■Mk.II

次にMk.IIだ。
バトル オブ ブリテンの途中で配備がスタート、
変更点は100オクタンガソリンの使用を前提とし
過給圧を3lb/sqin前後上げてパワーアップしたマーリンXII(12)エンジンを搭載、
20mm機関砲を搭載したB翼が正式装備として
生産段階で取り付けられるようになった、などだ。
コフマン式火薬エンジンスターターの搭載もあるが、
これ、どうも着いてないように見える機体はあるは、MkI にも着いてるような
機体の写真が残ってるはで、イマイチ新採用とは断言できないとこがある。

試験地:ボスコムダウン

1940年3月30日

Mk.II  シリアルP.7280

マーリンXII(12)

◆武装:7.7mm×8門(後のA翼)

 

機体重量2.8t(6172lb)

 

◆給気圧(boost pressure) 最大8.8lbs/sq

100オクタンガソリン

最高速度

566.4km/h(354mph)  5349m(17550ft.)

3048m(10000ft.)での最高速度

520km/h(325mph)

6096m(20000ft.)での最高速度

560km/h(350mph)

実用上昇限界(Service Ceiling)

11460m(37,600ft.)

上昇力

 

上昇力 3048m(10000ft.)まで

3.4分

4572m(15000ft.)まで

5.0分

6096m(20000ft.)まで

7.0分


エンジン出力の上昇にともなってかなり期待されてたようだが、
その結果はご覧の通り。Mk.I のロートル社プロペラ搭載機と比べ、
最高速は低下してる上に、その全開高度まで低下。
3000mレベルの速度こそ上回ったものの、6000mレベルではこれまた下回る。
上昇力はそこそこアップしているのが救いだが、
この段階ではMk.I の給気圧アップ改造作業も済んでいたはずで、
おそらく性能差は無いに等しかったのではないだろうか。
とくにこのテスト、まだ寒い時期に行われていて、
ラジエターの冷却性能に問題を抱え続けたMk.I 三兄弟にとっては、
かなり有利な条件下で行われているのだ。

残念ながら、給気圧アップ後のマーリンII/III、スピットファイアMk.I
ともにデータが見つからなかったのでなんとも言えない部分があるが、
機体構造そのものに変更はないので、マーリンXII(12)エンジンが
「スカ」だった、と考えるべきだろう。

空軍によるレポートでは、最後に
「マーリンXII(12)の性能向上については要検討な状態であり、
全開高度でのその性能は期待を下回る。この点はロールス・ロイス社が調査中」
となっていて、やはりエンジンに問題があったことをうかがわせる。
同エンジンが1104基で生産打ち切りになっているのもそのせいだろう。

これはスピットファイアの進化において、最初のつまずきで、
しかもバトル オブ ブリテン真っ最中なのだから、
空軍関係者はあせったはずだ。
意外に触れられることは少ないが、この機体の失敗は、
イギリス空軍最大の危機の一つだったように思う。

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