機首部をアップで。
例の出っ張り部分がやはり目に付きます。

側面のエンジンカバーに細かい穴が開いてますが、この正体は不明。



20mm 機関砲と12.7mm機関銃。

この20mm機関砲のカバー部、既に見た
スミソニアンのMk.VII(7)やフランスのMk.XVI(16)とは明らかに形状が異なるんですが、
他の機体のレストアがどれだけ正確なのか判らんので、
これがグリフォンスピットからの変更なのかは断言できず。

主翼下面は左がロケット弾の発射架、右のクモみたいなのが爆弾懸架装置。
このタイプの爆弾懸架装置には中央の丸い部分の中に爆弾に引っ掛けるフックが一つあり、
これで爆弾を吊るして行き、投下の時にフックを外します。

ただしこれだと爆弾を重心点1点で引っ掛けてるだけですから、
飛行中は揺れまくる事になり、それを防ぐために爆弾を周りから押さえつける固定具が、
クモの脚のような棒部分です。
上から挟み込んで固定することになるわけです。
ちなみにこれ、左手前の固定部が壊れていて、しかも適当に直されてますが(笑)、
明らかに大戦中にスピットで使われていたものとは異なり、
おそらく戦後に付けられたものじゃないでしょうか。

その左でたくさん飛び出てるのがロケット発射装置の懸架部。
前後で一対で、ここにロケット1本ずつ引っ掛けて運ぶのですが、
これも大戦中のものと構造が異なり、使い方はよくわかりませぬ。

ちなみに、爆弾架はこういった構造のため、重心点にフックさえ付いていれば
爆弾以外でも固定して運ぶことが可能でした。
このため、一部で有名な“変形爆雷30型”(Depth charge modification XXX)、
すなわちスピットファイアの爆弾架に搭載して運搬するビヤ樽(笑)が登場する事になります。

これでイギリスのエール(Ale)、すなわち黒ビールでないイギリスの地ビールを
ノルマンディー作戦後に大陸に渡ったイギリス軍に送り込んでいたのです。
もちろん、爆雷の一種だ、というのは大嘘ですね(笑)。

ちなみにこの“変形爆雷”はどうもイギリス空軍(RAF)の正式装備だったようで、
戦後の解説書なんかには「この装備を搭載するとスピットの航続距離と運動性は低下した」
と大真面目に解説されて居たりします。イギリス人のこういう部分は好きです、はい(笑)。
さらに前後が切断された樽型の場合、後部で生じる渦の方が空気抵抗源として大きい、
という無駄に正確な科学知識によって(笑)ビア樽の後ろに水滴型のカバーを付ける事までやってます…

ただし、さすがにビア樽では効率が悪く、実際はこの頃から導入が始まった
投下式増加燃料タンク、いわゆる増槽(jettison auxiliary fuel tank)を
エールで満杯にして運んでいた場合が多かったようです。
ついでにこの増槽も変形爆雷30型と呼ばれていたようで、
どうも中身がエールなら、なんでもかんでも変形爆雷30型の可能性もあり。

ついでに、これはパイロットがこっそりやってた、というものではなく、
正式な任務だったようで、各飛行隊から1機、毎週これを受け取りに
イギリス本土に飛んでいた、という証言もあります。

ちなみに中身はビールの一種ですから、
着陸に失敗して強い衝撃が加わると気が抜けてしまう恐れがありました。
さらに着陸時の衝撃で地面に落下、壊れてしまう事があり、
そうなると、その週には部隊中から、どうしようもなく操縦が下手なヤツとして、
白い目で見られることになったんだそうな…。



機首部アップ。
良く見ると排気管が全て丸くなっていて、オモチャみたいですが、グリフォンではこれが正解。
この博物館が適当な鉄パイプで再現しちゃったわけではありませぬ。

ついでにスピットは地上輸送時に主翼を取り外せるんですが、
その時、胴体とのつなぎ目にあるフィレット(接合部外板)も取り外します。
なのでフィレット部もネジ止めなんですが、そのネジがことごとく紛失しているのが、
タイの空軍博物館らしいところ(笑)。

失くしたなら、あえてそのままという姿勢は、
フライアブルにするために大改造しちゃったり、
自国で使用していた機体を再現するために別の機体にしちゃったりする、
欧米の博物館より、よほど良心的という気もしますが(笑)…。



スピナー部をアップで。
こうして見るとプロペラ部が木製なのがはっきりわかります。
たぶんこれ、オリジナルでしょう。

機首下のオイルタンクが無くなった事で、
スピナーからキレイな線で繋がってる機首部もよく判ります。
私はこの辺り、あまり好きなデザインではないですが(笑)。



例の上から撮影システムで、機首部の膨らみをアップで。

排気管が単純なパイプ型ではない事、
右翼主翼付け根にはガンカメラの穴が開いてるのも見といて下さい。

プロペラの右側に細かい穴が開いてますが、なんでしょうね、これ。


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