■戦争にはいろんなものが必要で
大型の4発爆撃機で、てっきりまたランカスターだと思ったんですが、
これはその発展型のアヴロ リンカーン(LINCOLN)B2でした。
基本的にはランカスターの航続距離増強型で、
太平洋戦線への投入を前提に、1944年に6月に初飛行してます。
が、その後はランカスターの生産が優先されたこともあり、
ようやく部隊配備が始まったのは1945年8月。
さあ、日本へ行くぜ!と思った時には戦争は終わっていたのでした。
1950年代半ばまで使用されていたようですが、アメリカのB-36、B-47に比べると
オモチャみたいな戦略爆撃機ですから、かなり無理がありました。
結局、イギリスは戦略爆撃の何たるかを全く理解できておらず、
これが後に冷戦期のイギリス軍全体の迷走の一因ともなります。
ちなみに、イギリス空軍は、ケニアの独立運動や、
マレー半島の共産党ゲリラ相手にこの戦略爆撃機を使ってます。
後のベトナムのアメリカ空軍も含め、結局、
1941年の夏、AWPDに居たハロルド・リー・ジョージと言う天才が、
人類60万年を通じてただ一人、戦略爆撃とは何か、
を正しく理解していただけなんだなあ、と思うわけで。
他は出がらしみたいなもんだ。
ランカスターの航続距離増大を狙った機体なので、
ご覧のように細長い、アスペクト比が高い主翼を採用、誘導抵抗を減らし、
いらん燃料を食わないようにしてるようです。
この機体も下面は真っ黒で、1950年代でもまだ
夜間爆撃専門で行く気だったのか、イギリス空軍…
その下にあったのが、連合軍の戦略爆撃機が憎くて憎くて仕方なかった
ドイツによるロケット戦闘機、Me163B1-a コメート。
これも、結構あちこちにある機体で、確認できるだけでも世界中で11機は残ってます。
ある意味、ミサイルに操縦者と機関砲を積んでしまいました、という機体で、
とにかくロケットモーターのパワーでガーッと急上昇、
あっという間に高高度の戦略爆撃機に飛び掛って高速で撃墜するぜ、という機体でした。
が、燃料はあっと今に切れてしまい、その後はグライダーとして飛ぶしかない、
というえらく刹那的な機体でもあったわけで、ドイツの断末魔的な戦闘機と見ることもできます。
この博物館の解説によると、Me163は1944年夏のデビューから終戦までに、
9機の爆撃機を撃墜したとされますが、あまり割りにあう数字ではないような気がしますね。
この展示機は、Me163を運用していた部隊、JG400が最後に駐屯していた
ベルギー国境近くの基地で、終戦時の押収されたものだとのこと。
ちなみに終戦直前の4月22日の飛行を最後に、燃料が無くなってしまい
全く作戦行動は取れなくなっていたらしいです。
ついでに、戦後のイギリスでMe163の飛行テストをやったのですが、
燃料が極めて危険な科学物質だったため、動力飛行はやらず、
他の機体に牽引してもらって、グライダーのように飛行するだけで終わらせてます。
それに積まれていたMK108 30mm機関砲。
先に見たヒスパノの20mmに比べ、30mmで弾丸はこちらの方がデカイのに、
銃身が異常に短い上、全体がコンパクトなのがわかると思います。
銃弾を撃ち出すエネルギーは、最初の火薬の爆発力だけです。
なので銃身を長くして、その爆発による圧力を長時間維持できるようにした方が、
その弾速は早くなります。
運動する物体が持つ力は
力=質量×加速度
ですから、同じ大きさの銃弾なら、より速く飛んでゆくほど、破壊力は上がるわけです。
ちなみに速度が上がると、引力による落下が始まる距離も伸び、
弾丸の直進性もよくなります。
と、なると、銃身は長い方がいいはずです。
にもかかわらず、ドイツがこんなに短い銃身を採用したのは、
撃ち出される力が小さくなる事による利点もあるからでした。
撃ちだす力が小さい分、反動が小さくなること、その結果、
銃の構造が簡略にでき、軽量化が可能となります。
さらに銃身も短いのだから、とてもコンパクトな機関砲にできるわけです。
それによって、こんな小さなMe163に2門も積むことができ、
さらにMe262の小さな機首に4門も搭載できる機関砲、Mk108が完成するわけです。
運動エネルギーによる破壊力の不足は30mmという大きな弾頭を活かし、
そこに炸薬を詰め込む事である程度フォローが出来ましたから、
十分な能力を持った機関砲となったわけです。
ただ、そうは言っても、そのデメリットも当然、残ったままです。
中でも運動エネルギーの不足による、弾道の直進性不足は
かなり問題となったと思われます。
特に下から上方向に撃ちあげる、という形になった場合、
命中率はかなり落ちたんじゃないでしょうか。
目標があまり動かない、そしてデカイという
戦略爆撃機が相手ならなんとかなったでしょうが、
高速で飛び回る戦闘機相手だと、まっすぐ飛ばず、飛距離もないこの機関砲では
かなり苦労したんじゃないかと思います。
上空から下に向かっての一撃離脱で、地表方向に向けて撃つなら、
なんとかなるでしょうが、そんな都合のいい空戦ばかりでもないでしょう。
が、今のところ、ここら辺についての、ドイツパイロットのコメントなど、
全く資料を思ってないので、そう思う、というところまでにしておきましょう。
ちなみに、今回の発見。
画面右に写ってるのがMe163コメートのアンテナポールなんですが、
後ろに向かって湾曲してるんですね、これ。
なんだかノミの前脚みたいだ。
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