■ステキな装置は別売りだ
このビヨーンと長くて白い装置は、貨物室に搭載して宇宙空間の作業に使われる
シャトル マニピュレータ― システム(SRMS)、通称カナダーム 1。
(カナダが造った腕、CanadaのArm
で Canadarm…)
全長で15m、重量で410s、あくまで無重力状態での使用が前提で、
地上ではその重さのため、全く動かすことができないようです。
ちなみに1なのは、当然、発展型の2があるから。
ただし2はシャトル軌道船ではなく、国際宇宙ステーション、ISS用のもの。
でもって私もここの解説で初めて知ったのですが、実はカナダはかなり早い段階から
スペースシャトル計画に参加しておりました。
このため1975年に、カナダが原子炉用に開発していたマニピュレーターを元に、
シャトル軌道船用のものが開発される事に決定されます。
それがこのSRMS、カナダームです。
コロンビア号2度目の飛行となる1981年のSTS-2から搭載され、
次のSTS-3の飛行で初めて実際に使用されたようです。
ただし、これは必ず搭載されていたわけでは無く、必要な飛行の時のみ
貨物室に搭載されてゆきました。
最終的に軌道船と同じ数、5本が完成してますが、
軌道船ごとに専用カナダ―ムがあったわけでは無いようです。
展示のものも1994年に完成後、全ての軌道船に搭載され、
合計で15回の宇宙飛行に使われたとの事。
ちなみにチャレンジャー事故の時はこれが搭載されてたので1本喪失してますが、
コロンビア事故の時は搭載されてなかったようです。
ただし、この時のコロンビアがカナダームと遠隔操作のカメラを搭載して無かったことが、
宇宙空間での機体の損傷チェックを困難にしました。
主翼前縁部の内側は、操縦席から直接見えないのです。
この結果、損傷の具合がよくわからないまま大気圏へ突入、
あの悲劇へとつながる事になります。
その先端部。なんだか鳥のヒナか謎の宇宙生物のような造形ではあります。
これで貨物室に積まれた人工衛星などを引っ張り出して放出するほか、
この先端部に宇宙飛行士を載せて、人工衛星の修理作業などを行ってました。
地球周回飛行中は無重力なので(宇宙空間だから無重力なのではない)
人間の移動は極めて不安定で、正確な動作に向きません。
なので、ここに足を固定して、必要な位置までキチンと連れて行ってもらったわけです。
ちなみにコロンビア号の事故以降は、ほぼ必ずカナダ―ムを搭載して飛行、
この先端部に延長棒とカメラを付け、宇宙に出た後も、
機体全体の状況を確認できるようにしてました。
もし何か異常が機体に発見された場合、例の救助用にスタンバってる予備のシャトルで
救助に向かう事になります。
ついでに、万が一故障によって折りたためなくなり、
貨物室のドアが閉じれなくなるような事態に備え、
火薬を使った強制排除装置が付いてました。
ついでながら、その後ろ、シャトルの機体前半部における
丸みを帯びた底部も見といてください。
こちらはシャトルの貨物室に搭載され、
中で各種実験が行えるようになっていた宇宙実験室棟(Space lab
module)。
ここが有人の実験室で、この後ろに与圧されてない(空気が無い簡易構造の)
パレットと呼ばれる無人の実験用装備を接続して使用します。
白い布状のもので包まれてますが、当然、これは大気圏突入対策ではなく、
絶対0度かつ強烈な太陽光にさらされるの宇宙空間で本体を守る断熱材でしょう。
ついでに人体や電子機器に有害な高周波の電磁波、
宇宙線を防ぐ機能もあると思うんですが、この辺りは確認できず。
ちなみに開発はNASAではなく、欧州宇宙機構(ESA)によりますが、
1998年に国際宇宙ステーションの建設が始めるまで、
アメリカ唯一の実用的な宇宙実験設備として利用され続けました。
(他にはソ連→ロシアの宇宙ステーション ミールが1986年から2000年ごろまであった)
この宇宙実験室装置は1983年から国際宇宙ステーション(ISS)が打ち上げられる1988年まで、
2基が製造され、計16回の飛行に使われたとされます。
展示のものは、その1号機。
こんなもの積んで宇宙空間まで飛んで行ってしまうんですから、
なんだかんだ言っても、シャトルってすごいなあ、という気はしますね。
ちなみにアポロ計画後にNASAが初めて打ち上げた宇宙ステーションは
スカイラブ、シャトルに積んで行ったこちらはスペースラブなので要注意。
当然、両者とも愛では無く、研究室の略称でLabです。
なんじゃこれ、という感じですが、上で見た宇宙実験棟、スペースラブに
軌道船の操縦室から移動するための通路で、
荷物室の実験棟と操縦室では高さが違うため、こういった段差用通路が造られたそうな。
ちなみにこれはマクダネル・ダグラス製らしいです。
これが実験棟の入り口に装着され、さらに直線の通路で操縦室に繋げて使用するのですが、
直線通路は宇宙実験棟が引退した後もまだ他の用途で使用され続けたのだとか。
こちらは無人の実験制御装置、イグルー(Igloo)。
無人でも操作可能な実験の場合は重くてかさ張る有人用の宇宙実験棟を搭載せず、
この制御装置に実験パレットをつないで実験を行いました。
ちなみにこれも欧州宇宙機構(ESA)の開発みたいですね。
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