■ファシストがやって来た



はい、その通り。
まずはナチス党の登場から始まります。
1919年にヒトラーが入党し、1933年、事実上のクーデーターで政権を握り、
ナチスドイツが成立、以後、第二次大戦に向けてひた走る事になるわけで。

1933年の全権委任法の成立時、ナチス単独で議会の過半数を抑えるのに失敗しており、
さらに憲法改正に必要な2/3の議席数には程遠い状態でした。
よって、党の傭兵ともいえる突撃隊を用いて国会を占拠し、
全権委任法を可決させます。
それ以前に反対に回ると見られていた共産党員らは
警察権力を手中にしていたゲーリングにより逮捕、拘束され、
彼らの議席は事実上、奪われてしまっていました。

よって、国会の承認を得ている、とはいえ、
国会を暴力で把握した上での可決ですから、時々見かける、
ナチスは正当な選挙によって独裁を達成した、という説明は誤りです。
これは事実上のクーデータでしょう。

ついでに、後ろのナチスの旗に注目。
日本のお寺の地図記号のようにハーケンクロイツが水平になってます。
少なくとも、1933年の政権奪取後は御馴染みの
斜めになった、これを45度右に傾けたモノが使用されてますので、
どうもごく初期のみ、この水平のハーケンクロイツは使用されていたようです。
1923年のミュンヘン一揆の頃などは水平だったのが写真で確認できます。



ナチスドイツの特徴の一つにカッコよかった、という点があります。
後のドイツ軍のユニフォームなどもそうですが、
この時期のドイツの制服のデザインは非常に洗練されており、
見ただけで、強い印象を見るものに与えます。

ナチスの初期のユニフォームはそれほどでもないのですが、
後のナチス党の私的な軍事組織、親衛隊(SS)などは、
今見てもカッコいいなあ、と思うデザインになってゆきます。
(親衛隊は国家の軍隊ではない)

写真は、ナチス党員によるパレードのフィギュアセット。
これは市販されていたのか、何かの記念品なのかはわかりませんが、
結構、よくできていました。



で、その手の元祖はこっちですね。
イタリアのムッソリーニ率いるファシスト党。

党の成立時期は、ナチス党とそれほど変わらないのですが、
こちらは1922年、ナチスがミュンヘン一揆でボロボロにされる前に、
既にイタリアにおける国家権力を掌握していました。

彼らのカッコいい制服、イメージ戦略など、
ナチスに与えた影響は大きいものがあります。

この党がいわゆるファシズム、
国家全体主義の名前の由来となるわけです。
ファシズムの定義は人によるんですが、大筋では独裁者の率いる政党により、
国家権力が完全掌握され、その結果、
国民が国家と運命を共にする事を強制される国、といった感じでしょうか。
独裁者に率いられた強烈な愛国主義国家、と考えることも可能かもしれません。

イタリアではムッソリーニ率いるファシスト党、
ドイツではヒットラー率いるナチス党により
国家権力が掌握され、両者はファシズム国家となりました。

さて、では枢軸国(Axis)の残り一つ、日本はどうなのか。
日本に国家権力を独占した政党なんてありましたっけ?

日本の場合、軍が国家を掌握していました。
これは政党ではありませんし、個人による独裁でもありません。
軍が国会を事実上、掌握してしまい、全体主義に近い国家体制ではありましたが、
これをファシズム、と言っていいかは微妙なところです。

要するに、日本は政治家が不在でした。
国家形態としては、時代遅れもはなはだしい軍事国家でしかなく、
そんな状態で20世紀の近代戦争に突入するわけです。

とりあえず、政治家が国家を掌握し、軍も掌握してる、という点では、
実はイギリス、アメリカ、ソ連、そしてドイツ、イタリア、全てが同じなのです。
どの国も文民統制はキチンと働いていました。

ただ、日本のみが、政治家が不在でした。
この国だけが軍による国家運営となっており、経済も産業も、
理解してないどころか、考えたことも無い連中が、
国家を動かし、そして戦争に突入してゆきます。

さらに、文民統制の効いた近代国家なら
海軍と陸軍が対立する、というケースが生じても、
その上にある政治組織、あるいは独裁者が、これを調整できました。
が、軍人国家では調整役が存在しません。

まあ、軍と言う政治のアマチュアによって運営された国家が、
国家総動員の総力戦となる、近代戦を戦おう、
とうい話ですから、勝てるわけないよな、そりゃ(笑)。




そのファシスト党の展示の中にあった小銃。
てっきりイタリアの小銃だからカルカノだろうと思ったら、
これはイタリアを迎え撃ったエチオピアの植民地政府が持っていたマウザー小銃でした(笑)。

ドイツ軍が使っていたモノとは微妙に違う気がしたので調べてみたら、
例のベルギーの銃器会社、FN社がマウザーからライセンスを買って、
各地の植民地政府に売りまくったFN mauser M24 というタイプらしいのですが、詳細は不明。




なぜか、ファシスト党の展示の一部がスペイン内戦のものになっており、
これはスペイン製の9mm拳銃、アストラ(Astra) M1921だとか。
スペインが開発したオートマチック拳銃があったとは知りませんでしたが、
一部はドイツ軍にも供給されたとの事。

…あれ?結局、イタリアの銃の展示は一つもないのでは(笑)?


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