■車両だってがんばった



床の上に適当に置かれてた展示。

なんだこりゃ、と思ったら、当時の爆弾投下装置と、爆弾の内部模型でした。
どうもこれ、あの双発爆撃機ヴァイミーに積まれてたものらしいのですが、
あの巨大な胴体で、こんな小さな爆弾しか積めないのでは、
兵器としては全く意味が無いような。

右側のレーバーを引くと投下、となるらしいのですが、レバー4本に対して、
ここに積める爆弾は2発のみ。
詳しいことは不明ってことで…



この時代の車両展示も、結構、充実してました。
イギリス空軍は、すでに第一次大戦時から、自動車の本格運用を始めていて、
各部隊(Unit)ごとに9台の軽量トラックと、1台の人員搬送車が配備される事になってます。
(ただし実際は定数を満たすことはほとんどなかったらしい)

当然、空軍も大陸、ヨーロッパ本土に進出して戦ってたわけで、
各地に分散した部隊への部品配送、機材の運搬などに使われたようです。

その空軍(当時はRoyal air corp)が使用した軽量トラックが、
このクロスリー(crossley)という聞いたことないメーカーのトラックでした。
ボンネットが異常なまでに小さく、こんなエンジンでまともに走れたのか、
と思うんですが、760kgまで積めた、との事で、実用性はあったようです。

ちなみに、この車、後輪の間にオイル受けの皿が入れてありますから、
恐らく現役、走れる状態で維持されてると思われます。



こちらはおなじみ、大量生産バカ一代、フォードのT型です。
ヘンリー・フォードの話で説明したように、当時、フォードはイギリスに既に大量生産工場を持ち、
このT型を狂ったように生産しまくります。
その結果、終戦時には18984台のT型がイギリス軍で使われていた、とされますから、
この時代ですでに、イギリス軍の物資運送システムは機械化されてたわけです。

空軍でも連絡用車、救急車、そして貨物トラック(空軍ではTendarと呼んだ)に使用してました。
でもって、これも現役で走れる状態に維持されてます。



前回の旅行記ではダックスフォードのとこで紹介した航空機のエンジンスターター車。

フォードT型が戦後、大量に余剰となったので、その車体を利用してます。
正式名称はハックス スターター(hucks Starter)というそうで、
ハックスというのは、この装置を開発した人の名前です。

レシプロエンジンでは最初にクランクを回してピストンを動かし始動します。
(ちなみにジェットエンジンも何らかの手段でタービンを最初に回す必要がある)
当時の航空機ではこれを人力で、プロペラを手で押して回してたのですが、
かなりの重労働であること、回転するプロペラに巻き込まれる危険性が高いことから、
この車が開発されました。
動力は車のエンジンからもらい、上部の棒をチェーン駆動で回します。
それを航空機のプロペスピナーにひっかけて(一部はシャフトに直結)回転させるのです。

1930年代後半に入ると、機体にエンジンスターターが内臓され始め、
パイロットが直接、コクピットからエンジンをかけられるようになり、
この手の車両は引退して行くことになりました。

ちなみに博物館の解説によると、
ウチではもう1930年代にはほとんど使ってなかったけど、
ソ連と日本じゃ1945年の終戦まで使ってたらしいぜ、と書かれてました。
つまり、ウチのアイデアをパクってそのまま進化しなかったんだぜ、
あの連中、という事ですな。

まあ、その通りなんで仕方ないですけども。

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