■意外に興味深かった



さて、その先の回廊部の展示、軽く考えていたのですが、これが凄かった。
ご覧のような、あらゆるサイズの銃弾コレクションです。

ある意味、館内展示では一番興味深かったのがこれかもしれません。
スミソニアンの航空宇宙本館やタイの空軍博物館にも似たような展示がありますが、
こっちの方がはるかに種類も量も充実してました。
初めて見た、というのも多く、いやはや、ええもん見せてもらいました。



まずは機関銃の銃弾から。
奥が5.56mm弾、手前が7.76mm弾で、両方とも韓国国産らしいです。
口径が2mmちょっと違うだけで
これだけ弾のサイズも変わる、というのがよくわかります。

基本的にでかい方が破壊力はありますが、詰め込める数も減るし、持ち運びも大変で、
その結果、現状は5.56mmが主流となっているようです。

これらは金属製のリンクで繋がれてるんですが、手前の7.76mm弾をよく見ると、
先端部が赤く塗ってある弾が混じってるのがわかるでしょうか。
これが曳光弾(Tracer)で、光りながら飛んで行き、
自分が撃った弾がどこ向かったかの確認ができます。
展示のベルトはどこの陸軍の機銃でも見られる
4ball 1tracerと呼ばれる装填のやり方で、
通常弾が4発続くと5発目に必ず曳光弾が入っています。

上の5.56mmも同じなんですが、こちらはちょっと小さいので確認しづらいですね。



となりには、戦争でもやる気かってな大型弾が並びます。

手前の2本のベルトは両者とも12.7mm(0.50cal)弾ですが、
手前が通常の弾頭なのに対し、奥は対装甲用の徹甲弾(Armor-piercing /AP)弾です。
まあ、見た目ではよくわかりませんけども(笑)。
通常弾では黒い弾頭、奥の徹甲弾では赤い弾頭が例の曳光弾になってます。
これも4発の通常弾、1発の曳光弾で1セットです。

余談ながら、航空機の機銃に積まれていた曳光弾が
たまたま敵機の燃料タンクに当たると火災を引き起こして致命傷になった、
という話もありますから、曳光弾もバカにしたもんじゃないようです。

その奥、3列目の大きな弾は20mmヴァルカン砲のもの。
HEI(High Explosive Incendiary)弾と呼ばれる高性能炸薬を
搭載した榴弾で、一種の焼夷弾としての効果もあるみたいです。
見た限りでは、さらに弾頭の先端にメタルジャケット(金属被帽)
がついてますから、ある程度の装甲貫通性を持っている対空弾でしょうかね。

この中では青い弾頭の弾が曳光弾で、7ball 1tracer、
7発の通常弾に1発の曳光弾という組み合わせになっています。
ちょっと珍しい組み合わせですが、私が知らないだけで、
ヴァルカン砲ではこれが普通なのかもしれません。
撃ちだす数もすさまじいですから、この位で十分なんでしょうか。

で、その上に3発だけ、これは別価格です、という感じで展示されてるのは
同じヴァルカン砲の弾でも
MPT-SD(Multipurpose Tracer Self Destruct)弾というものだとか。
よく知らないのですが、通常の弾頭ながら曳光弾の機能も持っていて、
しかも一定距離を飛んだ後、自爆してしまう弾らしいです。
基本的に対空用みたいなんですが、詳しくはわかりませぬ。

最後、一番上の緑色のは30mm機関砲の弾でこれもHEI弾。
エリコン30mm機関砲のものだそうな。
ここまで来ると、銃弾というよりは砲弾という大きさですね。

で、これはパっと見だと全弾同じ種類に見えますが、
エリコン30mmも基本的には4ball 1tracerで運用されるはずで、
5発に1発は曳光弾も混じってると思われます。




ここら辺りは迫撃砲の弾。

一番手前から60mm、81mm、107mm(4.2インチ)×2発となってます。
手前の地味な色の3発は通常の榴弾(HE)、奥の白い冬毛の107mmは
ILLUMINATIONとなってますから、照明弾でしょうかね。

ちなみに何の説明もなしに弾の後部に巻きついてるのは
射程距離調整用のオモリだったはず。



こっちは曲射砲の砲弾たち。
手前が155mm曲射砲の榴弾(HE)で、これは弾頭部分のみです。
このクラスになると戦艦の主砲のように推進用の火薬(装薬)は
飛距離調整のため、目標に応じて必要な分だけ薬室に入れて発射します。
薬きょうに入った状態でセットになってないのです。

砲弾の後部に光る銅製のバンドは
砲身内部にある旋状溝(ライフリング)に食い込んで砲弾に回転を与え、
直進性を安定させるものですが、砲口内部の火薬ガスの爆発圧力を、
砲弾の先に逃さないようにする働きもあります。

その奥は榴弾のカットモデルで、ご覧のように中にあるのは炸薬のみ、
推進用の火薬は別だ、というのがわかります。

その次、手前から3番目のちょっと短めなのは
同じく155mm砲の砲弾ですがHE-RAP弾だそうな。
RAPというのはRocket Assisted Projectileの略で、直訳してしまうと
ロケット補助飛翔体、という感じでしょうか。

単純に火薬の爆発で撃ち出されるだけではなく、砲弾のケツに
ロケットモーターをつけてさらに加速しちゃえ、というデラックスな砲弾です。
これによって射程距離がドカンと伸びるようですが、
推進装置としてだけでなく、飛翔中の砲弾の後部にできる気流の渦(低圧部)に
ロケットの推進ガスを送り込む事で、誘導抵抗の削減もしてるらしく、
かなりの飛翔距離を誇るとされます。
ただし、詳しくは知りませぬ…。

ついでに、よく見ると、この砲弾は後部が少し絞り込まれるデザインになっており、
少しでもシアーズ・ハック体に近づけて、音速突破時の造波抵抗を
抑えようとしてる感じです。

さらについでに、それならより高い軌道の放物線で弾を撃ち出せますから、
普通より高高度から落下し、着弾時の突入速度も上昇して破壊力もあがるはず。

で、最後、一番奥の小さい砲弾は普通に155mmの榴弾だそうな。
小さいのは、より遠くに飛ばすためか、あるいは威力調整のためなのか
ちょっとよくわかりませぬ。


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