■とりあえずざっと
終戦直前の1945年3月に生産され、戦後1954年まで使われていたモスキートB35。
木製の胴体ながら機体のコンディションはいい感じ。
さらにここは機体を下側から見れるので、
そうなっていたのか!的な発見が結構あります。
ムスタングP-51D。
英米の航空博物館ではよく見かける機体で、ここでもあまり注目されてませんでしたが、
この博物館の機体はキッチリと戦時の状態が再現がされていて資料性は高いです。
機体のアチコチに書き込まれたステンシル(注意書き)やら、
多くの現存機では外されてしまってる編隊灯、キャノピー後部の
補強用のアーチ型金具などまでキチンと装備されています。
でもって、場所的に上の回廊からでも、下のフロアからでも見れるので、
それこそあらゆる角度から眺める事ができ、ムスタング好きにはありがたい展示となってます。
この博物館、日本のキ-100、いわゆる五式戦闘機を持っており、
現在世界で唯一の現存機となっています。
でもって前回の旅行記の後、2007年くらいからRAF博物館のデータベースに
保存機ごとの調査報告書がかなり追加され、
その中でこの五式戦も機体の履歴、どこで拾って来たのかとかが
結構仔細に述べられています。
現在わかってる範囲だと1945年7月末(つまり終戦の約2週間前)に
川崎の各務ヶ原工場で製造されたもので、製造番号は16336。
最初は各務ヶ原基地に配備されたようです。
その後、終戦直前にベトナムのサイゴンに自力で飛行して移動、
現在でも国際空港として使われているタン・ソン・ニャット飛行場に置かれていたのを
終戦後デカイ顔して植民地であるベトナムに戻って来たフランス人が発見した、とのこと。
(ここら辺の情報は2006年にAeroplane誌に発表された記事に基づいてると思われる)
ただしここら辺、日本側の資料だとこの機体は小牧基地のキ-100(五式戦)を
陸軍航空輸送部 第7飛行隊のパイロットが単機でシンガポールに向け空輸中だったもの
と言われており、詳細は私にはわかりませぬ。
で、これを運んできたY.キシ軍曹というパイロットも現地で見つかり、尋問したところ、
現地部隊の士気を高めるために飛んできたのだ、と答えたとされます。
なんじゃ、そりゃ(笑)。
サイゴンに居たのがシンガポールへの空輸の途中だったとしても、
なんでそんな時期に単機でシンガポールまで飛ぶ必要が?
イギリス側の資料でもパイロットは軍曹だった、とされるので、
純粋に航空輸送部隊のパイロットだったと思われ、
何らかの極秘任務を帯びた参謀とかが自ら飛んできた、
というわけでもなさそうです。
うーん、本土防空に1機でも戦闘機は欲しい時期だったはずなのに。
まあ、謎ですね。
で、その後、そのキシさんがパイロットとなり、テスト飛行を行った、
と言う事なんですが、これが連合軍による正式なものなのか、
戦争に勝ったような顔して戻ってきたフランス人が勝手にやったものかはわかりません。
そのテストフライト中に胴体着陸を行う事態が発生、
この時、プロペラ、機首下面のオイルクーラー、さらに尾輪を破損したとされます。
なので、ここら辺はオリジナルのパーツではありません。
とりあえず、たまたま同じ飛行場にあった百式司偵からプロペラを、
四式戦疾風からオイルクーラーを調達してます。
さらに燃料冷却装置と主翼下のパイロンも破損したので、
これは三式戦から持って来たとされます。
…1945年のサイゴンに、なんでそんな多種多様な機体があるんでしょう。
全部で24機というのは、同じ機体を運用する飛行隊ではなく、
さまざまな、それこそ陸軍が使用する機体オール大行進状態だったのか。
で、修理後しばらくは地上試験のみを行ったものの、
45年年末には再び飛行可能な状態になり、
マレーシアにあった連合軍の航空技術情報部隊(ATAIU-SEA)に持ち込まれて、
イギリス空軍の元で再びテストが行われています。
その後、1946年の夏に英国本土に博物館展示用の戦利品として、
船で運搬されて現在に至る、とされています。
ついでにロンドンの帝国戦争博物館にあるコクピットだけのゼロ戦、
コスフォードのRAF博物館(後ほど登場)にある百式司偵なども、
この時、イギリスに運び込まれたもののようです。
ちなみにテスト全期間、さらにイギリス本土に運び込まれてからも、
この機体はOSCAR、すなわち一式戦 隼(はやぶさ)として扱われており、
誰も疑問に思わなかったとか(笑)。
まあ、私も夜道で会ったらどっちがどっちだかわからないし、
まさか1945年にもなって、この程度の性能の新型機が地球上に存在するとは
イギリス人、夢にも思わなかったのでしょう…。
ちなみにこの勘違い、少なくとも1960年代まで続いており、
1960年に再組み立てを行った際は今度はTOJO、すなわち二式戦 鍾馗として
登録されていたようです…。
まあ私も(以下略)
そこから上を見ると、おそらく飛行船のゴンドラじゃないか、と思われる展示が。
でもって、乗ってる人はなぜか敬礼中。
まあ、敬礼をするしないは個人の自由ですからね。
前回は無かったF-35の模型が展示されていて、
そういや英米の共同開発だったな、と思い出す。
ユーロファイター タイフーンを持っていて、さらにこれも買う、
となると、余計なお世話ですがイギリス、お金の方は大丈夫ですか。
身の丈に合わない軍事費で国を滅ぼしかけた経験はちゃんと生かされてるのか、
とか日本人の私が考えることでもないですが。
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