■朝鮮戦争前後
さて、どんどん行きますよ。
F-86Dセイバードッグ。
例の対核爆撃機バカ一代迎撃戦闘機です。
韓国空軍も採用してたんですね。
が、当時の韓国にレーダーネットワークと地上からの支援システムが
あったとは思えず、どうやって運用してたんでしょう、これ。
あるいは米軍の警戒機や地上レーダーサイトと連動か。
そもそもは北朝鮮にソ連の最新ジェット爆撃機、IL-28が配備されたのに対抗し
1960年にアメリカから供与されたものらしいです。
ちなみに、その1950年代末に配備された北朝鮮のIl-28、
少なくとも2010年辺りまでは現役で、2012年現在も、
まだ配備されてる可能性があるそうな…
これがこの機体の唯一の武装、マイティマウスロケット弾発射装置。
恐らくこの装置をよく見せるためだと思うのですが、
この機体、本来なら下に降りてる前脚の後部カバーが閉じられてしまってます。
…と書いてからよく見ると、後輪の内側カバーも閉じてしまってますから、
何か別の理由があったのかしらむ。
このランチャーを空中でドンガバチョと展開する結果、
機体前半下部の空気抵抗が増えて、多少、頭下げの力が働きますから、
そこら辺の機体コントロールも含めて、F-86Dでは火器管制装置(FCS)によって
照準、発射までは全自動化されていました。
ついでながら、このランチャーの底は機体の外板を兼ねてるんですが、
これが降りた状態になった時は、機体内に収納されていた、
もう一枚の外板がその穴をふさいで、
余計な気流の乱れなどが生じないようになってます。
ついでにランチャー部が機体から少し離れるのは安全性の確保と
機体表面を流れる乱流を避けて飛ばすためなんですが、
それでもロケット弾はまっすぐ飛ばす、結局、直進させるのはあきらめて、
機体を上に傾け放物線状に打ち上げる事で
目標の上からロケット弾が襲い掛かるようにしてたようです。
これも各地でおなじみT-33のA。
ジェット練習機の西側世界標準機ですが、
韓国では朝鮮戦争後の1955年から使用してたそうな。
アジアの資本主義国家標準戦闘機、ノースロップのF-5A フリーダムファイター。
韓国空軍は1965年から運用していた、との事。
アメリカのノースロップ社が自社開発した戦闘機なんですが、
練習機型のT-38は大量採用されたものの、こっちの戦闘機型は
アメリカ空軍は採用を見送ってしまいます。
どうしよう、と思ってたら、その価格の安さと、単純で運用しやすい構造、
そして超音速が出せる戦闘機なのに、舗装してない滑走路からの運用も可能、
という低コスト&タフネスぶりが評価されて、
アメリカが支援していたアジアなどの発展途上国に大量にばら撒かれる戦闘機に選ばれます。
日本では見かけないし、アメリカ軍も使ってなかったし、で印象が薄いものの、
F-5の生産数は実に2200機を越えており、
アメリカ製の超音速戦闘機としては、記録的な大ヒット作だったりします。
超音速戦闘機としては恐らく、F-4ファントムII、F-16に次ぐ、
歴代3位の生産数じゃないでしょうか。
ついでに練習機型のT-33も1000機を越えてますから、
両者をあわせると、全生産数は軽く3000機を越えています。
この機体はジェット機の設計の歴史を考えた場合、
教科書に採用するには最適であろう、というくらいに
いろんな要素が詰め込まれていて、見ていて飽きません。
まずはエリアルール1号(仮称)。
機体を正面から見た状態で、前から後ろに向け各部の断面積の増減が、
なめらかであると、音速突破後の増波抵抗が減る、というあれです。
(詳しくはF-22への道のこちらで)
F-5の場合、まさに見ての通り、という感じで、
主翼によってドカンと断面積が増える部分の
胴体を絞り込んで断面積の総計を調整してるほか、
主翼についている増加燃料タンクまで中心部を絞り込んでます。
特にこのタンクは、シアーズ・ハック体に近いデザインで、
まさに教科書に載せたいようなデザインとなってますね。
ただし、当ホームページをご覧になってる皆さんならご存知のように、
これはジャストマッハ1の時に有効なルールで、
マッハ1.4くらいは出せるよ、という事になっていたF-5なら、
本来はエリアルール2号(仮)を適用して設計する必要があります(笑)。
そしてもう一つが、世界初の元祖LERX構造。
(詳しくはF-22への道のこちらで)
主翼付け根から、ほんのちょっと前に出っ張った前縁部分がそれなんですが、
本来は油圧装置だかを収容するために設けたこの部分が、
予想もしなかった戦闘機の新時代を築くことになるわけです。
A型では偶然の産物だったのですが、後のE型ではその効果増大を狙って、
この部分の面積を拡大させています。
ここからF-16やF/A-18、そしてSu-27,Mig-29の
あの主翼前縁部のデザインが始まった事になるわけです。
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