■だんだんディープになってゆく
そのブリティッシュ ファントムの後部席。
これじゃ全く前は見えないだろうなあ、という感じです。
FCS(射撃管制装置)などを操作するオペレーターの席ですから、
それで問題はないのでしょうけども。
しかしすごい数のスイッチと計器ですね。
ほんとに全部使ったんでしょうか、これ。
その向こうにあったブリストル ブルドッグのIIA。
1929年の5月、世界恐慌の5ヶ月前に配備が開始された戦闘機です。
戦後はその軽快な運動性から、エアショーの曲撃飛行で活躍したそうな。
複葉機ですが金属製パーツの使用が進んでいて、
さすがに第一次大戦の機体とは違うぜ、という内容にはなっています。
…なってはいるんですが、この機体の現役引退は1937年で、つまりドイツのMe109も
イギリスのスピットファイアも、とっくに初飛行した後なのです、これ。
実は初代スピットファイアことType
224はこのブルドッグの後継機の競作に参加した機体でした。
(今回登場してるスピットファイアはType300で、二代目のスピットファイア。全く別の機体)
この競作ではグロスターのグラディエーター(次回登場)が採用となるのですが、
この敗北をバネにスピットの生みの親、ミッチャルが奮起して設計したのが
二代目スピットファイア、我々が普通にスピットファイアと読んでるType300です。
さて、ここで時系列を確認してみましょう。
このブルドッグの現役時代が1929年〜1937年。
スピットファイアの初飛行が1936年、部隊配備の開始が1938年。
で、1939年には第二次世界大戦が勃発します。
そして、前のページに登場したイギリス初のジェット戦闘機、ミーティアの初飛行が1944年。
つまり、上の写真のアメリカの田舎で農薬でも散布してそうな複葉機の配備から、
7年後にスピットファイアが生まれ、さらにその8年後にはジェット戦闘機が飛んでます。
わずか17年で、車輪の引き込みすらできない複葉機からジェット戦闘機まで進化してるのです。
さあ、今から17年前に、日本でどんな飛行機が飛んでたか、考えてみましょう(笑)。
この時代の戦闘機の進化ってのは、ホントにすごいものがあるので、
それぞれの性能評価を考える場合、開発時期をよく考慮する必要があります。
その前にはさらに一世代前の機体、デ・ハビラントの爆撃機DH9Aが。
1918年配備開始で、ギリギリ第一次世界大戦に間に合ってるようですが、
基本的には第一次大戦後の運用がメインだったようです。
この機体はオリジナルですが、主翼と尾翼部分は失われており、
この博物館で作り直してる、との事。
どうも第一次大戦後は、ベルリンの航空博物館に展示されていたようで、
それを1977年にスピットファイアと交換でイギリスに持ち帰ったものだとか。
この時代の爆弾の搭載の仕方ってのはあまり見る機会がないと思うので、
その搭載部も載せときます。
懸架部分は金属製ですが、これを取り付けてる主翼の桁は木のはずなので、
強度的にけっこうギリギリのライン、という気もします。
でもって、ちらりと左に見えてますが、この機体、胴体の下にも爆弾を積めたようです。
ついでに、もう一度、上の全体写真を見てもらうと、主翼の一番外側の支柱が
下に出っぱてるの、わかるでしょうか。
これ、どうも主翼が長すぎて、着陸時、反動でタワんだ主翼が地面にぶつかるのを
防ぐためのものらしく、結構無理をしてる設計のような気もします。
最初は郵便配達用の何かか、とおもったんですが、
1910年頃から1915年あたりまで使われてた消火用手押し車だとか。
本来は車輪の間の車軸の周りにホースを巻いてたんでしょうか。
初期の航空機は木の骨組みに布貼りの胴体で、
そこに燃えるために産まれて来たアイツことガソリンを積んでるわけです。
それこそ火がついたら最後、という感じだったろうなあ、と思われ、
こういった装備も早急に進んだんでしょうね。
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