機体前部を真横から。
このピトー管、オリジナルでは無いのは確実ですが、
Mk.VII(7)の場合、この形状で正しいのかは、やはりどうもよく判りませぬ。
MK.V(5)を改造した試作型Mk.VII(7)の場合、間違いなく従来と同じ長い管のタイプなんですが、
その後の機体では、確かにこれに似た形状のものもあるように見えます。
やはり、これも謎ですね…。
さらについでに主翼の下がピカピカなのに注目。
レストアの時、光沢の強い塗料を塗ってしまったのか、と思ったんですが、
どうもそれだけではなく、Mk.VII(7)は全体的に非常に丁寧に、
そして表面抵抗を抑えるように造られてる、というのをこれから見てゆくことになります。
やや離れた斜め後ろから。
風防上のバックミラー、この機体では円形のものですね。
スピットのバックミラーは長方形と円形の二種類が存在するわけですが、
この使い分けもよくわかりませぬ。
こうして見るとMk.I やMk.V(5)に比べて、とても表面処理が綺麗なのが見て取れます。
継ぎ目をパテで埋めて、ワックス掛けもしてるんじゃないでしょうか。
ただし、このレストアの場合、ちょっとやり過ぎ、という気もありますが(笑)…
それでも当時の写真で見ても、k.VII(7)に丁寧な表面処理がされてたのが見て取れますから、
こういった処理で大筋で間違いないようです。
コクピット横にあった下にパカっと開く搭乗用ドア部が消えてるのも注目。
これは与圧コクピットの空気漏れを防ぐため、ドアが撤去されてるのです。
空気密度の低い高高度でも、ある程度地上に近い気圧を維持できるのが
与圧コクピットです(スピットの場合完全に地上と同じレベルにはできないが)。
大気密度が極めて薄くなる高度10000m辺りから、
酸素マスクだけでは人間が耐えるのが困難になってきます。
これを解決するのが与圧コクピットで、
その空気漏れを防ぎ気密性を高めるために、搭乗用のドアを無くしています。
ここら辺りはタイヤや風船のように、中に入れた空気をもれないようにギュッと閉じ込めてる、
と考えてもらっておけば、大筋で問題ありませぬ。
さらに一枚板なのか、継ぎ目をパテで埋めてるのか判らないのですが、
コクピット周辺はリベットどころか継ぎ目すらありませぬ。
徹底気的に空気漏れ対策をやってますね。
一瞬、木製機かと思いました…。
あれ、だとすると、搭乗用足場が機体に付いてないスピットファイアで、
下開きドアが無くなった後、どうやって乗り降りしてたんでしょ、これ。
…滑らないゴム底の靴とかでワッセワッセとよじ登ったのかなあ。
そこからややアップで。
初期型マーリンスピットでは頭の飛び出たリベットだらけだった胴体後部が
まるで部長の頭部のようなツルピカぶりになってるのに注目。
Mk.VII(7)も単なる高高度戦闘機でなく、ある程度の高速性も狙ってたのかも知れません。
主翼表面もツルピカで、例の車輪収納部の小さな出っ張りも消えてます。
ただしこういった翼面上の凸部が減ってるのはMk.VII(7)からではなく、
既にMk.V(5)から採用されていたC型翼の方の特徴です。
もう一つの注目は20mm機関砲の後ろにある凸部が細長くなって、銃身の真後ろに来てる点。
これもC型翼からの特徴で、ドラム弾倉(60発)をやめて箱型弾倉(120発)からのベルト給弾式にしたため。
(ただしMk.V(5)などの初期のC型翼ではもう少し横幅があった)
ドラム弾倉はなくなったものの、給弾用ドラム(ammunition
feed
drum)なる装置が
ヒスパノ20mm機関砲の上には付いており、
銃尾のこの部分が出っ張ってしまい、それをカバーしてるのが、あの膨らみです。
給弾用ドラムなる装置はよく知らんのですが、そもそもヒスパノ20mmはベルト給弾ができず、
弾倉をはずしても、その給弾部だけは残ってしまったんでしょうかね。
とりあえずその結果、主翼の膨らみは一気に小さくなり、
空気抵抗の低下に大きく貢献してるわけです。
ちなみにB型翼上の弾倉の凸部はこんな感じでした。
上の写真のC型翼に比べ、かなり大きい上に
主翼下面にも飛び出してますので(C型翼では下の出っ張りは無い)、
褒められたものではない、という部分でした。
後期マーリンスピットがC型翼ばかりになるのは、武装の選択の自由度に加えて、
こういった細かい部分でも優れていたからでしょう。
機首周り。
Mk.IやV(5)に比べると、かなり高い精度でそれぞれの外板が取り付けられてます。
これはレストアのやり過ぎ(笑)では無く、以前の写真でも確認できるので、
ある程度までは、元からこうだと思って間違いありません。
後期型マーリンスピットはこういった細かい空力部まで気を使ってるのが特徴の一つでしょう。
排気管が一つ一つ別々になって、小さくなったのにも注目。
後ろを向けてるので、強烈なシリンダーからの排気(大容量でマフラーも入ってないのだ)を
後方に向けて打ち出し、多少は推力にしよう、という下心も見えます。
ちなみにプロペラは完全に金属製。
当然じゃん、と思うかもしれませんが、実はスピットの4枚ペラは、後に木製になります。
イギリスの場合、資源不足の問題というより、エンジンの重量増と、
プロペラ枚数の増加で、機首部が重くなるのを嫌ったせいだと思われますが、詳細は不明。
ついでに良く見るとプロペラの途中に妙な線が入ってます。
まさかここで接合してる、って事はないと思いますが、何のためのモノかは不明。
ちなみに初期型のMk.V(5)だとこんな感じ。
両者ともオリジナルの状態で保存されてたわけではないので、
単純比較は難しいですが、それでもMk.VII(7)の方が凸凹が減り、
排気管周りの処理、エンジンカバーの取り付けなど、
非常に滑らかになってるのが見て取れるかと。
MK.V(5)の片側3つしかないフィッシュテイル排気管との違いも見ておいてください。
ただし、ほとんど竜巻のようなプロペラ後流の直後にあるエンジン部を、
ここまで滑らかにしても、どれだけ空気抵抗減少効果があるのかは、
私にはなんとも言えませんが…。
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