まずは横から。
元はMk.VII(7)なので、本来は同じ与圧コクピットなんですが、
この機体はPr.Mk.XI(11)に改造されてしまったため、通常のコクピットになってます。
このため、機首右側、排気管の下にあった
コクピット与圧用空気取り入れ口が取り外されてしまってます。
それでも、それ以外は後期マーリン搭載型スピットの特徴をよく残しており、
ある程度参考にはなるでしょう。
機首下の空気取り入れ口がMk.VII(7)と異なり、
Mk.IX(9)後期生産型と同じ防塵フィルター付きのものにされてます。
これはオリジナルのPr.Mk.X(10)の段階ですでに行われていたもので、
レストアによる付け加えではありませぬ。
尾翼もMk.IX(9)後期生産型のものに代えられてますが、これも同じく元からです。
ついでに先にも書いたように、機首下部が太くなってる(前にせり出してる)のは
長距離飛行に備えて中のオイルタンクが大型化されてるため。
この部分はオイルタンクとそのカバーを交換すれば従来の細身のものに変換可能、
という話もあるんですが、後期マーリン搭載スピットの偵察型である
Pr.Mk.X(10)&XI(11)に関しては、ほぼ常にこの拡張タイプで運用されたようです。
反対側から。
両側からキチンと全体のフォルムが見れる、という点でもありがたい展示ではありました。
コクピット横の搭乗用ドアが開いてる写真はおそらく初めての登場ですが、
先に書いたように、これはPr.Mk.XI(11)に改造するため、
レストア時に付け加えられてしまったもので、ほとんど史料価値はありませぬ。
元がMk.VII(7)ですから、尾輪は当然収容式。
実際のPr.Mk.XI(11)では、改造元の機体がMk.IX(9)か(固定式)
Mk.VIII(8)か(折りたたみ式)で異なる部分です。
この塗装は1944年ごろ、イギリスに居た第14写真偵察飛行隊(14th
Photographic
Squadron)の
MB950機を再現してるのですが、この時期になるとアメリカのラウンデルの左右に
おなじみの白ふちが追加されるようになってます。
ちなみにMB950本人はとっくにスクラップになってるのですが、
複数のカラー写真が残っている、という珍しい機体だったため、
このレストア機のモデルにされたんだと思われます。
正面から。
偵察用の主翼、D翼のため武装がありませぬ。
その代わり、主翼前縁部全体に燃料タンクを搭載、
従来の倍以上航続距離を伸ばしています。
このD翼がどの段階で開発されたのはっきりしないのですが、
とりあえずA型翼から改造されたもののようです。
Pr.Mk.X(10)&XI(11)に関しては全てこの翼になっているはず。
参考までに通常のMk.IX(9)では胴体内のメインタンクに85ガロン(英ガロン=約386.5リットル)、
後期生産型だとコクピット後ろの追加タンクに75ガロン(=約341リットル)が追加されてます。
(ただし機体のバランスを著しく悪化させるので、追加タンクの利用は極めて限られた)
対して偵察型の主翼燃料タンクは66×2=132ガロン(=約600リットル)となっており、
これだけで本体のメインタンクより多く入ったのです。
ただし偵察型ではコクピット後ろにはメインの偵察用カメラを積んでしまうため、
追加燃料タンクはありませんでした。
航続距離の短さが特徴のスピットファイアが、
偵察のために軽々ドイツ国内まで飛んで行けたのは、
この偵察型に積まれた主翼燃料タンクによるところが大きいわけです。
(さらに増加燃料タンクもぶら下げて行くが)
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