■その生態
お次はデグーの基本的なデータを確認して行きましょう。
まずはデグーの故郷の気候から、飼育時における適正環境を考えましょう。
ちなみに野生のデグーは地面に穴を掘って巣にしますが、どの程度の広さなのか、
どのくらいの数が同居してるのか、穴を掘る以外の巣もあるのか、
といった基本的な研究報告を見つけることができず、こんな基本的な事ですら結構、謎のままです。
同じアメリカ大陸でも北米のプレイリードッグとかはより研究されていて、
しかもさまざまな研究論文を一般人でも読めるのですけどね。
デグーは南米チリの乾燥地帯に生息するげっ歯目で、
首都サンティアゴを含む南緯35度から25度の標高1200m以下の土地に住む、とされます。
ただし研究によっては南北幅はもう少し狭く、南緯34度から27度くらいまで、とするものもあり。
基本は平野部から山の麓のような一帯に住み、高度が高い所にはあまり居ないようです。
なので海の側まで山地が迫るチリでは、その生息地の東西幅は意外に狭く、せいぜい40〜50qにすぎません。
ただし南北幅では緯度で7〜10度ありますので、で770q〜1100qといった
それなりに広い範囲に生息することになります。
その地域では比較的よく見られるらしいげっ歯目らしいです。
繁殖能力も、適応能力も高いですからね。
このためアメリカのカリフォルニア州などでは外来害獣に指定されており、
ペットとしての飼育はできなかったりします。
ちなみに北緯35度は日本の関東地方だと館山市、南房総市といった千葉県最南端部周辺であり、
関西地区だと琵琶湖南岸の大津市、京都市付近にあたります。
北緯25度は日本本土をはるかに南下して硫黄島、宮古島の北あたり、
アメリカのフロリダ半島南端をかすめる辺りですから、かなり南下した地域です。
よってその生息地域は、ほぼ温帯であり、その北限はほぼ熱帯手前まで
(南半球は北の方が暑い)と考えていいでしょう。
少なくとも、寒い地域ではありません
そして太平洋岸のチリのこの一帯はほぼ西岸海洋性気候(Csb)に属しますから、
最少雨月降水量が30mm未満、年間降水量でも200〜600ml前後しかない地域であり、
かなり乾燥した地帯となります。
ちなみに東京の年間平均年鑑降水量は1350〜1800mm前後ですから、
だいたい1/3〜1/7位と思っておけば大筋で間違いないでしょう
。
ただし、寒流のペルー海流(フンボルト海流)がすぐ沖合を流れていて、
ここから大量の霧が発生して沿岸部に押し寄せるので、砂漠のような乾燥はしてません。
この辺りを地図と併せて確認すると以下のようになります。
(南半球なので日本とは南北、季節の逆転があるのに注意)
サンティアゴ(南緯33.4度) ●夏(1月) 平均最高気温 29.7度 平均最低気温 13.0度 ●冬(7月) 平均最高気温 14.9度 平均最低気温 3.9度 アントファガスタ(南緯23.5度 25度を超えてるが参考値として) ●夏(1月) 平均最高気温 25.4度 平均最低気温 17.5度 ●冬(7月) 平均最高気温 11.4度 平均最低気温 11.8度 チリ沖を流れる寒流、ペルー海流(フンボルト海流)の影響で赤道に近付く北部でも意外に温度が低いのに注意してください。 東京(北緯35.4度) ●夏(7月) 平均最高気温 29.2度 平均最低気温 21.8度 ●冬(1月) 平均最高気温 9.6度 平均最低気温 0.9度 東京は夏の暑さではデグーの生息域に近い温度となっていますが、冬の寒さはやや厳しくなってます。ちなみにチリは乾燥地帯なので寒暖差が大きく最高、最低温度はかなり大きな数字になります。例えばサンティアゴでは夏の最高気温は37度近くまで上がりますし、冬の最低気温は-7度近くにまでなり、これは東京の最大、最低の値を超えています。平均値にばかり気を取られるとこの辺りを見落としますから注意。寒さ、暑さ共にかなり厳しい地区に生きてるげっ歯目なのです。 夏と冬を東京でデグーと過ごした経験だと夏は30度を超えたあたりからバテて来ます。30度を超えて人間が熱中症になるような気温になったら冷房は必須となるでしょう。