■どんどんマニアックな冷たさに



とりあえず、渡り廊下からでないと
全体像の撮影ができない展示物を片付けちゃいましょう(笑)。

ここに来るまで、存在すら知らなかった4発エンジンのプロペラ輸送機機、
ハンドレイ ページのヘイスティング(Hasting)。
1946年初飛行、48年部隊配備開始、との事なので、完全に戦後世代の輸送機ですが、
イギリス空軍が自前で大型輸送機造ってた、という事すら初めて知りました(涙)。

え−、なのでぶっちゃけ、書く事がありません…。



イギリス製の地対空ミサイル、ブラッドハウンド。
(Bloodhound/血の猟犬…ではなくこの名の犬種がいる。王族のハウンド、の意味だと思う)。

1958年に導入され、1991年まで現役だった、対高高度用の対空ミサイル。
元々は例のVボマーが配備された基地の防空用に開発されたもの。
その後の改良により、低空から侵入してくる機体にも対応できるようになり、
最後は西ドイツのイギリス基地防衛に使われ、ベルリンの壁崩壊で引退となったようです。

ちなみに、普通、この手の対空ミサイルは2段ロケットになっていて、
下の段で高高度まで一気に上がって、そこから二段目のロケットで目標に向かうんですが、
このミサイル、どうみても一段しかロケットが無いような。

どうも周りに付いてる6本のブースターである程度を高度を稼いだらこれを切り離し、
後は本体だけで飛んでゆく、というシステムだったようですね。
ちょっと変わってる…というか、ダメじゃないか、これ(笑)。

ちなみに、このミサイルとは、後日、変な場所で再会する事に…。



見た目の通り、弾道ミサイルでございます。
中距離弾道ミサイル(intermediate range ballistic missile)、
ダグラスのPGM-17 ソー(THOR/北欧神のトールのこと)。
ちなみに中距離弾道弾ですから、その略称ははIRBMとなります。

ダグラス製の弾道ミサイル、例の宇宙まで飛び出してから落っこちてくる核ミサイルです。
ダグラス製、という事は当然アメリカ製。
これ、1959年にアメリカが最初に実戦配備した弾道ミサイルなんですが、
大陸間弾道弾(ICBM)ではありませんから、アメリカからじゃソ連まで届きません。

なので例によって、イギリス空軍に僕達、友達だよね、と持ちかけて、
イギリス国内に、その発射サイトをバンバン造りる事に。
これは少なくとも20箇所を超えてますから、イギリスとしてはいい迷惑だったでしょう。
で、そのミサイルサイトは、イギリス空軍が運営していたようで、
その結果がこのイギリスのラウンデル入りのソー ミサイルとなったようです。
なので、実際はアメリカの弾道ミサイル、が正解。

ちなみに、中途半端といえば中途半端なミサイルなので、
あっという間に時代遅れとなり、1963年には全部引退してしまいます。

ついでにここで、イギリス空軍の核戦略を理解して置きましょうか。

イギリス空軍は中途半端な戦略空軍だ、というのは既に書きました。
ホントに中途半端でして、この空軍は1960年代半ば以降、
戦略兵器としての核兵器を持ちません。完全に放棄してしまうのです。
彼らが運用したのは、敵の軍隊相手に現場レベルで使う戦術核兵器だけでした。
ICBMも、大型の戦略爆撃機も持ってないのです。
ウソだと思うなら調べて見ましょう(笑)。

とりあえず1960年代に入ると、イギリスはVボマー達による核爆撃は
対空ミサイルの進化でもはや不可能だ、と判断します。
でもって、ここから迷走が始まる事になるのでした。



その迷走の最初に登場するのが、これ。

当時ダグラスが進めていた航空弾道ミサイル、
つまり爆撃機から宇宙に向けて発射する弾道ミサイル、GAM-87 スカイボルト(Skybolt)です。
この開発計画に参加して、核抑止力の主役として期待するわけです。

ちなみに写真右側がスカイボルトミサイルで、左側のミサイルは正体不明(笑)。
もしかしたら、何かのバリエーションかも。

左側の人物と比べても航空機から発射するミサイルとしては
異常な大きさなのがわかるかと思います。
イギリスではVボマーを発射母機にするつもりだったようで、
実際にヴァルカンに搭載してる写真も残ってます。
この展示もヴァルカン爆撃機の下に置いてありました。

が、この計画はトラブルの連続となって行きます。
そこに持ってきて、同じような目的で開発されていた
潜水艦から発射されるポラリス弾道ミサイルに実用のメドが立ってしまいます。
その結果、アメリカ空軍からあっさりキャンセルが出され、その開発の中止が決定。

ここでイギリス空軍は頭を抱えるのですが、追い討ちをかけるように、
独自開発していた中距離弾道ミサイル(IRBM)、ブルー ストリーク(Blue Streak)の
計画が行き詰まってしまい、もはやお手上げ、イギリスは完全に、
戦略核兵器の空白地帯となってしまうのです。

あわてたイギリス政府はアメリカが開発に成功していた
潜水艦から運用される弾道核ミサイル、ポラリスに目をつけます。

この間、えらくややこしい経緯があるんですが、当然、それは省略すると(笑)、
1963年4月に、イギリスがポラリスミサイルを導入する契約が結ばれ、
イギリスではポラリスミサイルを搭載する潜水艦、
レゾリューョン(Resolution)級原子力潜水艦の建造が始まります。

これが完成、配備が始まった1966年、イギリスの核戦略は
すべて海軍の手に移る事になるのです。

以後、イギリス空軍は純粋に戦術空軍になったわけですが、
その割にはアレな装備ばかり、というのは気にしないこと(笑)。

とりあえず、イギリス空軍は1966年を持って戦略核兵器の維持、開発を放棄している、
アメリカ空軍のような戦略空軍ではない、というのは覚えて置いてください。



ちなみに、いつになったら、この流行記はそこに辿り着けるのか、という(涙)、
最終日に訪れた帝国戦争博物館に、ポラリスミサイルの展示がありました。
大陸弾道弾に比べたら、これも小型です。

前に来た時は、なんでポラリスミサイルが展示されてるんだ、と思ったんですが、
今回、コスフォードを訪問して、長年の疑問が氷解したわけです。

いや、ホントに勉強になるんですよ、航空博物館て。


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