■微妙によく見る兵器
お次は世界中の博物館で見かける機体ことT-28トロジャンのD型。
ノースアメリカン社の隠れたベストセラー練習機で、
1950年代に1900機以上が造られ、各国で利用されました。
歴代旅行記で何度も紹介してるほど、どこにでもある機体ですので、
その解説は最低限にしておきます(手抜き)。
D型は海軍の練習機だったB型から改造された攻撃機型で、
タイ空軍では1962年から84年まで現役だったとされます。
原型のB型は大戦時の戦闘機並の1400馬力級のエンジンを積んでましたから、
そういった改造が可能だったのでしょう。
ちなみに改造D型にはノースアメリカンによるものと、
フェアチャイルドによるものがあり、後者ならAT-28Dが正式名称になるようです。
東南アジア諸国にばら撒かれたのは後者とする資料が多いので、
これもどうもAT-28Dじゃないかなあ、という気がします。
…と、ここまで書いて、この機体の主翼下面に
兵器搭載用のハードポイントが無いのに気が付いた。
もっともパイロンは取り外し可能ではあるので、
タイの皆さんを信用して、ここでD型であろう、としておきます。
プラモデルのような串刺し持ち上げ展示なので、
あまり見られないような角度からも見れます。
こうして見ると、主翼にかなり強い上反角がついてますね、この機体。
細かい説明は省略しますが、このように上向きの角度を付けて主翼を設置すると
どちららかの主翼が沈みながら横滑りした時、左右で揚力差が生じ、
沈んだ側の主翼を押し上げる形になります。
この結果、自動的に傾いた姿勢から、中立の位置の姿勢に戻るのです。
初心者が乗る練習機には重要な機能と言えるでしょう。
とはいえ改めて見ると、
こんなに強力な上反角の機体はあまり見た記憶がないので、
よほど安定性が悪かったんでしょうか、T-28。
少なくとも先代の傑作練習機、T-6などにはここまでの上反角はありませぬ。
こちらはアメリカ製の上陸用車両、LTV。
あまり詳しい説明がなかったので詳細は不明ですが、
展示のものは砲塔も屋根も無いので、
第二次大戦中に使われた最終型、LTV-4じゃないでしょうか。
ちなみにこれ、屋外展示なのに上のハッチが開いたままでした。
大丈夫なのか、それ…
海上の艦艇から兵員、物資、さらには車両などを載せて発進、
砂浜に上陸してしまうのがLTVです。
そもそもは1935年ごろ、民間で開発された水陸両用車があり、
これに目を付けたアメリカ海軍と海兵隊が改良して採用されたようです。
最初は港がない砂浜に展開した上陸部隊への
物資補給用だったらしいのですが、
後にこれを強襲揚陸に使うことになって来ます。
この結果、沖合いの船から大量のLTVが殺到してくる、
という日本にとって悪夢のような兵器となるのです。
ただし、本来ならより多くの乗員が乗り込め、戦車さえ積み込める
揚陸艇、LCVPの方がいいはずで、
LTVはそれほど効率のいい手段ではありませぬ。
(LTVではジープを載せるのが精一杯)
実際、ノルマンディ作戦を始め、
ヨーロッパ戦線ではLVTは、ほとんど使われてません。
(私の知る限りでは利用例ゼロ)
なので、サンゴ礁による遠浅の海底を乗り越えて上陸する、
という南太平洋戦線独特の兵器なのか、という気もしますね。
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