主翼全体を。
従来のB型翼にくらべ、凸部は少なめで滑らかな表面処理になってます。

翼端部により、片側50cm程度の延長をしてるため、
なんだか妙に翼端がビヨーんと引き伸ばされてる印象が。
この結果、本来なら翼端部に位置するはずのエルロン(補助翼)
が妙に内側に入ってしまってます。



その、ちょっと気になるエルロン部(補助翼)。
当然、既に金属製に切り替わってます。

この部分までの主翼は、先に書いたように、ほぼ従来のC翼なんですが、
なぜかエルロンだけが、約21.6cm(8.5インチ)ほど短くなってます。
このため、翼端部までの間に矢印で示した固定部が入ってるのです。

なんで、空気が薄くて、この手の装置が効きにくい高高度戦闘機で
わざわさエルロンを短くしたのかはよくわかりませぬ。
しかも、わざわざ不利な主翼内側に寄せてます。
(機体にかかる力は翼の揚力×機体までの距離だから遠い方が小さい力で動かせる)
まあ、何か理由があったのでしょうが、少し理解に苦しむ部分ではあります。

この点はMk.VII(7)の主翼を流用してるMk.VIII(8)でも同じです。



お次は尾翼部を。

水平尾翼後部、昇降舵(エレベータ)の形状が初期型スピットと明らかに違い、
翼端部の角型釣合昇降舵(horn balance elevator)がより大きく手前に食いこんでます。

この写真で見ると、昇降舵を下に向けると、前半の角型部が下から向かい風を受けることになり、
これによって舵を下げる操作を補助する力になる、というのが分かるかと。
これが角型釣合昇降舵の作動原理ですね。

ただし、この昇降舵(エレベータ)の形は、初期に生産途中のMk.V(5)から
Mk.IX(9)に切り替えられた機体などでは、旧型のものが、そのまま使われてたりするようです。
まあ、それらはごく一部でしょうから、マーリンスピットの
初期型、後期型を見分けるポイントの一つになるはずです。

矢印は機体横のアンテナ線で、これは後期型マーリンスピットに見られる
水平尾翼に張られたアンテナ線。
ただし途中から見えてる展示用照明の床上電線と混同しないように注意。
これは敵味方識別装置、IFFのアンテナです。
ちなみにIFFはIdentification friend or foe、友軍か敵かの識別アンテナの意味。

ついでに気づいてる方もいると思いますが、この機体、
アンテナ支柱から垂直尾翼までのアンテナ線がありません。
この機体、通常の無線用変圧器がないところからしても、
Mk.II(7)は何か特殊な無線を積んでいたのかもしれませぬ。



水平尾翼を下から。
後期型のエレベータ(昇降舵)の形状がよくわかるかと。
ちなみにどうもエレベータ(昇降舵)の外板も金属製になってるように見えますが、
触ることができなかったので断言はできず。

収納式になった尾輪の収納用のカバーとかも見ておいてください。
飛行中はここに畳まれる事になります。
これは量産されたマーリンスピットでは、Mk.VII(7)とMk.VIII(8)だけの特徴です。




ちなみに初期型マーリンスピットだと水平尾翼の昇降舵(エレベータ)面はこんな感じ。
翼端部、角型釣合昇降舵の切り込みがまるで違うのを見ておいてください。


NEXT