■人類はエンジンを造るのだ
これも有名どころ、ダイムラーベンツの DB605のA1。
DBは当然、ダイムラーベンツの略称です。
ここから再び液冷エンジンで、これは倒立V12気筒ですね。
倒立型なので、シリンダーヘッドはこの下側にあり、
正面から見るとV型というよりA型という形状になってます。
こんな角度からはめったに見れないので、シリンダーヘッドが丸みを帯びてる、
というのを、ここで初めて気が付きました。
つでに、ここの解説では、イギリスのエンジンよりずっと大排気量なんだけど、
(35.7リッター。マーリンは約27リッター)
過給機の性能差があったので、むしろ出力では劣った、と書かれてました。
私と全く同じ結論に達してる人をイギリスで発見する事になるとは(笑)。
さらにガソリンのオクタン価にまで触れててくれれば完璧だったのに。
ドイツを代表する戦闘機、Me109では、G型からこの605の搭載が始まります。
それまでのDB601の排気量をアップし、高出力化を図ったのが、このエンジン。
圧縮比も上げてるんですが、ガソリンのオクタン価は相変わらず87、
しかもドイツ基準の87ですから英米に比べるとノッキング耐久性はお粗末で、
結局、水メタノール噴射でそのノッキング対策を行うことになります。
当然、余計な装置と機能を追加することになりますから、重くなるし、
整備の過程も増え、不具合発生の可能性も増えます。
高オクタン価ガソリンてのは、非常に重要なポイントだったわけです。
はい、またしても来ました(笑)。
今度は液冷のスりーブヴァルブ エンジン、ネイピア社のセイバー(Sabre)シリーズII
B。
ちなみに24気筒という、えらく豪快なエンジンとなってます。
ちなみにこのSabreはサーベルの事ですから、
F86のセイバー(Saber/イギリス綴りだとEとRが逆)と同じ意味です。
救うもの、という意味ではありません。
空冷スリーブヴァルブのセントラースとほぼ同時期の
1938年に一号機が完成、その年末には2400馬力を絞り出して、
関係者が大興奮、とい事態になります。
が、設計上、いろんな無茶があり、量産が始まった後はトラブル続出、
欠陥エンジンの烙印を押されてしまう事になるのでした…。
さらにこれを搭載した機体がイギリスのホリコシさんことシドニー・カム設計による
ハリケーンとテンペストですから、そりゃもう、目も当てられない事態になります(笑)。
戦争末期にはそれなりに安定した、という話ですが、
結局、マーリンもあればグリフォンもある、おなじスリーブヴァルブではるかに安定した
空冷のセントーラスもある、で結局、ほとんどまともな活躍はしないで終わるのでした。
ただ、最終生産型あたりでは3000馬力を超えてますんで、素性は悪くなかったのかも。
次はドイツを代表する空冷エンジン、1939年製のBMW801。
しかし、ベンツとBMWで戦争ってんだから、どれだけ贅沢なんだ、ドイツ(笑)。
801は1500馬力エンジンとしてデビューしたものの、最終的には2000馬力まで
パワーアップされることになります。
ちなみに、このエンジンの生産数は5年間で約6万台。
ここでもう一度、確認すると、中島の栄は約6年の製造期間で約33000台。
世の中にはね、戦争に向かない国ってのがあるんですよ、皆さん…。
さてこれ、FW190のカウルが付いてしまっていて、一見、正面からよく見えない…
と思ったら、バチが当たります(笑)。
このカウルもオリジナルなら、この塗装もほぼオリジナルじゃないでしょうか。
良好なコンディションで保存されてると言っていいと思います。
で、気になるのはカウル正面上にある数字。
書体はドイツ軍のっぽいですが、30674-A5と書かれており、
どうもこれ、イギリスが鹵獲した際に書き込んだ番号のような気が。
だとすると、A5型のもの、ということですかね。
ちなみに、エンジンの前にある強制冷却ファンのブレードの一枚にも
30674の数字があります。
そのハブ(中心部)にある注意書きはドイツ語で、私には読めません(笑)。
後ろから。
カウルいっぱいいっぱいに詰め込まれてる、というのがうよくわかると思います。
これでちゃんと冷却できるのか、といえばできるわけなく(笑)、
初期のFw190はエンジンの発熱による火災に悩まされ続けることになります。
カウルフラップもつけてなかったので、空気の抜け道も無かったし。
なのでプロペラ軸に付けられた強制冷却ファンが必須となるわけです。
プロペラよりはるかに高速でぶん回されるんですが、ここの説明だと3倍早い、
となってましたが、1.72倍じゃないかなあ…。
幸い、アフリカ戦線には冬に派遣され、春には既に負けてたので(涙)、
アフリカの夏を経験しなくて済んだのですが、そのまま戦ってたら、
熱対策でエライことになってたんじゃないでしょうかね、これ。
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