エンジンをアップで。
He-219にはDB600シリーズの一つ、DB603が搭載されてました。
初期型のHe219
A-2と、後期型のA-5&A-7の違いがこのエンジンで、
A-2はDB603A、A-5以降はDB603Eが搭載されてました。
といっても、両者の区別は先端の減速器部分を見ないと困難なので、
この状態ではなんとも言えませんが…。
左側に残ってるカバー部分の後端はカウルフラップです。
液冷エンジンなんですが、例のドイツお得意の環状ラジエター(後述)なため、
ここがパカっと開いて出来た後部の隙間から、ラジエターの熱い空気を逃します。
その右上に付いてる灰色のデカイ箱は恐らく冷却液のタンク。
そして右端に見えてる黒いアンモナイトみたいなのは
ドイツの液冷エンジンではお馴染みの横付け過給器で、
機械式のスーパーチャージャーとなっています。
通常は空冷エンジンの熱い空気を後部から抜くために使われるカウルフラップですが、
環状ラジエターが多いドイツ機の場合、液冷エンジンでもよく見ます。
ちなみに環状ラジエターでない液冷エンジンだとこういった形状になります。
ついでにドイツの液冷エンジンはこのDB600シリーズを始め、横に過給器の吸気口、
つまりエンジンの空気取り入れ口があるのが特徴になってます。
このためMe-109を始め、矢印の先のような
エンジンの横から飛び出した煙突状の空気取入れ口が
一種のトレードマークになっているのです。
が、このHe219では直ぐ横の主翼からダクトを配管して、
主翼の前縁に空気取入れ口を造ってしまい、
煙突型の空気抵抗のカタマリを排除してしまってます。
まあ、肝心の主翼がないので、その部分はお見せできないのですが…
同じDB600系の双発機、Me-110などでは煙突が飛び出したままですから、
よく考えられた設計と言っていいでしょう。
同じルッサーの設計のはずなんですが、He-219は
やはり彼が抜けた後に大幅改修されてるのかも知れません。
とにかく、徹底的に空気抵抗を減らす、
という意思がヒシヒシと感じられるのが
このHe-219の設計ですね。
少し上から。
エンジン上にもいろんなパイピングがされてますが、詳しくはわかりませぬ。
ちなみに、ドイツの液冷エンジンなので倒立型であり、
シリンダーヘッドは下側になるため、ご覧のように排気管は下から出ています。
で、ちょっと驚いたのがこのエンジン、どうも金属むき出しの未塗装みたいなのです。
なんぼアメリカ軍でもエンジンの塗装までは剥がさないと思うので、
最初からこうだったと思われます。
それがどうして問題なのか。
まず、運転中のエンジンは常に熱を奪って冷やす必要があるのですが、
エンジン本体からの発熱には、接触してる空気に拡散する伝導、
赤外線などの電磁波の形で放出する放射の二つがあります。
で、数千度の燃焼を行なうガソリンエンジンで、
戦闘機に搭載される高出力タイプは極めて高温になり、
こうなると空気への伝導より、赤外線など
電磁波による放射の方が重要になってくるのです。
(可視光線になる(赤化する)ほど高温ではないが)
ところが無塗装の金属板では放射率が極めて悪く、
このため、表面にペンキなどの塗料を塗ってやるのが普通です。
現代ではより進んだ放射塗料という、
熱の放射効率を向上させる塗料もあります。
なので、全開バリバリで飛行する戦闘機のエンジンが無塗装、
というのは、熱対策としてあまり考えられない状態なのです。
もはやそんな手間をかける事もできないほど
ドイツの生産現場が切羽詰まっていたのでしょうかね。
あるいは夜間爆撃機相手なら、そんな長時間大出力運転はない、
そもそもドイツの夜は涼しいし、
と見切った上でのこの状態なのかなあ…。
でも、イギリスもレーダー積んだ夜間戦闘機、
モスキートとかを繰り出して来てますから、
そんな楽な商売ではなかったはずですが…。
ちょっと気になるところですが、詳細は不明としておきます。
上から見るとこんな感じ。
エンジン前部の円盤型の部分にラジエターとオイルクーラーが入ってますので、
おそらく青いパイプは冷却用のものでしょうか。
手前に見えてる巨大なボルトみたいのは、固定用の金具?
NEXT