■空の巻



さて、今回も引き続き、メインホールから見てゆきましょう。
前回で陸上関連はほぼ片付いたので、今回は空と海編。
まずは空から行きますぜ。



最初はこれ。
なんじゃこりゃ、という感じで、最初はアタマの優れない人が造った爆弾だろうか、
と思ったんですが、解説を見ると展望車(Observation car)となってる。

展望車って、列車のケツに連結されるあの展望用の車両?
と思ったら、ある種のイギリス式ユーモアな命名らしく、
これは第一次大戦期のドイツの飛行船、ツェッペリンに積まれていた観測用のゴンドラでした。

***追記***
掲示板で指摘を受けたので確認してみたら、
“ロープで引っ張るカゴも Car と呼ぶ”のだと知る。
なので、エレベーターの箱を英語でCar というわけで、
この飛行船からロープで引っ張るカゴもカーとなるようです。

もっとも、展望車、という名前にしたのはそれなりにヒネリが入ってるんでしょう。

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飛行船本体からコレをワイアでぶら下げて牽引し、地上付近の観測をさせる、というもの。
夜間行動時や雲が出てしまった時には、地上が見えなくなります。
風に流され易い飛行船の場合、地上が見えないと、
自分がどこを飛んでるのか、さっぱりわからん、
という事でこういった観測員が乗り込む吊り下げゴンドラが作られたようです。

これはLZ-90飛行船が1916年9月2日の夜にイギリスへの爆撃を行なった際、
翌日の朝に地上に落っこちてるのが発見されたものだとか。
ゆえにボロボロなんですが、人は乗ってなかったとのこと。

ついでながらこのLZ-90飛行船は、僚艦のLZ-60とともに、
1916年11月の嵐の夜、なんと基地から吹き飛ばされてしまい(笑)、
無人のまま北海方面に飛んで行き、以後行方不明となりました。
ロマンチックなような、マヌケなような、不思議な最後、といったとこでしょうか。

でもって、この手の装備はドイツに限らず、
各国の軍用飛行船に搭載されていたようですね。



ドイツの空飛ぶ断末魔こと、第二次大戦末期の簡易ジェット戦闘機、
ハインケル He162ザラマンダー。
この博物館の機体は、30mm機関砲搭載の初期型、A-1だとされています。

ロンドンRAF博物館ではこの機体を軽く流してしまったので(笑)、ちょっとだけ解説を。

1944年、どう考えてもこの戦争は負けだよね、という中で、
簡単に作れて、練度の低いパイロットでも扱える機体を造ってチョーダイ、
という涙が出るほどムシのいい要望が空軍省から、各航空メーカーに出されました。

そんなん可能なら、最初からやってるわ、という冷静な判断がついたメーカーは
係わり合いにならずに逃げ出すんですが、なぜかそれまで
さんざん冷飯を食わされていたハインケルがこれに応じてしまうのです。

で、できた機体がこれ。
この機体のキチンとしたテストデータを見たこと無いんで、
はっきりしたことは言えませんが、終戦間際に実戦投入されながら、
公式撃墜記録はゼロで終わってます。

ついでにHe162の最大の特徴は、こんな時期に造られた機体のくせに、
やたら色んな名前があることでしょう(笑)。
空軍省は国民戦闘機、フォルクス イェガーと命名し、
ハインケルはスパッツ(Spatz/すずめ)と名づけ、
結局、計画段階のプロジェクト名だったザラマンダー(ザだよ)が
後には最も知られた名前になってしまいます。



ななめ後ろから。
この機体は、胴体背中にジェットエンジンを載せる、という他に例を見ないデザインで、
このため、コクピットから脱出が困難だ、と考えられました。

ジェットエンジンのファンが持つ吸引力は強力ですから、
コクピットから飛び出したとたん、
それに吸い込まれて即死になる可能性が高いわけです。

なので、実戦投入された機体として、世界で初めて、射出式の座席を搭載、
脱出時には上方向に向けて、ポーン、と放り出されるようになってました。

とはいえ、このエンジン配置は、ある意味ミッドシップ、機体の重心位置に
重量物であるエンジン、そして機体を持ち上がる力を生む主翼を
まとめて配置できる、という一種の理想的なレイアウトになってます。

ただ、エンジンは非力で、主翼の翼面積も小さいので、
この利点を活かせるほどの運動性能があったか、と言われると
微妙だなあ、という感じではありますが。

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