■みんなで夢を見すぎた日
ボンジュール! ペロ君!
ミーがおフランス帰りのアナーキャーザンス!
「さいですか」
さっそく今回のオマケに行ってみるザンス!
内容はフランスの航空宇宙博物館の展示を先取りザマス!
「さいですか」
今回のテーマはballon、バルーン、これすなわち気球だ。
「ランプじゃないの、これ」
その通りなんだが、これは気球型のランプなんだ。
右のとかは、よく見るとカゴの部分がついてるよね。
「で、これが?」
今回のお題はフランスにおける気球の大ブームについて、なのさ。
日常品のランプになるくらい流行ってたんだよ。
人類が最初に手に入れたまともな飛行手段は気球なわけだが、
1783年にはモンゴルフィエの熱気球、
その直後には水素を詰めたシャルルのガス気球による初飛行が成功、
フランスは一気に世界の空の中心地となって行くんだ。
後に連中が飛行機に関してアメリカに完全に出し抜かれたのを
なかなか認めようとしなかった一因として、
“フランスは120年以上前から既に空の大国だったのよ”
というプライドがあったのさ。
120年間の蓄積が新大陸の自転車屋ごときに
そう簡単に打ち破れられてたまるか、という感じにね。
「そうなの」
そうなのさ。
ちなみに1783年というと日本じゃまだ江戸時代、田沼意次の政治の全盛期で、
まさかユーラシア大陸の反対側で人が空を飛んでるなんて夢にも思わなかったろう。
ついでながら1794年、フランス革命戦争中に、フランス軍はお得意の気球で
既に着弾観測と偵察までやってるのさ。
「江戸時代に?」
江戸時代にザンス。
杉田玄白らがオランダの医学書ターヘル・アナトミアを翻訳、出版したのが1774年、
西洋の科学ってすごいね、とか言ってた9年後には
フランスじゃ人が空を飛んでいたわけなんだ。
その結果がここら辺。
「何かのポスター?」
とにかく人が空を飛ぶ、というのは衝撃だったので、気球の先進地、
フランスでは大ブームが起きるんだ。
なので、気球は極めて人気の高い見世物となり、
これに便乗したさまざまな商売が登場、19世紀を通じてフランス中で
怪しい気球のイベントが乱立することになる。
「じゃあ、そのポスターなんだ」
ピンポンザマス。
まずは右、丸い気球の絵の上に書かれたBallon
Captif
というのは係留気球のこと。
絵から見て地上から少しだけ浮かせて係留した水素気球に
お客さんを乗せて料金を取ってたんじゃないだろうか。
「つーか、より怪しいライオンのいる左のは?」
こっちは、さっぱりわからん(笑)。
上に書いてある文章は、絶体絶命の上昇!みたいな意味らしいが、
どう考えても当時のガス式気球で鉄のオリごとライオンと人を
持ち上げる事ができたとは思えないしなあ。
「いわゆる実際に行ってみたらガッカリだった系?」
じゃないかなと思う。
基本的に夢と希望、さらには未来から愛まで、
とにかく全て気球に託してしまった、
という感じがこの時代のフランスにはあったから、気球の絵を
つけとけば客は来るだろう、的なもんじゃないか。
実際に見たわけじゃないから、断言はできないけどね。
「なんかエッフェル塔が燃えてますよ」
燃えてるねえ…。
ちなみに右上に1893年の字が見えるので、このポスターが造られたのは
塔がまだできて4年目、当時としては斬新な建造物として見られてた時代だ。
「で、なんのポスターなの、これ」
気球から空中ブランコの人がぶら下がってるし、
左側の絵を見る限り、典型的な19世紀のサーカスなんだが…
「だが、何?」
一番上に書いてあるフランス語は、来るべき未来を大予想!
ってな感じの意味らしいんだよ。
「…エッフェル塔の放火予告?」
さあ、どうかなあ…。
もしかしたら気球が“未来”の象徴なのか、とも思ったが、
さすがに1893年、モンゴルフィエとシャルルの初飛行から
100年もたってるから、それは無いと思うし。
まあ、よくわからん、という事で、ひとつ。
「またそのパターンかい」
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