■スペシャル おまけ その1 Mk.I&ME109E旋回性能テスト
イギリス空軍が行ったスピットファイアMk.IとMe109Eの運動性能テスト。
このテストでデータがとられたのは主に水平方向の運動性能。
まずは機体を進行方向を軸にしてグルっとまわすロール。
なんの意味が、というと、飛行機は主翼の揚力の発生方向を横向きにすることで、曲がります。
つまり、機体を傾けるわけですね。そのために必要なのがロール運動。
ロールの速度が遅いと、あ!敵に後ろを取られた!
「ふ、だが、しかし!ここで横転して!よっこい…」
とか言ってる間に後ろから撃たれて終わります。
スパ!っと動かないと戦闘機にはなれんのです。
これは180度反転してひっくり返り、背面飛行から急降下に入る、
という相手から逃げる場合に基本中の基本となる機動にもつながります。
横に傾けた段階で主翼の揚力は斜め方向に機体を引っ張り(押し上げ)ますんで、
後ろから見てると、横方向にすっ飛んでいくように見えます。
ターンは、普通に360度、円を描く運動。
空中戦などでぐるぐる回る運動ですね。
一般に小さく回れる方が強いことになります。
より小さい旋回半径なら相手の後ろに回りこめるわけです。
いわゆる旋回運動なのですが、ここでは、高度差の発生しない、下がりも上がりもしない、
平面の円運動を比べています。
上下運動を行おうとすると、後ろの相手から比較的狙いやすくなるからでしょう。
ちなみに、このテスト、高度約3600mで行われており、
これは圧倒的にme109が有利な高度です。
イギリス、案外フェアじゃん、というか実戦データをきっちり取りたかったんでしょうね。
SPIT
I vs Me109E
旋回性能テスト
1940年9月ファンボロー
高度3658m(12000ft.)にて
■機体を45度ロールさせるのに必要な時間
速度 |
360km/h(200mph) |
480km/h(300mph) |
560km/h(350mph) |
Me.109E |
0.9秒 |
1.9秒 |
2.9秒 |
SPIT Mk.I |
1.8秒 |
2.1秒 |
3.1秒 |
非常にわかりやすい結果に。
ロール時には主翼はウチワのごとき状態で空気抵抗のカタマリですから、
これが小さいMe109の方が有利なのは想像がつきます。
が、両者で360km/hの時には倍近い差があったのに、480kmでは0.2秒差、
あろうことか、560kmではロールスピード、スピットが逆転しています。
Mk.Iですから、両者ともロール運動に入る際に動かす主翼のエルロン(補助翼)は羽布貼りのまま。
これは純粋に主翼のねじれ剛性、空気抵抗をねじ伏せる機体強度の差でしょう。
実際、機体強度なんて見たことも聞いたことも無い、という設計思想だった
ゼロ戦も、そのロール性能はお粗末でした。
ミッチェルの設計思想がこんなところにもメリットを生じさせているわけです。
■360度ターン旋回(最小半径で1周旋回)に必要な時間
速度 |
360km/h(200mph) |
Me.109E |
25秒 |
SPIT Mk.I |
19秒 |
空中で、正確に360度回らせるのは困難ですから、多分、この数値は旋回角と速度から計算で出しています。
まあ、現実にもこんなとこでしょう。旋回性能はよく言われるようにスピット圧勝です。
これ、Me109は最大揚力係数時で計算されてますから、前縁スラット、オープンでこの数字です。
■最小旋回半径(高度を失わない旋回)
|
|
Me.109E |
半径268.2m(880ft) /時速248km(155mph) |
SPIT Mk.I |
半径213.4m(700ft.)/時速256km(160mph) |
速度 |
360km/h(200mph) |
480km/h(300mph) |
560km/h(350mph) |
Me.109E |
381m(1250ft) |
609.6m(2000ft.) |
データなし |
SPIT Mk.I |
304.8m(1000ft) |
457.2m(1500t.) |
データなし |