もちろん、夏の日中に日の当たる場所に置く、窓を閉め切った部屋に置いて外出する、などは論外ですから注意してください。また、乾燥地帯では夕方には20度以下にまで気温が下がる事が多いので、熱帯夜などの場合は冷房を入れた方がいいと思われます。 さらに後で見るようにデグーは気温が32度を超えると急激に体内の水分を蒸発で失うため、この気温を超えたら冷房は必須です。野生のデグーなどは日中24度を超えた段階で巣から出て来なくなるようです(直射日光を避ける)。 デグーの場合、冬の寒さにはより敏感で、15度を切った辺りから、集団で固まって暖を取り始めます。ウチの集合住宅は微妙な全館暖房のため冬季でも室温が10度以下に落ちることがほぼ無いのでそれ以下の状況は不明ですが、10度を切ると単独飼育なら(集まって暖を取れないなら)何らかのペット用暖房設備が必要、それ以上寒くなるなら、室内全体の暖房は必須になって来るはずです。基本的に寒い地方での飼育は暖房が無いと困難と考えるべきだと思われます。 ただし夜間は綿や厚手のタオルなどで造った巣箱に入ってヌクヌクに寝れればほぼ問題なく、むしろ昼間の寒さが問題になって来るでしょう。 とりあえず夏場に32度を超えたら極めて危険なので、余裕をもって30度前後以上の室温にならないよう一定の冷房は必須、冬の寒さにも弱いので、巣箱に籠る夜間以外は、12度前後の気温の維持が理想となります。この辺りは、他のペットでも同じような感じだとは思いますが、ある程度の気温管理は必要な動物だと思っておいてください。 |
月 |
三カ月前の雨量 |
生息密度(匹/ha) |
2月 |
10o以下 |
10匹以下 |
6月 |
10o以下 |
10匹以下 |
10月 |
35o前後 |
約40匹 |
■La Dehesa
月 |
三カ月前の雨量 |
生息密度(匹/ha) |
2月 |
12.5o |
約10匹 |
6月 |
10o以下 |
約25匹 |
10月 |
75o前後 |
約62匹 |
やや雨量の多いLa
Dehesa(ラ・デエサ)でより顕著にその傾向が出てますが、
雨季の3カ月後、爆発的に生息数が増えています。
これは季節によって発情するのではなく、雨が降って食べ物の草が増えたので
発情期が来て妊娠する、と考えるべきでしょう。
実際、調査が続けられた1976年のLa
Dehesa(ラ・デエサ)は雨季の到来がやや異常で、
5月から10月近くまでこれが続いたのですが、デグーの生息密度は
それにほぼ呼応する動きを見せています(生息数増加の期間が延びてる)。
このため、通常、食糧不足に見舞われない、ペットで飼われてるデグーは、
常に発情してると考えるべきのようで、実際、一年中、赤ちゃんは生まれます。
ちなみにウチの赤ちゃん4匹はは1月27日生まれです。
これだけ増えたのが乾季の夏にはそれぞれ10匹にまで激減する、というのは衝撃的ですが、
どうも暑い夏は巣からなかなか出て来ないので、そもそも生息数調査の罠にデグーが掛からない、
かつ生まれたばかりの子供は簡単に罠にかかるので
出産ラッシュ直後は捕獲数が増えてしまう、という面もあったようです。
この点に関しては生存率の調査もやっており、出産ラッシュ直後の11月に確認できた新生児の内、
2か月後にも生存を確認できたのはFray
Jorge (フライフホルヘ)においては34.1%、
La Dehesa(ラ・デエサ)では59.7%だった、そうです。
Fray Jorge
(フライフホルヘ)は約1/3しか生き残れなかったのに対し、
La
Dehesa(ラ・デエサ) は3/5と半数以上が生き残ったのは、おそらく雨量による
エサの有無が理由かと思われ、天敵の襲撃以外にも、
生息地域によっては、そもそも生きて行くのが厳しい、というのが見て取れます。
野生のデグー、苦労してるのです。
ちなみに調査用に捕獲された野生のデグーの体重の報告もありました。
それによると、5匹の識別票を付けたデグーを定期的に捕獲して
体重を計り、平均値を取った結果、以下のようになったとの事です。
(ただし何回かは5匹全員の再捕獲に失敗し(笑)、4匹の平均値の月もあり)
1月 |
3月 |
5月 |
9-11月 |
148g |
133.9g |
118.6g |
157.9g |