お次は主翼周りを。
実はこの主翼、折りたためるというスゴイ特徴があるのですが、
それはまた後で。
主翼の先のほうに見える穴は翼端灯があった場所。
反対側は残ってるのですが、こちらの左翼のものは失われてました。
主翼を少し離れた場所から見るとこんな感じ。
繰り返しますが、後部で二つに分かれた板状のパーツのうち、
胴体側の部分が離着陸の時に下げて揚力を稼ぐフラップ、
その外側が操縦に使うエルロンです。
フラップは下だけですが、エルロンは揚力を落とすために上にも曲がります。
こうして見ると巨大なエルロンなのがよくわかるかと思います。
エルロンの一番内側に小さな板状の可動部がありますが、
これがタブで、これについてはまた後で説明しましょう。
ここで主翼の高揚力発生装置についてまとめて見ておきます。
まずは前縁スラットから。
主翼の前面に付けられる高揚力装置には、
前縁フラップもありますが全く別物となりますから、注意してください。
Fi-156のスラットは基本的にはMe-109についてるのと同じ原理のものです。
ただしFi-156のは支柱によって主翼に刺さってるだけで、
特に動力とかはありませんし、
それどころかMe-109のように可動式でもなく、
この状態でほとんど動きません。
つまり折りたためず、出しっぱなしです。
これは主翼の揚力を維持するための装置で、
ご覧のように翼断面型になってます。
斜め下を向いてるため、機体が大きく向え角を取った状態、
つまり離着陸の時のように機首を上に向けた状態で、
スラットと主翼の隙間から、主翼上面に空気が流れこむようになってます。
大きく迎角を取る、という事は、
気流に対して主翼でフタをするようなものですから、
これは主翼上面に気流が流れなくなり、当然、失速へ繋がります。
が、この装置によって主翼上面に気流が流れ込むようにすれば
大きく迎角をとった状態でも主翼上面の気流の剥離が起きなくなり、
ある程度まで、失速を防げるのです。
ついでに、翼断面系になってるため、これ自体が多少の揚力を生むほか、
その背後に乱流が生まれ渦が出来ます。
渦ができるという事は低圧部が生じてる、という事ですから、
これは主翼上面の気圧を下げ、
主翼を上に吸い上げる揚力の強化に繋がるのです。
かなりよく考えられた装置でしょう。
大戦時のドイツ機ではこのシュトルヒやMe-109で見かけるものの、
他の国では戦後になるまで、あまり採用例がない装置です。
ただし、イギリスのハンドレイ・ペイジ社が特許を持っていた、
とういう話があるので、探せばイギリス機にもありそうな気がします。
戦後だとノースアメリカン社がこの装置を気に入ったようで、
F-86、F-100などでこれを採用しています。
ただし、こちらはMe-109のような可動式で、
水平飛行中は、主翼内に折りたたまれています。
こちらはエルロン(手前)とフラップ(奥)。
これらは主翼全体の曲がり率(曲率)を変えて
揚力を上げ下げする装置なので、
特に翼断面にはなってないのがわかります。
先に見た、エルロンの一番奥の小さな板、タブにも注目。
この時代の機体の操作系には油圧や電気モーターの補助はないので、
基本、全て人力で操作していました。
(大戦後半になると油圧補助が出てくる)
となると、これだけ大きなエルロンの操作には大きな力が要りますから、
長時間の飛行はほとんど体力勝負になってしまいます。
が、筋肉がしびれて操縦不能で墜落ってのはシャレになりません。
なので、あの小さな板、タブを使って操作の補助としていました。
あの部分だけなら、小さな力で動かせますから、
タブを上に上げると空気抵抗によって下に推す力が生じ、
逆に下に下げると上に押し上げる力が生じます。
それを利用すれば、より小さな力でエルロンを動かせるのです。
で、その奥に見えてるのが離着陸の時の高揚力発生装置、
おなじみのフラップで、これはごく普通のものがついてますね。
とはいえ、戦闘機や爆撃機ならともかく、
1937年生産開始の軽量の連絡機ではフラップですら珍しく、
フラップにエルロン タブから前縁スラットまでついてるのは、
当時としては最新メカ満載、といっていい機体になってます。
NEXT