■そして半島へ



その次は朝鮮戦争の展示。
タイが朝鮮戦争に出兵していた、というのは初めて知りましたが、
例によってなんでそんな事になったの、という説明は一切なし(涙)…。

そしてこれ、タイの皆さんが戦争をどう考えているか、
が実によくわかる展示でした。

この等身大ジオラマでは、千葉県人の私でも、
そんなカッコで冬山で戦争したら、
敵より先に寒さにやられて死ぬよ、という軽装となってます。
せめてコートと手袋は着けようよ…。

これを造った人たちは、実際の戦争がどれほど凄惨なものか、
一度も想像した事はないような気がしますね。

さらにここの解説では、朝鮮戦争の参戦によって
タイは膨大な利益を得た(The war brought great benefits)と
臆面もなく書かれてます。

朝鮮戦争への参戦の結果、タイは共産主義に対抗する
有力なメンバーだと国際社会で認識された、
タイ軍は膨大な戦闘経験によって格段に強くなった、と。

もっとも、これは被害者だった韓国なんかも似たようなもので、
彼らの国の戦争記念館では、韓国軍のベトナム出兵が、
同じような調子で解説されていました。
これがアジアの現実なのでしょう。

少し脱線しますよ。
私の生まれた国はかつて実に愚かな戦争をし、
いかなる手段をもってしても取り返せない
尊い命を多数、無為に消滅させた悲劇的な過去を持ちます。

多くの人々が突然、戦争による死を迎える、
という異常な時代に、無数の命がこの世を去りました。

戦争を利益で評価する態度に対し、私が感じた嫌悪感の源泉が
この犠牲となった人々への思いなら、
それは彼らがこの国に残していってくれた貴重な遺産だ、
とも思ったりします。

戦争は必要があれば避けられませんし、避けてはいけません。
この点は絶対真理です。

ただし戦争は単に利益の確保を目的に
行なうようなものであってはなりません。
それは、同じ国民の血と命と引き換えに、別の人間が利益を得る、
という戦慄すべき行為に他ならないからです。
戦争は政治の一手段であり、外交の延長線上にあるものですが、
政治の目的が、一部の人間の利益追求であってはならぬように、
戦争もまたそうなのです。

守るべきものを守るために戦うのは避けられない戦争ですが、
為政者が欲を出して国民を死に追いやるなら、
それは許されない戦争です。

これは戦後のアメリカがあまりに多くやって来た愚行でもあるのですが。



ちなみにこちらは北朝鮮軍の兵士、
として展示されてもの。

…いろいろ言いたい事はありますが(笑)、
とりあえず北朝鮮の彼が持ってる銃、
アメリカのM-1ライフルじゃないですかね…。



上のジオラマ内に展示されていた迫撃砲。
朝鮮戦争で使われた国連軍側の大型迫撃砲だと81mmのM1が
有名ですが、展示のものは明らかに違いますね。

タイ語でしか名称の表示がなかったのですが、
大型で、脚立部がエラく頑丈ですから
これはソ連のM1938 120mm迫撃砲に見えるような…
しかし、そんなものがタイ軍の陣地に置かれてるものでしょうか。

…まあ、タイの博物館ですから、詳細は不明ということで(笑)。


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