■その食事
お次はデグーの食事について見て行きます。
ちなみにげっ歯目であり、手を使って食べるデグーの食事風景は地獄の仏のように愛らしく、
エオマイアを1ラブリー(LVY)とすると凡そ123万8000LVYくらいにはなり、
これは銀河系中心部のブラックホールが持つ
ラブリー仕事(=ラブリーエネルギー)に匹敵するものとなります。
余談ですが、最近の研究だとげっ歯目と霊長類の先祖は共通と考えられてるそうで、
なるほど、この親近感はそのためか、と思ったりしております。
ついでにここからは、
チリ自然史誌(Revista
chilena de historia Natural)で1994年に発表された論文、
Fiber and digestion in the
herbivorous rodent Octodon degus
by CRISTIAN W. CACERES and FRANCISCO
BOZINOVIC
も参照して行きます。
まず、デグーの食性の大前提として、以下の二つは必ず覚えて置いて下さい。
1. デグーに糖質は厳禁
2. 乾燥地帯の生き物だが水はよく飲む
■デグー本人は糖質が大好きで隙あらば狙って来ますから要注意。
1. 過酷な環境で生き抜くために栄養分の低い食事から効率よくエネルギーを回収できる体となっており、このため高い糖分を摂取するとキチンと吸収しきれず血糖値がたたき上げられて速攻で糖尿病となってしまいます。デグーが飼育されるようになったのは、1970年代の欧米で糖尿病の研究に最適と判断されたから、といった歴史も有りますし。ついでに、糖尿病から直結する目の病気、白内障もすぐに発症します。人間にとっても糖分は一定量を超えると猛毒ですが、デグーにはわずかでも毒なのです。
チリの乾燥地帯にはブドウ畑も多く、日干レーズンを造ってる場所があります。その周辺に住んで居たデグーはこれを盗み食いしてるため一帯で捕獲されたデグーはほぼ全てが目が真っ白な白内障だった、という話を見たことがあります。
そして血糖値の問題ですから甘い砂糖、フルーツだけでなく、多糖類のでんぷん質も厳禁です。すなわちイネ科の穀物、米、小麦、トウモロコシなどを材料とするものもダメなのです。イモ類も避けるべきでしょう。米粒、ビスケット、パン、そして菓子類などを与えるのは原則禁止です。
ただし血糖値を上げずにカロリーが取れるかぼちゃの種、ヒマワリの種、ピーナッツ、クルミ、アーモンドなどは比較的安全で、オヤツに上げるには適しています。ただし後で見る食物繊維の問題などもあり、あくまでオヤツです。これらを手渡しで与えてると、飼い主のありがたみを感じてくれます(笑)。
■水はよく飲みます。お母さん+子供4匹だとあっという間に無くなります。2. 乾燥地帯の生き物ですが、水は必要ですし、よく飲みます。先にも述べたように気温が32度を超えると急速に水分を失う、という特性もあり特に夏場は水を切らさない注意が要ります。(この辺りは湿度の関係もあると思うが、いずれにせよ水を切らさないは鉄則である)。ちなみにごく短期間なら尿の濃度(オスモル濃度)を7倍近く上げて水分の排泄を最低限にする能力をデグーは持ってるらしいですが相当な負担が体にかかるはずで、やらせない方がいいでしょう。水は必ず十分に与える必要があります。
この点、上記の論文ではデグーはむしろ乾燥地帯に最適化しておらず多様な環境に適応化できる体のためそこで生きて来れたのではないか、としています。乾燥地帯の生き物、という先入観はあまり持たない方がいいようです。
ちなみにデグーの食事後の血糖値の研究をした日本人による論文
「デグーの高嗜好性食物の検討と食後血糖値への影響 /前川友香里・鈴木
馨」
によればヒマワリの種の血糖値への影響はは極めて小さく
(絶食後64.2mg/dl、食事後68.72mg/dl)、
糖質(NFE)が高いフルーツ(乾燥パイン)は最も影響が大きいのですが
(絶食後64.2mg/dl、食事後91.8mg/dl)、
どちらも食後2〜3時間ほどでほぼ通常値に回復しています。
なので一回だけ、といった“特別なオヤツ”として与えるなら糖質もそれほど害はないのですが、
デグーの場合、おいしいものを食べると、以後、他の食事をしばらく拒否する、
といった厄介な学習能力があるので(笑)、やはりあまり与えない方が良いかと思われます。
やるなら週一回のスペシャルオヤツみたいな感じにするべきでしょう。
ついでながら同論文によると、デグーは空腹時に脂質の高いものか
糖質の高いものを好む、という特性があり、さらに血糖値が上がると
食欲が低下するらしく、どうにも人間臭い生き物となっています。
さて、ではデグーを健康に飼育するための食事として、まず必要なカロリーを考えます。
これは以前の記事でも書きましたが、RER(Resting
Energy
Requirement)、
安静時必要エネルギーを計算し、そこに一定の係数を掛けて求めます。
PERを求める式は以下の通り。
√(√(体重kg×体重kg×体重kg))×70=RER
体重を3回掛け算(3乗)してそれの平方根を2回求めてるのは、体重の0.75乗(3/4乗)を求めてるから。
よって表計算ソフトなどが使えるなら、最小から体重の0.75乗を求めた方が楽です。
これで求めた数字が、寝てじっとしてるだけで
1日で消費するエネルギー(カロリー)の数字です。
力学的には単位がエネルギー量にならないので胡散臭いですが(笑)、
まあ、目安の数字を求める式だと思ってください。
とりあえずデグーの平均的な体重、200gだと0.2kgですから、計算すると約21kcalとなります。
あとは日常活動における消費分を求めるための係数を掛けねばなりません。
大型の犬猫だとだいたい1.2〜1.5倍なんですが、一般的に小型生物の方が燃費は悪いので、
だいたい2〜2.5倍してやります。
ウチの先住デグーなどだと一日中、ヒマがあれば回し車を回してますから、2.5倍でいいようです。
なので
21×2.5=52.5Kcal
だいたい50Kcal前後のエネルギーが必要だ、という事が判ります。
とりあえずそのエサの量でしばらく様子を見て、痩せなければ十分です。
ちなみにウチに来た成獣デグー2匹は、この計算のエサを与えて1週間後あたりから
急に体重が増え、3週間近くかかって10〜15%の体重増が起こり、以後安定する、
という現象をどちらも見せました。
この辺り、どうもデグーはエサの選り好みが激しく、エサを残しがちなため、
以前の飼い主さんは十分エサを与えたつもりでも、実は足りてなったのだと思われます。
厳しい食事環境に生きる連中のクセに、意外に食べ物は選り好みするのです。
なので残してるのがあるからまだ大丈夫、は禁物だったりします。
この辺りはまた後で見ましょう。
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