■軍艦の存在意義



さて、これが後部主砲の砲塔。
上下に二つあり、ここで見学できるのは下にある最後部の砲塔です。
写真では左側にその端っこだけが見えてる方ですね。

ベルファストは4つの砲塔に各3門、計12門の6インチ砲(約152mm)を搭載しており、
この12門の主砲の弾を敵の船にぶつけてギャフンと言わせるために、
排水量10000トンを超える巨大な船体と700人を超える乗員は存在するわけです。

これを必要な装備と見なしていたのが第二次大戦までの世界の海軍で、
こんなの使い物になるか、と知ったのが第二次大戦後の世界の海軍だったわけです。
この手の巨大な砲を積んだ艦艇が必要ない、とされたのは航空戦力の発展の結果でした。

この船の6インチ砲の砲弾の重量は51kgでしかなく、
これは航空用の50kg爆弾の大きさに過ぎません。
その射程距離は22kmと長大でしたが、それでも数十kmのかなたから
飛んできてしまう航空機とは比べ物にならないわけで。

で、1940年の段階で、空母から運用される艦上攻撃機は1機で500kg程度の爆弾を搭載可能でしたから、
この巡洋艦が一度の斉射で打ち出せる火力を、ほぼ1機の攻撃機が持ってしまった事になります。
でもって、大型空母からなら20機、30機という数を一回の攻撃で送り出してしまえるわけで、
これはもう勝負にならん上に、大戦末期にロケット弾が登場するとさらに火力の差は広がるのです。

そして、さらに致命的な事に速度で圧倒的なまでに劣る艦艇は、
航空攻撃に対して、かなり弱いことが判明します。

空母に対抗するには空母しかないのです。
ちなみに、人類がわずか数例しか実例を持たない、
貴重な空母対空母の戦闘、1942年の日米の空母艦隊戦は、
双方に膨大な損害をもたらし、その破壊力に日米共に驚くことになりました。
(空母決戦と呼べるのはあくまで1942年の段階までで、以後はアメリカのワンサイドゲームになる)

そうなると何年もかけて、膨大な予算で造り上げたこんな巨体に700人もの人間を乗せて、
一度に50kg爆弾12発を送り出すのが精一杯、というのでは
戦車で新聞配達やるくらい資源の無駄、という行為となってしまうのです。
どこの海軍だって予算が命ですから、もう誰もこんな船は作らなくなってしまいます。



その横にあった何かの容器。
厳重にフタがされてるので、重要なものだと思うんですが、正体不明。

左奥に見える階段は上の砲塔に登るためのものですが、
ごらんのように立ち入り禁止となっております。



さて、これが見学できる方の砲塔。
ちなみに、ここは上甲板と下甲板の昼間で、階層番号がない場所になってます。

入り口は左右二箇所にあり、そのドアはご覧のように外からも密閉できるよう
レバーが付いてるほか(もちろん中からも開けられる)中央に小さなハッチがあって、
万が一、ドアが開かなくなっても逃げられるようになってます。
ついでに、外板は装甲と呼べるような厚さはなく、
爆風や、爆弾の破片を避けれればいいや、というレベルです。

ちなみに戦闘中、この中には27人の人間が入ってました。
…職場環境としてはあまりよくないと思いますね。



左側の入り口から見た砲塔内部。
LX-5ならではの写真で、16:9画面にキチンと全体を収めてます。
これほどしっかり撮影できるとは思ってなかってので、改めてこのカメラに感動…。

全部で3門の砲の尾部が見えてます。
上にある丸い穴の開いた白い箱が各砲の尾部で、その下に尾栓があります。

各砲の下に白い枠で囲まれたスペースが見えますが、これは砲を上に向けた時に、
尾部は下に下がりますから、それを収容するためのスペースでしょう。

ご覧のように空間の前半は完全に砲で埋まってしまってますから、
ここに27人の男と詰め込むってのは、あるいみ潜水艦以上にハードなような…。
発砲時にはあの主砲の尾部はドカンドカンと後ろに飛び出して来るわけですし。



右端の砲の尾部をアップで。
右奥に座席とハンドルがあるのに注目。
各砲にこれがあり、どうもハンドルで上下角の調整をやってたのではないかと。
人力では追いつかないでしょうから、動力は電気か油圧、あるいは水圧があったと思いますが。

手前、えらく頑丈にフタをされた丸い部分が主砲の尾部で、ここを開けて砲弾を詰め込みます。



砲弾を中に込めるまでの流れを矢印で示してみました。

ちなみに砲弾は艦底にある弾薬庫から巻き上げ機を使ってここまで持ち上げるのですが、
上がってきた砲弾は砲塔の前部に来るので、そこから上にある樋を使って砲塔尾部まで送ります。


で、その下にある上下左右に動く砲弾の運搬用トレーに載せて、受け取り、右に動かして
砲の尾部に持って行って中に弾を入れるわけです。
この構造だと、弾を込める時は砲身を水平方向にしないとダメな感じですが、
もしかしたら、角度をつけたまま作業する方法もあったのかも。
そこら辺はちょっとよくわからず。


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