■海はいろんな神秘に満ちている



でもってこちらはイタリアの例の小型潜航艇。
どうも正式な名称がはっきりしないのですが、SLCというのが通称らしいです。
ちなみに英語表記では Human torpedo 、人間魚雷というエラクそのまんまなものでした(笑)。

これは二人乗りで、胴体後部にあるのが運転席。
カバーがついてますが、実際の運用時にはこれを外して、
人が外にむき出し状態で乗ったようです。
せいぜい水深10m前後しか潜らなかったようなので、そんなものなんでしょうか。

が、このいろいろと投げやりな兵器は、各国の小型潜航艇の中では、
ずば抜けて優秀な戦果を残していたりもするのでした。



運転席。

出撃の時は、酸素ボンベをしょったダイバーが乗り込むため、
水圧とか酸素供給とかは全く考えられてない潔い設計です。
(前席の酸素ボンベは船体側にあった可能性あり)
で、この座席の横に、磁石で船体に貼り付ける機雷を積んでおいて、
停泊中の敵艦にこっそり近づいて、そいつを貼り付けたら
速攻で逃げよう、というのがこの兵器。

例のドイツのビーバーが魚雷まで積んでるのに対し、妙にセコイですが、
ところがどっこい、これが大戦果を上げてたりします。

1941年12月18日、太平洋方面がエライ事になってる時に、アレクサンドリアに停泊していた
イギリスの地中海艦隊相手に、この人間魚雷が出撃します。
で、なんと港内に居た複数の艦に対して機雷の設置に成功、
さらに起爆もうまく行って戦艦HMSクィーンエリザベス、HMSヴァリアントの
2隻の艦底に穴を開けて、港内で着底させてしまうのです。

旧式戦艦で、決して一線級の戦力ではなかった艦ですが、
それでも、この兵器で戦艦二隻を行動不能に陥れたんですから、
信じられない位のコストパフォーマンスです(笑)。

ちなみにイギリスは12月10日には日本軍によってHMSプリンス・オブ・ウェールズを
沈められてますから、この時期、わずか8日間で3隻の戦艦が
行動不能に陥った事になるわけです。

ただし、水深の浅い港内だったので、真珠湾のアメリカ戦艦のように
浮上させて修理が行われ、最終的には戦線復帰しています。
それでも、1年半近くその修理にかかってますから、
相手の戦力をそぐ、という点では目的を果たしたと言えるでしょう。

で、これを覚えていた、というか忘れられなかった(笑)イギリス海軍は、
自らもXE型という小型潜航艇を開発、当初はフィヨルドに立て篭もっていた
ドイツの戦艦ティルピッツを標的にするも間に合いませんでした。

が、それじゃ悔しいので(笑)、これをシンガポールまで派遣、
港内に張り付いていた(というか航行は不可能だった)巡洋艦 高雄相手に
その初任務を行います。

結果は、前回のオマケで説明した通りで、一応は成功するものの、
高雄は沈まず、終戦まで生き残るのでした。



なんでこれが?という感じに唐突に置いてあったウラン型原爆、
広島に落とされたリトルボーイの原寸大模型。
まあ、イギリスが参加した戦争の一つ、ではありますが、何か違うような。



さて、これで大ホールの見学はほぼ終了。
この上の階のテラス展示部に行ってみましょうか。



アラビアのロレンスが生前に乗っていたバイクらしいです。
BROUGH SUPERIOR SS100との事ですが、よく知りませぬ。
彼はバイク事故で亡くなってたはずなんで、修理したのか、
別のバイクなのか…。

ちなみにロレンスについては、本人も興味深いですが、
彼をアメリカに紹介して、一躍有名にしたアメリカ人作家、
ローウェル・トーマスもかなり強烈な人物で、ちょっと面白い部分があります。
そもそも、ロレンスはアメリカが第一次世界大戦に参戦する、という世論づくりに
利用された、という変な側面があったりするのです。


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