■実験するのだ、紳士淑女諸君
その先には、いろんな飛行実験のコーナーが。
飛行機関係ないのでは、というものもありましたが、それなりに面白いものが多かったです。
本来は子供用なんでしょうが、私も含めて、客のおっさん率、意外に高し(笑)。
その横にはジェット練習機のコクピットを見れる展示があり。
BACのジェット プロヴォスト(Jet
Provost)でしょうか。
これも見たれ、と思ったんですが、並んでるのはどう見ても12歳以下の皆さん、
という感じでさすがにあきらめる。
さて、この実験機棟の主 その1がこれ。
ブリストル 188型(Type
188)。
ちなみに、これも開発中にブリストル社がBACに統合されてしまったため、
現在はBAC188型、という名前でも表示されており、見学者の混乱を誘っております(涙)。
えらく長細い機体で、16:9画面で広角で、というLX-5&LX-3のカメラを
持ち込んで、ホントによかったと思いました(笑)。
もっとも、これ以外でも、この広角16:9カメラにはとても助けられる事になります、今回。
1952年ごろ、マッハ3クラスの高速&高高度偵察機の開発を決めたイギリスは、
アブロ730をその計画に採用する事になりました。
(後に超音速核爆撃機としても運用が検討された)
が、例によって、マッハ3で飛ぶ飛行機なんて何がどうなってるんだ、
という状況で、その基礎研究用の機体が造られる事になるのです。
それがこのブリストル 188型だったのでした。
ライトニングと同様、実験機と実機は別の会社の製作となってるわけです。
ちなみにこの段階では、アメリカもA-12(これの進化発展型がSR-71ブラックバード)の
開発を始めたばかりですから、世界中が手探り状態だったわけです。
この機体では、熱対策が主な研究対象になったようです。
高速時に空気との摩擦で機体が高温になる、というのはわかっていたのですが、
実際にどうなるのか、というのを調べるつもりだったとか。
ところが、肝心のアブロ730の方がキャンセルとなってしまいます。
イギリスは、例の1957年の防衛白書でこれからはミサイルの時代だよ!
と宣言、多くの航空機の開発をキャンセルしまくったのです。
まあ、もうお金も無かったし。
ちなみに、そのアブロ730もかなり独特な(笑)デザインでして、
未だにどうやってパイロットは前を見るのか(無人機ではない)わかりません(笑)。
興味のある人はAvro
730で検索してみてください。
ついでに、730の機体後半部分は、後のコンコルドによく似てます。
が、なぜかそのデータを取るために造られていた
このブリストル188型だけは計画が続行され、
1962年4月14日初飛行、その後、全部で3機製作されたとの事(1機は地上試験用)。
ちなみに愛称は“火を噴く鉛筆(Flaming
Pencil)”だったそうな…
しかし、1957年にキャンセルされたアブロ730の研究用機体が
1962年に初飛行ってのは、スゴイ話ですよね(笑)。
さまざまな新しい技術を投入しまくった結果、開発が遅れまくったため、らしいですが。
で、この機体、ピカピカの金属ボディですが、実はステンレス鋼製のジェット機だったりします。
ロンドンの博物館のトコにも書きましたが、航空機が金属化されるのは、
軽量で頑丈なアルミニウムを使った合金、ジュラルミンが登場してからで、
それ以外の金属で飛行機を作っても、重くて飛ばなかったわけです。
当然、そんなこたあイギリス人だって百も承知で、
それをなんで重いステンレス鋼にしたか、というと、それが高熱対策だったから。
摩擦による加熱は、おそらく摂氏300度を超えると見られていたので、
ジェラルミンでは劣化と変形が大きく、当然、空中分解の危険が出てきます。
なので、高熱による劣化、変形の少ないとされたステンレス鋼が採用されるのです。
博物館の説明によると、機体のほとんどをステンレスで造ってるとの事ですが、
その横に書いてあるデータによると、燃料搭載時でも最大重量は約17トン。
全長23.67m、全幅10.7mで、大型のジェットエンジン2発を積んでる、と考えると、
それほど極端に重いとも思えず、ジュラルミン製の部分も結構あったんじゃないでしょうか。
ちなみに、高温対策でステンレスを使う、というのは、
後にアメリカの試作超音速爆撃機、XB-70ヴァルキリーでもやってますね。
ただし、この機体、最高速度は1900km/h しか出なかった上、思ってた以上に
エンジンの燃費が悪く、30分も飛んだら燃料切れになってしまったそうな。
当然、マッハ3クラスの飛行データは取れるはずもなく、
ここまで開発が遅れて、ようやく飛んだと思ったら、
全く意味が無かったと、という機体になりました。
…合掌。
機体後部にある謎の装置。
恐らく、着陸時用エアブレーキで、これで空気抵抗増やして速度を落すのじゃないかと。
なんだか不思議な構造になってますが、これは胴体の内部をカットして、
そのまま使ってるからでしょう。
188型の胴体は、ステンレスのハニカム構造を採用して強度と熱対策をやっており、
胴体の外周部はだいたいこういった構造で埋め尽くされてます。
(なので燃料もあまり入らず、飛行時間は限られる事に)
このステンレスハニカムという構造は、後にXB-70ヴァルキリーも採用してたはず。
ひょっとして、ブリストル188型が元ネタ?
その横にあった、ステンレス製らしき解説板。
良く見ると中央右下に誰かのサインがありますが、これは担当したテストパイロットのもの。
…こんな機体設計したヤツより、飛ばした人間の方が
ずっと偉いんだ、という遠まわしなメッセージでしょうか…。
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