■豪華1大オマケ ロール性能比べ…の前に

で、このロール性能データ、なぜオマケ扱いか、というと、日本機はゼロ戦以外データがなかったから(笑)。
米軍機でもP38は無しで、ゼロ戦はサブタイプすらわからない状態。
で、その米軍機のラインナップからしておそらく21型じゃないかなあ…と思うのですが、
52型の可能性もゼロ(ダジャレ)ではありません。

ちなみにこのレポートのみ元ネタは軍のテストではなく、宇宙進出前のNASAこと
NACA( National Advisory Committee for Aeronautics)による有名なレポート、
「50ポンドの力を操縦桿に加え続けた時、各指示大気速度におけるロール速度(rolling velocity) 高度1万フィートにて」
こと、いわゆる868レポートから持ってきてます。
まあ、ゼロ戦が見事な完敗、というかちょっと凄い数字を叩き出してしまったため、かつて日本の書籍で紹介された時は、
そのデータ部分だけ削除してあった、という話まである「伝説の」データです(笑)。
が、今回は掲載しませんが、実は大英帝国の「タイフーン」閣下も
ほぼゼロ戦と同じレベルの低性能を誇っております。
もっとも、この2機がブッチギリで低性能なんですが(泣)。まあ、タイフーンも確実に駄作機ですな(笑)。
その一方、タイフーンの仮想敵とも言えるFw190は、時速402kmの時に秒間160度のロール速度という
1940年代の飛行物体とは思えない数値を叩き出しております。
まあ、これも今回は掲載しませんが。

さて。
本題に入る前に、そもそもロール性能って何よ、ってな話を少し。
日本でロール性能というと
「女性の金髪縦ロール髪型は、それが長いほど金持ちで高飛車でテニスが強いが、洗髪だけで1時間、セットに2時間」
という、いわゆる「お蝶夫人のジレンマ」が有名ですが、今回は関係がありませんのよ、岡さん。

で、航空機でロールというのは、飛行中、エルロン(補助翼)を使って左右の主翼で発生する揚力を変え、
そのアンバランスによって機体を傾けることです。
進行方向を軸に、その場でグルンと回転させる機動、ですね。
戦闘機のような派手な機動を行う機体においては、すべての機動の起点となる動きです。
これが遅いと、当然、それに続く、すべての動作がトロいことになります。




左右の主翼で発生する揚力を変えて、そのアンバランスを利用して機体をグルッと回す、それがロール機動。
上のヘナチョコ絵では、右翼の動翼であるエルロン(補助翼)が上がって揚力を弱め、左翼のエルロンは逆に下がって揚力を強めている。
この結果、右側の主翼が落ちる一方、左側の主翼は持ち上がり、回転運動に入ることになる。
この機動から、方向を変えて曲がる場合は、尾翼の方向舵と昇降舵も同時に操作する。

ロールは、本来、胴体周りの横揺れを意味し、機体を傾けるのはバンク、ということも多い。
が、戦闘機の場合、この機動で背面飛行までいくのが珍しくないので、本稿ではロールという言い方を上記の意味で使用する。

ロール性能が注目される理由は、多くの機動の起点になるからです。
まずは、航空機はどうやって曲がるの? というのがポイントとなります。
 
飛行機には、一応、垂直尾翼に舵、方向舵が付いてますから、船のように曲がるの?と問われれば、
それもありですが、非常に緩慢な動きになる上、効率よく目指す方向には行けません。
現実的にはほぼ使い物にならないでしょう。
なので、バイクや自転車のように、ハンドル(舵)を曲げて、さらに機体を傾けることによって、曲がります。 
バイクや自転車では乗ってる人間が体重移動して車体を傾けますが、
飛行機でそれはムリなので、主翼後縁部にあるエルロン(補助翼)を使って
主翼に発生する揚力の左右バランスをわざと崩し、機体を傾けるわけです。
ここら辺、映画「紅の豚」で工場で修理中のサボイアのエルロンを
手で上下させる、という教科書に載せたいようなわかりやすい描写があるので、
DVDとか持ってる人は、確認してみてください。

ちなみにエルロンは操縦桿で操作し、尾翼の方向舵(ラダー)はペダルを踏んで動かします。
なので上の絵は、操縦桿を右に倒した状態となってます。




F4U1Dの主翼後縁部。
左の端っこ、星マークの後ろ部分につけられた板状のものがエルロン、補助翼だ。
その右側で2枚、下方向下げられてるのはフラップ。
開いてる蓋は機銃の糾弾用、否、給弾用ハッチだ。
このように飛行機の翼にはいろんなギミック満載なのだが、今回は詳しくは触れない。
だって!めんどくさいんだもの!
で、このエルロンは、当然、反対側の翼にもついていて、向こうが上がるとこっちが下がる、
といったような動きをし、ステキに主翼に発生する揚力を変え、これで機体の姿勢を調整する。
なんかさらに小さい板(タブ)とかついてるけど、まあ、それもまた今度。

ちなみに、コルセアの補助翼(エルロン)は木製のフレームにベニアを貼り付けたものです。
やけにきれいな仕上げだと思った。

が、派手な機動が命ともいえる戦闘機の場合、曲がるだけでなく、多くの機動がこのロールを起点に行われます。
直線飛行から単純に上昇、下降をする以外のほとんどの運動にからんでくるんじゃないでしょうか。



「賢く下降する子は使います、スプリットS」の標語で知られる機動、スプリットS。
あらゆる派手派手な機動の基本、野球で言えばキャッチボール、サッカーで言えばリフティングみたいな機動。
目的はすばやく下降し、かつ、進行方向を反転させること。
水平飛行中の機体を「超絶必殺スプリットエェェェェェス!」と叫びながら
ロール機動(ハーフロール)で背面飛行に入れ、一気に下降、反転するもの。
この状態で下向きに半周すると、あら不思議!機体はちゃんと上向きになって、最初とは逆向きに飛んでるじゃ有馬温泉!
という便利な機動だ。
下降に入る前にロール機動(ハーフロール)で反転するのがポイントなので、
ロール速度の遅い機体は、この機動は苦手となる。
(一部に叫ばないパイロットもいる、という情報があるが、おそらく例外的な存在だろう)




スプリットSの逆、上方向に宙返りしながら、その頂点で、
「爆砕必勝!インメルマンターン!」と叫びながらロール機動(ハーフロール)を打つことで、
水平飛行に復帰するインメルマンターン。
通常の旋回よりすばやく反転できる、等のメリットがあるらしい。
これも最後にロールを打って水平飛行に戻るので、ロール性能が問われる機動となる。
(一部に叫ばないパイロットもいる、という情報があるが、おそらく例外的な存在だろう)

まあ、いずれにせよ、敵に背後を取られて、いざ回避!って時にスパッ!と動くのと、
どっこいしょ、とゆっくり動くのではどちらが有利かは、明白でしょう。
素早い機動性の有無、それがロール性能の持つ意味です。
どれだけすばやく「安定した水平飛行」から「高い機動性を持った動き」に移れるか、という事で、
見方を変えれば、「水平飛行の安定性の崩れやすさ」と言えなくもなく、
ある意味、戦闘機にとってのみ、意味のある指標とも言えます。

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