■戦争に行った機体と行ってない機体と
コンソリデーテッド カタリナのPBY6A。
アメリカ製の傑作水上機(車輪があるので水陸両用機だが)で、
第二次大戦中はイギリス空軍も602機のカタリナを使用したとのこと。
…これだけの水上機を運用した“空軍”というのも珍しいような…。
ただし、イギリスが使ったのはこれの前の型、PBY5でした。
PBY6はカタリナの最終生産型で、この展示機は1945年4月、終戦間際に完成した機体。
アメリカ中をたらいまわし、と言う感じに各地でパトロール任務に就いたあと、
1956年、デンマーク空軍に売り飛ばされます。
ここでも空軍か、という感じですが、その用途はグリーンランドの空中からの測量、調査で、
水上からの運用ができる、というメリットから、
何機かのカタリナをデンマーク空軍は運用していたようです。
最終的に1970年に退役、72年にRAF博物館に、ほとんど無料みたいな値段で譲られた、との事。
ちなみに、機首先端に窓があり、中をのぞけたのですが、なぜか子供に大人気で、
最後まで見る事ができませんでした…。
デ・ハビラントのヴェノム(Venom) FB.4。
最初、ヴァンパイアだ、と思ってたんですが、どうも胴体がちょっと長いし、
そもそも機首部に木造ボディにあるまじきリベットが見える。
で、解説板を見たら、ヴェノムでした。
ちなみにヴェノムは毒虫、毒蛇といった意味ですが、
ヴァンパイアとはVで始まって牙がある、みたいなつながりなんでしょうかね。
この機体、ヴァンパイアのエンジン強化版、といった印象しかなかったのですが、
機首部分もついに金属製になったほか(笑)、
主翼から胴体までほとんど新規に設計し直してるようです。
F-86セイヴァーとF-86Dセイヴァードッグの関係みたいなもんでしょうか。
ついでにヴェノムの試作型は1949年9月に初飛行となってますから、
F-86セイバーより2年もあとの機体。そう考えると、かなり微妙な…。
ただし、イギリス機としては海外展開に成功した方で、
ニュージーランド、イラク、ベネゼエラ、スイスで運用されました。
特にスイスでは、P-51ムスタングの後継機として
国内でライセンス生産を行い、1983年まで現役だったとか。
展示の機体もスイスで生産されたもので、
1956年に製造、1978年に退役後、ハーキュリーエンジンと交換で、
この博物館に来た、との事。
ノースアメリカン P-51ムスタングD。
大戦中、イギリスは2600機を越えるムスタングを
レンドリースでアメリカから受け取って運用してたのですが、この展時機は
イギリス空軍の塗装ではなく、アメリカ陸軍航空軍仕様となってます。
…しかし、2600機の戦闘機を貸し出すってすごい話だよなあ。
日本の三式戦 飛燕の全生産数とほぼ同じ数のムスタングですよ。
ドイツとしては、いい迷惑以外の何者でもないよな、これ。
展示の機体は、1944年、ノースアメリカンのイングルウッド工場製の機体で、
アメリカ本土で終戦を迎えてしまい、戦場には出てません。
戦後、カナダ空軍で運用された後、民間に払い下げられ、その間に複座に改造されるわ、
何度もクラッシュするわ、最後は死亡事故を起すわ、で、
まあ、保存状態ウンヌンを問う機体ではないでしょう。
最終的にカリフォルニアの会社から、スピットファイアと交換でRAFに引き渡され、
ロンドンの博物館に展示後、03年に例の非常に完成度の高いムスタングが
寄贈されたため、追い出されるような形でコスフォードに来た、との事。
いや、ホントにムスタングってのはまともな展示機に恵まれない機体です…。
ホーカー ハリケーンIIc。
ハリケーンは、スピットファイアと並ぶ、第二次大戦時のイギリスの主力機なんですが、
まあ、いろんな面でアレで、戦争に勝っちゃったから誰も何も言わないけど、
これがドイツや日本の機体だったら、今頃、ボロクソに言われてたんだろうなあ、という機体。
ハリケーンの胴体後半は、全金属製ではなく、
鋼管で組まれた骨組みに、羽布を張ったもので、
これで第二次大戦を戦った、というのはある意味すごい事なんですが。
設計はイギリスのホリコシさんこと“サー”シドニー・カム。
ちなみに、彼がこの次に設計したのが、事実上のパイロット殺人機、タイフーンでした。
この機体、LF738はイギリスの博物館にある機体としては珍しく、
来歴がよくわからない部分があります。
記録があるのは1944年3月以降で、
爆撃機の銃手の訓練用標的機やらで使われていたようです。
ちなみに手前に展示されてるのは、イギリスで使用された航空機関銃&機関砲。
一番下はヒスパノの20mm機関砲でして、
真中のブローニングの12.7mm、一番上の7.7mmと比べて、
異常に銃身が長いのがわかります。
なるほど、主翼から盛大に飛び出すわけですね、こりゃ。
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