■めぐりあって宇宙へ
で、この展示棟の隅っこには、本物の風洞装置があって、実演をやってます。
例によってここで子供達の集団に取り囲まれてしまったので、
ドサクサにまぎれて一緒に見学してきました。
左手のガラスケース貼りのケースの中に747の模型があり、
風洞の風速を徐々に上げてゆくと、
これが主翼に発生する揚力によって徐々に浮き上がり、子供達にウケます(笑)。
風洞装置まで持ってる博物館は初めて見たような気が。
でもって、これにてこの展示棟は見学終了です。
さて、いよいよここが最後の展示。
航空宇宙博物館ですから、宇宙です(笑)。
ちなみに誰も覚えてないと思いますが(涙)、フランス編の冒頭で、
この博物館の宇宙関係の展示の一部はスミソニアンに匹敵する、
と書いたのは、既に紹介した屋外のアリアンロケットについてでして、
ここの展示については、まあ、軽く、肩の力を抜いて行きましょう(笑)。
宇宙、というか宇宙ロケットを語る上で
避けて通れないのが1940年代前半のドイツのロケット技術。
これには単にドカンとデカイロケットを打上げる、というだけでなく、
それをキチンと制御して飛ばしてた、という意味があります。
なので、この博物館もまずはそこら辺から。
おなじみのドイツのチョー兵器、V2ミサイルのエンジンの下部(笑)。
これがエンジン、として展示されてましたが、
エンジン本体としてはこの上にある部分が必要で、
ここにあるのは、燃焼室とノズルだけでしょう。
ちなみに、英米はたくさんのV2ミサイルを戦利品として没収、
本国に持って帰ったのですが、フランスは分けてもらえなかったのか、
V2に関する展示はこれだけでした。
そんなV2ロケットに関する説明パネル。
ちなみに、連合軍によるパリ解放後に
この本格運用がはじまったので、パリもV-2を撃ち込まれてます。
で、まあ、ここから宇宙ロケットの展示に行くのかな、と思ってたら…
いきなりフランスの弾道ミサイル、SSBSシリーズが転がってました(笑)…。
なんで宇宙コーナーに弾道ミサイル?というのには
ちょっとした説明が要るでしょう。
核ミサイルと言うのは大雑把に行って2種類あります。
飛行機のように一定高度を飛んで目的地まで達する巡航ミサイル、
そして宇宙ロケットのように大気圏外まで飛んで行き、
そこから流星のごとく落下してくる、この弾道ミサイルです。
ドイツってのはスゲエ、という部分をいくつか持ってるんですが、
2種類のミサイルは、それぞれV-1、V-2という形で
既に第二次大戦中にドイツによって実用化されていました。
まずは巡航ミサイルの元祖が、パルスジェットで飛行してドーヴァー海峡渡って、
ロンドンに落っこちて、というV-1飛行爆弾です。
まあ、これはわかりやすいでしょう。
一方のV-2ミサイルは、まっすぐ打上げるだけなら高度200km以上まで到達可能で
(その代わり、自分のとこに落ちてくるが(笑))
もっとも遠くに飛ばす場合でも高度90km前後、大気圏の限界近くまで上昇します。
なんで?といえば理由は二つ。
地平線の向こうにある、つまり遠距離の目標まで到達させるには、
弾道軌道、放物線軌道で打ち込むしかないんですが、
この時、高く飛べば飛ぶほど、遠くまで届くから、というのが一つ。
(厳密な説明ではない。大筋でそんな感じと思ってください)
もう一つは高高度まで上がってから落下する場合、
重力による加速の結果、極めて高速で落下してくるため、
事実上、迎撃不可能な飛行物体となるからです。
V-1飛行爆弾は、イギリス側の防空体制の強化もあって、
運用末期はかなりの数が撃墜されてしまってましたが、
この真上方向から超高速で突っ込んでくるV-2ミサイルに関しては、
最後まで、全く打つ手がありませんでした。
なので、連合軍はその発射基地の方を徹底的に叩きに行きます。
で、よく知られているように、V-2ミサイルの開発を行ったフォン・ブラウンらは
そもそもはドイツ宇宙旅行協会のメンバーであり、
その技術は、彼らが宇宙ロケットの開発を目指して開発していたものでした。
なので、宇宙ロケットと、弾道ミサイルは密接な関係があり、
終戦後、アメリカとソ連が宇宙開発にしのぎを削ったのは、
みんな宇宙が大好き、というわけではなく、弾道ミサイル技術に直結するからでした。
本格的な宇宙ロケットなら、それこそ地球の裏側でも届くわけで、
それに核弾道を積まれてしまったら、防ぐ手段はほぼありませんから、
この技術を手にした国家は、他国に対し、一方的に有利になる、と考えられたのでした。
そんなわけで、ここの展示も基本的に宇宙と弾道ミサイルが平行して…
というより、どうも弾道ミサイル方面ばかりの展示となっていたのでした。
トホホ…
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