■右も左も、エンジンで
レシプロエンジンの中で、唯一カウル付きで展示されていたのがこれ。
ゼロ戦などにも積まれていた栄エンジンの21型。
ちなみに解説にはprosperity(繁栄)という英訳表記もついてました。
ついでにR1830ツインワスプエンジンを改良したエンジンだよ、としてありました(笑)。
それを言っちゃイヤン。
カウルの塗装は一見、オリジナルのままに見えますが、
連合軍航空技術情報部 東南アジア局(ATAIU
SEA)が接収した機体は、
全て上から別の塗料で塗りなおしちゃってるので、これもオリジナルかは微妙。
(モノクロ写真しか残ってないので、カウルまで別の色にしたのかがわからん)
普通に見ると52型のカウルで、となると、帝国戦争博物館で、
今やコクピットだけでにされてしまってる機体のもの?という気がしますが、
全く資料がないので、詳細は不明。
イギリス人の書いたものを見ても、多分そうだと思うよ、としか書いてないし。
カウルの上にある穴は多分、エンジンの空気取り入れ口だと思うんですが、
これの左右にツギあてのような板があるの、わかるでしょうか。
スミソニアンの機体にもあり、てっきり、なんらかの補修跡だと思ってたんですが、
これにある、という事は普通付いてるものみたいですね、これ。
ついでに、下のカウルには、固定用の金具と思われるものが見えてます。
でもって、こっちが元祖(笑)ツインワスプR1830の90D。
1932年に完成したアメリカの傑作空冷エンジン。
基本的には1930年代のエンジンで、
第二次大戦期には二線級の扱いになっていたものの、
初期の800馬力から1200馬力までパワーアップを果たしてます。
ゼロ戦のライバル、F4Fにも搭載されておりました。
ブリストルのハーキューリーズ(Hercules/へラクレスの英語読み) エンジン。
手前のプロペラはなぜか根元からカットされた状態で残されていて、
その奥に見えてるのは、恐らく強制冷却ファン。
現物結構奥行きがあります。
ちなみにこのエンジンはハンドレイ・ページの
ハーミス(Hermes/ヘルメスの英語読み)旅客機に搭載されていたものだとか。
でもって、ブリストルの大型エンジンですから、これも当然、
“あの”スリーヴ ヴァルブエンジンです、はい。
これ、スリーヴ ヴァルブ部分がカットモデルになってたので、ちょっとアップで。
ピストンを使った内燃機関(エンジン)は、気筒(シリンダ)上に
必ず吸気と排気の孔がそれぞれあります。
一般的な(笑)エンジンだと、この孔にフタをするパーツがあり、
これを開けたり閉めたりすることで吸気と排気を行います。
が、このスリーヴ バルブエンジン、
白枠で囲った気筒の上部にそれらの機構が見えません。
このエンジンでは、ちょっと変わった方法でその孔の開け閉めを行うのです。
スリーヴ(Sleeve)は衣服の袖の意味で使われることが多いですが、
筒型で、中にものを出し入れするもの、刀の鞘みたいなものも指します。
スリーヴ ヴァルブエンジンの意味は後者で、乱暴に言ってしまえば気筒が
2重の筒になっており、その上下運動中に内側の筒と、外側の両者に開けられた
孔が重なると、その時気筒の中と外が繋がり、吸気と排気を行うのです。
厳密にはもう少し複雑ですし、なんのメリットがあるのか、
という話をすると終わらなくなるので、後は各自調べてください(手抜き)。
なんだかよくわからん、という時は、蒸気機関(エンジン)の構造から
入ってゆくと、判りやすいと思われます。
ついでに、普通のポペット ヴァルブエンジンをノースリーヴ エンジン、
と呼ぶことを提案したいのですが、どうでしょうか。
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