■エンジンの横で猿人が円陣を組んだ日
ブリストルと並んで、スリーヴ バルブで有名なネイピア社のエンジンですが、
これは普通のヴァルブが搭載されてた初期の液冷エンジン、ライオンです。
いろんな機体に積まれた傑作液冷エンジンではあるのですが、
どうもこれ、ミッチェルが設計したシュナイダートロフィーレース優勝機の一つ、
スーパーマリンS.5に搭載されてたエンジン…だと思う(笑)的なものらしいです。
さあ、少しずつ、何かがおかしくなって来ましたよ(笑)。
エンジン王国、ドイツのダイムラーDB610。
やけに横がスッキリしてるけど、一見、普通のDB系エンジンに見えます。
が、妙に斜めに傾いてる、ってのに気が付くでしょうか。そこに秘密があります(笑)。
後ろから見るとこうなってます。
わかりますかね、これ、二つのエンジンをニコイチで合体させてしまったもので、
左右に一つずつ、DB605エンジンが置いてあるのです。
ギアとクラッチを介して一つのシャフトを回し、出力2倍のミラクルエンジンに!
という考えによってこうなりました、というエンジンです。
ちみに上の写真でわかるように外側に排気管等は無く、
すべて両エンジンに挟まれた内側の空間に押し込まれていて、
これがまた発熱の問題を抱える原因となります。
はい、無茶ですね(笑)。
もっとも、イギリスもヴァルチャーエンジンで似たような事やってたりするんで、
当時としては結構行けるぜ、このアイデア!と思われてたのかもしれません…。
が、当然のごとく、これを搭載したドイツの戦略爆撃機He177はトラブル続出と成り、
ほとんど活躍せずに戦争は終わってしまいます。
それでもウッカリ1000機以上量産してしまい、戦争末期の製造分は、
それなりに安定した運用ができたようですから、世の中油断できません。
まあ、どっちにしろ、ドイツ空軍に戦略爆撃とは何か、というのを
理解してる人間は一人もいませんでしたから、無意味だったという事になりますが…
ちなみに、このエンジン、
メッサーシュミットのMe261試作偵察機にも積まれていた、
というのをこの博物館で初めてしりました。
もひとつ、ドイツでユモ205。
ヤケに縦長なエンジンですが、これは航空用ディーゼルエンジンです。
出力馬力辺りの重量比(Kg/ps)が大きくなりがちなディーゼルエンジンは、
軽量化が命となる航空エンジンには向いてないのですが、
燃費の良さから長距離飛行には向いていたようです。
Do18を始めとする、水上機などに採用され、その信頼性と燃費の低さは、
一定の評価を得ていたとのこと。
ちなみにこのエンジン、重量595kgで、出力600馬力、との事ですから、
1kg辺り約1馬力発生させてる、という事になります。
参考までに、同じ時期のR1830ツインワスプが708kgで約1000馬力出してましたから、
1kg辺り約1.4馬力を発生させてる、という事になります。
排気量が倍近く違うのに、重量的にあまり変わらないゆえの結果なのですが、
一部の特殊な用途を除くと、ディーゼルエンジンは飛行機には向いてないでしょうね。
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