■奥の壁がよく見えない世界



ふふふ、向こうの壁がよく見えませんことよ、奥様。
なんだ、この展示室(笑)。

全力ダッシュでもどれだけ時間がかかるんだ、という空間に、
ずらりと鉱物標本が並んでおります。
しかも、天井は高い、柱も天井も内装も立派。

…国家にいらん金がたくさんあるってのは、すごい事になるんですね。
ところで、日本はバブル期にあれだけ金が余っていて、何を造ったでしょう。



でもって、どこの百科事典のさくいんだ、という展示標本のリスト。
これ、全部キチンと見てたら、私の寿命は終わってしまうんじゃないか、という気がします。



思わず、遠い目で外の景色を眺めたり。
まあ、せっかく来たんだ、ある程度はキチンと見ておきましょう。

ちなみに、この展示室は、自然史博物館では珍しく窓が多いので、撮影は楽です。
普通の一眼レフとか、ミラーレスみたいなカメラでも何とかなるでしょう。



巨大な隕鉄。1400ポンド、約635kgほどあるそうで。
床抜けないのか、これ…。

この展示の方法とか、下の文字とか、典型的な19世紀に流行ったタイプですね。
実際、この隕鉄は1783年にアルゼンチンで発見され、
1826年、個人が購入して博物館に寄贈したものだそうです。
(下の台に全部書いてある)

隕鉄は宇宙から落下してきた鉄の塊です。
鉄は宇宙空間に多く存在する上、比較的重いため、チリの状態からでも
互いの引力で固まりやすいので、大きな塊が存在するようです。
(そうは言っても億単位の年月がかかると思いますが)

これがそういった自然に集まったものなのか、あるいは恒星の崩壊で放出されたものか、
そこまではわかりませんが、地球にも結構な数が落っこちて来ています。
高温に耐久性がある金属とはいえ、これだけのカタマリが燃え尽きずに落ちてくるんですから、
世の中、油断もスキもあったもんじゃないですな。

人類が鉄を最初に手にしたのは中央アジア、トルコのあたりで
だいたい紀元前1800年前後まで遡ります。
が、同時期の青銅などに比べると、鉄は加工に大規模な施設と高温の窯が必要で
鉱石や砂鉄から、いきなり鉄を造る、というのは難易度が高く、
初期の鉄は全て隕鉄だったのではないか、という話もあります。

実際、紀元前500年前後までが中心となる旧約聖書でも金やら青銅やらは出てきますが、
鉄の話はほとんど見た記憶がありません。
エルサレム完全陥落後、バビロン虜囚中にブイブイ言わせてた
ダニエル書に、ようやく夢のお告げで登場するくらいでしょう。

あんだけ鉄の本場に近所で、しかもバックに絶対神までついてた連中が
ほとんど鉄を使ってなかったとすると、やはり原材料がなかったんだろうな、と。
ついでにバビロニアに滅ぼされるまで、ユダは(ユダヤ人の南側の国家)、
あのエリアじゃ唯一独立を保っていた国ですから、
決して軍事的に弱いわけでは無いはずです。
他の国も似たり寄ったりだったんでしょうね。

ついでながら、レバノンとかは紀元前までは森林地帯だったのですが、
現在のような荒野に成り果てたのは、あれ、製鉄のための木炭確保が原因じゃないかと。

ついでに、朝鮮半島のハゲ山は、元寇時の造船が原因、
と説明されることが多いですが、アレも多分、製鉄が犯人でしょう。

逆に言えば、あんだけやりたい放題やって、未だに緑豊かな出雲と言うエリアは、
製鉄を軸に世界的に見ると、奇跡のような土地だと思います。

ついでに、隕鉄は地球で精錬される鉄とは異なる特質を持つことが多いそうで、
科学博物館で紹介したダマスカス鋼、あるいは鎌倉時代の日本刀の鋼など、
再現が困難で、製法が失われてる鉄も隕鉄ではないか説がありますね。

個人的にはありうる話だと思います。



こちらは、各種鉱物とその使い道など。


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