■ソ連の充実
お次は私も初めて見たどころか、
ほとんど存在すら知らなかったソ連の練習機、Yak-18。
第二次大戦後の1946年初飛行ながら、ご覧のように胴体後部は羽布貼り、
主翼のほとんども同様で、さらに車輪は引き込み式に見えて、
よく見ると、主翼下面に脚収納用の穴が見えません(笑)。
実はこの機体、脚が後ろに折れるだけでして、
飛行中は車輪が主翼下にそのまま飛び出してます…。
(車輪の半分だけが埋まる穴が開いており、残り半分と脚は出たまま)
昨日見たアントノフAn-2といい、戦後のソ連機はワイルドだのう…。
こんな機体をMig15と平行して生産してたんですね。
ついでに、この機体はサブタイプが多い上、
ちょっと命名のルールが変わっていて、写真は無印、
元祖のYak-18で、サブタイプはなしとなってます。
で、この変な機首部を普通の円筒形のカウルに置き換えたのがYak-18Aです。
さらに以後はアクロバット飛行用に単座に改造された機体や、
T-28のような前輪式に改造してしまったのが登場、
ほとんど別の機体やんか、という状況になってゆくのでした。
このため、一目でこれはYak-18、と見分けるのは意外に困難です。
テンペストのMk.IIとMk.Vなみに、別の機体じゃん、という世界が待ってます(笑)。
さらにここに、毎度おなじみ中国の無断コピー(笑)機が乱入してくるため、
相当膨大な数が造られてると思われますが、詳細は不明。
ちなみに中国のコピーはCJ-6Aの形式名で、
一時、大量にアメリカに渡っており、今でも現役の機体が多いようです。
中国でのコピー開始は、朝鮮戦争後らしいので、
写真の展示機はソ連製と考えていいでしょう。
で、朝鮮戦争中は北朝鮮側で連絡、偵察、などに使われた、という話。
しかし完全に制空権を奪われた戦域で、こんな機体で飛ぶのは
ほとんど自殺行為だったのでは…と思って調べてみたんですが、
意外にもアメリカ海軍が2機の撃墜を認定してるだけで、
空軍側の撃墜記録はゼロでした。
我々の科学を超絶した不思議ミラクルパワーエンジンでも積んでるのかな。
ただし、空軍の場合、機種不明のプロペラ機が10機近くあるので、
その中に含まれてる可能性は高いです。
さらについでながら、これで夜間攻撃をやった、という話があるんですが、
機銃はないし、爆弾搭載も全くできないこの機体で
それはちょっとどうかなあ、という気がします。
正面から見ると、初期型の変なエンジンカウルの形状がよくわかります。
星型エンジンのシリンダーに合わせて絞りこんでるんですが、
これにどんな意味や効果があるのか、さっぱりわかりません。
A型以後では普通の円形カウル(NACAカウルのように見えるがわからない)に
戻されてしまってるので、やっぱり失敗だったんじゃないかと。
コクピット内部。
極めてシンプルな構造です。
操縦桿の上の赤いボタンが気になります…。
ちなみに主翼はこんな感じ。
途中から折れ曲がってる部分の先が羽布貼りです。
エルロン(補助翼)がやや小さい印象があるんですが、
アクロバット飛行にも使われたって事ですから、これで十分なんでしょう。
ちなみにフラップは正面写真を見てもらうとわかりますが
胴体下を含めた金属構造部の下面がガバっと開くタイプです。
胴体下の空気の流れを止めて意味があるのか、という気もしますが、
これで飛んでいたんだから、それなりに有効なのでしょう。
これもおなじみのMIg-15。
だたし展示解説はMig15戦闘機としてありましたが、
この機体はちょっと珍しい複座型の練習型なのでUTI
Mig-15でしょう。
この垂直尾翼のど真ん中に水平尾翼がある、というのがMig-15&17の
特長なんですが、何度見ても理解に苦しむ部分です(笑)。
とりあえず優れた設計でなかったのは確かで、
Mig19からは普通に胴体横に移動してますね。
Mig-15シリーズの謎、コクピット右横に盛大に飛び出している棒。
戦後のジェット戦闘機なのにアンテナ線が機外に張られている、
というのもミグ15のステキな秘密の一つなんですが(笑)、
それに使われていた、この棒は意外に謎の部分だったりします。
当初のMig15はこの棒と、手前の小さな突起の2箇所から、
尾翼に向けて2本のアンテナ線を張っていました。
ところが発展型のMig-15
Bisになったあたりから、この機体のように
アンテナ線は1本になってしまい、この棒からは張られてません。
なのに、取り外されてないままとなってます。
波長の短いVHSのアンテナはご覧のように機体の背中部分についてますから、
後期生産型におけるこの棒は何のためのものか全く謎なのです。
…設計ラインの変更が面倒だから、そのままにしちゃっただけ?
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