まずは横から見たMk.VII(7)。
胴体は初期型マーリン搭載スピットに対して約43cmほど長くなり、
外側からではわかりませんが、機体のあちこちに補強材が入って機体の堅牢性を上げてます。

ただし、マーリンスピットではエンジン後ろの防火壁(Firewall)から
尾翼の前(ここで胴体が分断されてる)まで、その基本構造は最後まで大きな改変は無いはず。
なので、全長が変わったのはマーリン60シリーズを入れるために
機首のエンジン部の延長し、そのバランスをとるため
尾翼あるいはその舵面を延長してるのだと思われます。

ちなみにMk.IX(9)&XVI(16)は約35cmしか全長伸びてないので、
このサイズ(全長約9.55m)なのはMK.VII(7)とその改修型であるMK.VIII(8)だけです。
まあ、肉眼で8cmの差を見分けられる人はまず居ないでしょうが…

主翼形状は先にも書いたように基本はC型翼で、
胴体付け根部に燃料タンクを埋め込んで、翼端部を延長したもの。
これは次のMK.VIII(8)でもそのままだったはず。
(MK.VIII(8)の航続距離が長いのはこのMK.VII(7)式の燃料タンク付き主翼をつけてるから)

他にも、写真では暗くてよく見えませんが、尾翼下の尾輪も収納式に変更され、
離陸後は胴体内部に収納されるようになってます。
これもマーリン スピットではMK.VII(7)とMK.VIII(8)だけの特徴です。

さらに高高度型のMk.VII(7)はコクピット周りもちょっと特殊なんですが、それはまた後で。



少し斜め前から。

まずプロペラが4枚になってるのが初期型マーリン スピットとの大きな違い。
もっとも初期型マーリン最終作の高高度戦闘機、MK.VI(6)も4枚ペラだったので、
これが後期スピット“だけ”の特徴とは言えないのですが…。
ただ100機ほど造られたものの、どこでどうやって使われたのかもよく分からん
Mk.VI(6)は例外中の例外で、4枚ペラの機体を見たら、
基本的には後期マーリン スピットと考えていいと思います。

エンジンの排気管が、いわゆる魚の尻尾、集合排気管のフィッシュテイル型から、
単排気管に変更され、各シリンダーごとに6本出てる形になったのも後期型の特徴です。
(V12エンジンだから片側6本×左右2列)
これが最初に採用されたのがこのMk.VII(7)の設計からでした。
まあ、先に書いたように実際に登場するのはMk.IX(9)の方が先になっちゃうんですが。

ただし、戦闘による損傷で1943年以降に修理に入った初期型のMk.V(5)などが、
修理から上がってきたら単排気管になっていた、という話もあり、
この初期型、後期型の判別ポイントも絶対ではありませぬ。
また、Mk.V(5)はMk.IX(9)登場後の1943年まで製造が続いたんですが、
その最後の時期の生産型は、最初から単排気管だったともされます。

ちなみにMk.VII(7)は機首部の形状が左右で異なるんですが、
ここの展示、残念ながら反対側に回れず、この点をお見せできませぬ。
反対側、右機首部の排気管の下には、操縦席与圧用の吸気口が
細長い筒型の形状で取り付けられてます。
おそらく排気管の前まで管を伸ばさないと、排気ガスで
パイロットが一酸化炭素中毒になる可能性があったんでしょうかね。

ついでにピトー管も、他のマーリンスピットとは形状が異なります。
現存機ではこのMk.VII(7)以外で見たことがない形で、復元が適当だったのか、
とも思うんですが、当時の機体写真を見ると、
確かにこれと同じものが付いてるようにも見えます。

ただ残ってるMk.VII(7)の写真は極めて少なく、確認は困難です。
よって、これもとりあえず謎としておきます。



やや斜め上方向から。
従来に比べ、1mだけですが主翼の全幅が広がってるの、
なんとなく判りますかね。
手前にあるのはマーリン60シリーズエンジンですが、この機体に積まれてたものかは不明。

ちょっと見づらいですが、より強力で熱量も増えたマーリン60シリーズに対応するため、
このMK.VII(7)から主翼の左右下にラジエターを二つ搭載してます。
ただし、内部は2/3ほどがラジエター、残りの1/3は左右の主翼で内容が異なり、
右翼にはインタークーラーが入り、左翼には従来どおりオイルクーラーが入ってます。
正面から中を見ると綺麗に分割されてるのが分かるんですが、
この機体では、ラジエター周りに近づけず、その写真は撮れませんでした。
でもって、この点は、Mk.VIII(8)、さらに緊急改修型のMk.IX(9)にも引き継がれてます。
まあ、例によって(笑)実際に登場したのはMk.IX(9)が先なんですが、

ただMk.IX(9)が1942年初頭の設計開始からわずか4ヶ月、早くも4月26日に初飛行、
さらにそこから2ヶ月足らずの6月10日には部隊配備開始される、
という驚異的な速さで戦場に登場できたのは(設計開始から半年以下)、
既にMk.VII(7)用に設計されていたマーリン60シリーズ用の機構の多くを
そのまま流用できたから、という面が少なからずあります。

ついでに良く見ると機首下のエンジン(過給器)空気取り入れ口も、
初期型スピットに比べて大型化してるのに注意して置いてください。
これもMk.VIII(8)、Mk.IX(9)に引き継がれる特徴です。
2段過給のマーリン60シリーズの場合、
エンジンに必要な空気の量も多くなったのだと思われます。



解説ツアーの皆さんが写りこんでしまってますが、
後方上から見てるのはこの写真だけなので、載せときます…。
なんとなく、翼端が引き伸ばされて、ちょっと先が尖がってるような形状になってるのが見て取れるかと。

ついでに主翼のエルロン(補助翼)の位置が妙に内側にあるのも注意。
この点は後でまた説明します。


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