■He162
A1
さて、ここからは同じロンドンにある、別の博物館の機体、
帝国戦争博物館にて、天井からぶら下げ展示されてるA1型を見て行きます。
RAF博物館のは20mm機関砲搭載のA2型でしたが、
英語圏の研究者によると、これは初期生産型、30mm機関砲搭載のA1だとされています。
現存機でA1はこれだけなので、貴重な機体でしょう。
ただし、問題があって、この博物館の解説だと、これもA2だとなってたりするのです(笑)。
ドイツあたりの研究者の意見も確認したいとこですが、
私、ドイツ語はさっぱりなので、どうしようもなし…
とりあえず、この機体は機首の銃身が見えてないのですが、
これが銃身が短いMk.108が入ってるためだとすれば確かにA1で、
単に機関砲が外されてるだけなら、A2の可能性も否定できません。
とりあえず、ここは多数派にしたがってA1である、としておきましょう。
まあ、そんな感じなので、この機体の来歴も全く不明で、
恐らく、例の11機持ち込まれたHe162の中の1機なんじゃないか、という話です。
こちらの機体は脚を畳んだ飛行状態での展示。
機体下面といった、通常、あまりよく見えない部分も見ることができます。
この機体、RAF博物館と同じ基地で鹵獲された、同じ部隊のものだと思うのですが、
塗装がかなり異なるのはこういうものなのか、考証が間違ってるのか、よくわからず。
例の主翼の妙なねじれのため、主翼下面、胴体との接合部が変に波打ってるのがわかるかと。
ついでに、主翼は左右でつながった1枚板構造で、これを胴体に載せ、さらにエンジンを乗っけて、
胴体にボルト止めする、という構造になってます。
正面下から。赤い矢印が書かれた先端部のパーツが木製で、
そこから後ろの胴体がジュラルミンの金属製となります。
胴体中央あたりの下面に開いてる穴は、薬莢の排出孔で、
それの付いてるハッチが例の機銃のメンテナンス&給弾のためのもの。
こうして見ると、やはり主翼が小さすぎるような印象を受けますね。
高速で飛べるなら、それをメリットとする事が可能でしょうが、
BMW003はそこまで強力なエンジンでは無いですし、
この機体も、あまり空力的に洗練されてるようにも見えませんから、キツイでしょう。
特に離着陸は相当神経を使ったと思われ、
あのドロナワ感あふれる主翼の形状は、やはりそこら辺が原因じゃないでしょうか。
ほぼ真後ろから。
胴体が円形なのがわかります。
この機体がMe262やミーティアといった同世代のヨーロッパのジェット戦闘機に比べ有利なのは、
主翼には重量物がなにもない、という点でしょう。
Me262にしろミーティアにしろ、ウンザリするほど重いジェットエンジンが翼下にぶら下がってるため、
ロール、左右方向に回転する動きが極めて鈍重になります。
腕をただ上に上げるのと、10kgの米袋抱えて上に上げるの、どっちが大変か、という話。
で、飛行機のあらゆる戦闘中の機動でロールは基点となる動きですから、
これが遅いとまともに空中戦はできません。
なので、両機とも、基本的な戦術は高速で一直線の一撃離脱、という事になります。
が、この機体の場合、重量物であるエンジンは左右の中心点、つまり重心点である機体の上ですから、
左右へのロールははるかに高速となるわけです。
ただ、そういう点では軽快だったと思いますが、
テスト時に高速旋回での安定性に問題が指摘された、
という話もあるので、その実力はよくわからない、というのが実際のところ(笑)。
ちなみに、エンジンを上に積んでしまった関係で、上下の重心点は機体の中心点から
大きくずれてるはずで、恐らくダッチロール(左右にシーソーのように動く振動)の原因は、
そこら辺の重心の問題だったんじゃないでしょうかね。
斜め後ろから。
そのザラマンダーの名の通り、全体的に爬虫類っぽい印象の機体です。
この角度から見ると、エンジン下の台座が結構後ろまで延びてるのがよくわかるかと。
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