■ジェットだってエンジンだ
アメリカのウェスティングハウス(westinghouse)J30ターボジェットエンジン。
ここでは開発時の名称である19XBの名前で展示されてました。
アメリカのジェットエンジンというと、イギリスのホイットル式遠心圧縮エンジンを
参考に開発が始まって…という印象がありますが、
見ての通り、このエンジンは縦長の軸流式、つまりドイツと同じタイプです。
こういうのも、造ってたんですね、アメリカ。
1943年に開発がスタート、1944年1月にF-4Uコルセア(ただしグッドイヤー生産のFGの方)
の胴体下に搭載して、運転試験を行ってます。
ここから、J-34ジェットエンジンに繋がって行くのですが、
そういやJ-34って、ダグラスの水平飛行で音速が出なかった超音速試験機X-3、
寄生型戦闘機、XF-85ゴブリン、ジェット水上戦闘機、F2Yシーダートと
壮絶な機体にばかり搭載されてるんだよなあ…。
でもって、こっちが本家軸流式ターボジェットエンジン、ドイツのBMW003。
開発はこっちが先だったようですが、結果的にはユモ004の後から登場する事になるエンジンです。
He162の背中に乗ってるジェットエンジンがこれ。
日本にその資料の一部がもたらされて、ネ-20の元ネタになったエンジンでもありますね。
でもって、こっちが有名なユモ004。
ドイツの両方のエンジンが並べて展示してある、というデラックスさはさすがというか。
ご存知Me262、Ar234など、第二次大戦中のドイツジェット機に搭載されていたのがこれ。
世界各地でカットモデルにされてるのですが、ここでは完全な形で残ってたみたいです(笑)。
ただし、反対側から見て無いので、断言はできませんが…。
でもって、ドイツのジェットエンジンのラストはこれ。
ハインケルHES011(Heinkel HES
011)。
ハインケル-ヒルト社(Heinkel-Hirth
/1941年にハインケルとヒルト社が合併したもの)で
開発されていたドイツの3番目のジェットエンジンで、ごらんのような巨大なもの。
先行するユモやBMWの1.5倍近い出力を狙っていたようですが、
終戦までに量産されることはなく終わっています。
ただ、最終的に19基生産されたうちの一つが、有名なメッサーシュミットの可変翼実験機、
P.1101のエンジンとして使われているようです。
でもって、最後の最後にアメリカの誇る傑作空冷エンジン、
R2800ダブル ワスプが置いてありました。
これも9発×2段重ねの18気筒エンジンですね。
2000HP級(最終的には2800HP)の空冷エンジンで、
日本ではおなじみのアメリカ海軍の戦闘機、F6Fヘルキャット、F4Uコルセア、
そして陸軍のP47に搭載されてました。
ちなみに総生産数は12万5千を超えます(ただし戦後生産分を含む)…
このエンジンの変わったトコとしては、
あくまでエンジン本体だけの開発だった、という部分があります。
なんじゃそりゃ、というとイギリスやドイツのエンジンでは、
エンジン本体と過給器(機械式スーパーチャージャーやターボチャージャー)は
常にセットで開発されていたのですが、
このR2800の場合、陸軍はこれに排気タービン(ターボチャージャー)を、
海軍は機械式スーパーチャージャーを取り付け、それぞれで使用してました。
えらく運用に幅があるエンジンだった、ともいえます。
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