは軽量対装甲兵器/Light Anti-Armor Weaponの略。
最初から中に入ってるロケット弾を一発撃ったらオシマイ、
という使い捨てロケットランチャーですが、ベトナムでも使われてた、
というのは初めて知りました。


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