■海洋国家の展示物



…てな感じでまだまだいろんな時計関連の展示が続くのですが、
まあ、後は皆さん知ってるようなものばかり…という事で、パスさせてもらいます。



最後の最後に展示されてたこれは1994年製のX線観測衛星、JET-X。
これは実物だとのこと。

旧ソ連との共同開発だったらしいんですが、1991年のソ連崩壊により計画が中断、
自前のロケットを持たないイギリスとしてはお手上げで、
結局、ほぼ完成していながら、この人工衛星は打ち上げられずに終わったのだとか。

ちなみに分類としては宇宙望遠鏡に入るそうな。

てな感じで、これにて1階(日本式だと2階)の見学は終了。
次の2階(日本式だと3階)に進みましょうか。



今回はフロアの一番奥の階段で移動したので、
この階はキチンと順路通りの見学となりました。

2階(日本だと3階)のメイン展示はこの船舶関連。
といっても、さすがに船を持ってくるわけには行きませんから、基本は模型の展示です。

でもって、この写真を見て、ああ、これは秋葉原時代の交通博物館じゃん、
と思ったあなた、私もそう思いました(笑)。
あの博物館はロンドン科学博物館の、忠実な劣化コピーだったわけで。

ちなみに、この写真は中2階のような場所から撮影してます。
こっちにも展示があることはあるんですが、それほど多くはないので、
見学は後回しにしてしまいました。
なので、もう一度、最後の最後で、この展示に戻って来る事になります。



イギリスの場合、対スペイン アルマダ戦、対ナポレオン トラファルガー戦と、
帆船時代にも輝かしい歴史があるんですが、なぜかここの展示はそれほど
その手の時代に熱心ではなく、基本的には蒸気船からの展示がメインでした。

で、蒸気船のデビューから、ずっとテーマになっていたのがアメリカ航路、
つまり大西洋横断でした。
この展示は、その大西洋横断に挑んだ初期の蒸気船たちです。

熱効率が改善されたとはいえ、後の蒸気タービン、さらにはディーゼル機関などに比べて、
通常の蒸気ピストンエンジンは極めて燃費が悪く、
さらにこの時代は外輪船ですから、一段と燃費が厳しくなります。

このため、ある程度の大きさの船体、
燃料がつめるスペースがないと大西洋横断は不可能でした。
さらに燃費的にも船体が大きいことが有利だ、というのを発見するのがブルネルなのですが、
そこら辺はこの後で。

とりあえず、この中では有名どころ、上の写真で左端に居る、
1837年建造のグレート・ウェスタン号を見て行くことにします。
世界初の大西洋横断航路の定期船となった船です。
当時、約16日でニューヨークとブリストルを結んでいました。
(地球の自転による風向きの関係で、東行きの方が1日前後早かった)



 ちょっとアップで。この時代はまだ非常用の帆柱は残ってます。
総登録トン数(Gross Registered Tonnage)で1340トンですから、
意外に小さいという気もしますが、当時としては世界最大だったとの事。
(ただし総トン数ではなく、全長で比べた場合)

1837年、日本じゃ大塩平八郎の乱があった年に
大西洋横断の定期船を建造してたんですから、
やっぱりすごい、というべきなんでしょうね。
ただ、実際に始めて大西洋横断に成功したのは1.838年の4月になってからでした。
ちなみに船体は木製です。

でもって、この船を設計したのがあのパディントン駅の地味な銅像の彼こと
イサムバード キングダム ブルネル(isambard kingdom brunel)でした。

鉄道技術者(トンネルや鉄橋)として有名だった
ブルネルは1835年に大型船に関する意外な法則に気が付きます。
(余談だが造波抵抗のフルード数を発見したフルードは彼の助手だった)
理論そのものは以前からあったようですが、
それを実際の船舶に最初に応用したのが、ブルネルだったようです。

まず、船舶の運送能力はその体積に比例します。
まあ中が広ければ広いほど、多く荷物を詰めますから、当然です。

が、船の前進の妨害をする水の摩擦抵抗は、
水中にある船体の表面積のみが要因となっています。
だったら、大型船であればあるほど、燃費と速度において有利になるはずだ、
と彼はヒラメイタのでした。

下半分だけ水に浸かってるサイコロを考えましょう。
1辺の長さが1なら、その体積は1。
そして水に接してる表面積は1+0.5+0.5+0.5+0.5で3。

次に1辺の長さを2にして見ましょう。
その体積は8。先の8倍です。
水に接している表面積は4+2+2+2+2=12。こっちは4倍にしかなりません。

つまり、体積は8倍にもなるのに、水の抵抗は
水中の表面積のみに比例しますから、4倍にしかなりません。
なので大きい船体ほど、燃費がよく、長距離運行に向きます。

ただし、これは造波抵抗をあまり考えて無くていい、
という条件が付きます。
当時の蒸気船は低速なため、造波抵抗は意外に小さく、
(高速化にともない無視できなくなりフルードが研究を行った)
この段階では、あまり深く検討されていません。

もう一つ、粘性圧力抵抗も存在するのですが、
これは船体を上から見て水滴型にすれば、
そのサイズに関係なく抵抗は少なくなりますから、これも問題なし。
(航空機における誘導抵抗と同じく、船体後部の乱流を抑えればいい)

このアイデアをグレート・ウェスタン蒸気船会社(Great Western Steamship Company)
に提案、一説には彼の設計のギャラは無報酬にする代わり、
その理論に基づく蒸気船の建造を頼み込んだとされます。

その結果、建造されたのがこの船でした。
ちなみにその船名は会社の名前そのまんまです(笑)。


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