■ロケットの先にあったはずのもの



スペース シャトルという名称は形容詞としてのSpace、
そして名詞としてのShuttleの組み合わせですから、
直訳するなら宇宙往還機、となります。

ただしShuttleという英語も日本語には無いに等しい概念で
翻訳はちょっと難しい部分があります。
厳密には単なる往復ではなく、頻繁に往復する、という意味を含む言葉で、
もともとは、はた織り機で糸を通して左右に飛ばす部品を指す名詞でした。
(日本語で言うと杼(ひ)なのだが、まず通じないだろう…)
卓球やテニスの試合中のボールのように、左右にポンポンと飛び交う状態、
といった感じでしょうか。

なので単なる往復するもの、ではなく
“頻繁に往復するもの”という意味があるのです。
このためイベント会場や空港などと駅の間を何度も往復するバスを
シャトルバス、と呼びますが、単に1日1往復の村と県庁所在地を結ぶバス、
といった場合はシャトルバス、とは呼べませぬ。

となると、年に数回撃ちあげるのが精一杯だった
スペースシャトルは、少々、名前に偽りあり、となります(笑)。
(5機の機体が31年間の運用で134回しか飛んでない。
ちなみに任務計画番号は135まであるが25回目のチャレンジャーは
事故によって宇宙に出てないので飛行回数には含まず134回となる)
が、計画当初は もっと頻繁に飛ばす予定だったのです。

それが不可能になったのは総部品数250万点を超えるとされる
あまりに複雑な機構により安全性の確保が困難になった事、
そして、本来なら再利用可能で安価な宇宙船になるはずだったのに、
その複雑さゆえに一回の打ち上げに7億7500万ドルもかかってしまった事、
(2010年度平均。当時の円レート85円前後の計算で約658億7000万円。
これは日本の主力ロケットH-IIロケットの約6〜7倍にもなる。)
などによって、その計画は完全に破たんする事になるわけです。
その辺りの事情も、可能なら多少、見て行きましょう。

なので人類の宇宙進出にとって、大いなる進化となるはずだった
スペースシャトルは、確かに進化をもたらした、という部分と、
やってみたらそうでもなかった、という部分があり、
特に後者には2度にわたる事故で多くの命が失われた、
という面もあるため、その評価は単純ではなかったりします。

そこら辺りを理解するためにも、
とりあえず最初にスペースシャトルの歴史を
簡単に確認しておきましょう。



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