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機体前半を斜め後ろから。スマートな機体です。 機体前部をアップで。 V12エンジンなのに機首部の排気管が3本しか無いのは集合排気管で、2気筒につき1本だから。また尾びれ型排気管(fishtail exhaust)と呼ばれた排気口を平たく押し潰した形状なのにも注意。1段過給器マーリンを搭載していたMk.V(5)あたりまでがこの排気管を搭載していました。 これは排気口を細く絞り込むことで噴き出す炎を小さくし(マフラーなんてない直結だから排気時に燃焼室から火が噴き出す)夜間飛行時に目が眩まなくする防眩効果と、細く絞り込むことで排気速度を上げて(ホースの先を絞るのと同じ)これを推力として利用しようしたもの。 後に2段2速過給機付きのマーリン60シリーズを搭載したMk.IX(9)以降では気筒ごとにもう少し小さな排気管を6個付ける形に変更されるので、何か不都合があったのでしょうが、この辺りの理由もよく判らなかったりします。 ちなみに細く絞り込むと排気流が高速化してその反作用で機体が加速される…というのはあくまで排気が衝撃波を含まない場合ですが、エンジン内部の爆発による衝撃波がそのまま噴き出す航空エンジンでホントに効果があったのかは諸説あります。 また胴体と主翼の接合部のカバー、いわゆるフィレット(fillet イギリス発音。アメリカだとフィレー)が胴体後部と主翼後部に行くにつれて末広がりに大きくなってゆくのも見て置いて下さい。これは先に説明した胴体後部が細く絞り込まれ、主翼との隙間が拡大するのに対応した結果です。 コクピット部をやや後ろから。 天蓋(キャノピー)に穴が開いてますが、弾痕とかではなくただの破損だと思われます。 前部の風防(Wind Screen)には分厚い防弾ガラスが、パイロットの背面にも防弾板が入ってるのが判ります。 これらは当初は無かった装備で、バトルオブ ブリテン時の戦訓により後付けされたものです。このため風防の防弾ガラスは強引にコクピット正面に取り付けられており、空力上の抵抗も大きく、後にMk.V(5)以降ではコクピット内部に取り込まれる事になります。 ついでに照準器もキチンと残ってるのを見といてください。 コクピットアップ。 アンテナ支柱(Mast)には尾翼まで繋がるアンテナ線があるのにも注目。この線の方がアンテナ本体で、棒部分はただの支柱です。 初期のスピットは高周波天国のイギリスながら、未だ30Mhz前後の低周波(波長は約10mと長い)であるHF帯域の無線機を使っていたため、他の国の機体と同様に長いアンテナ線が必要でした。それがこれです。 ところがそこはイギリス、バトル オブ ブリテン直前の1940年夏には航空機無線に早くもVHF周波数(100〜300Mhz)を採用(おそらく世界初)、次々にこれに置き換えてしまいます(情報量が増えるのでチャンネルが増える。ただし到達距離は短くなるが本土防衛が主任務なら問題ない)。 となると、アンテナ線は不要になるので外されますが、その後、スピットではアンテナ支柱をそのままVHFアンテナに転用してしまいます。なので一見すると同じ無線装置に見えるのですが、全く別モノで、こういったアンテナ線が張られているのはごく初期のスピットのみです。 少なくともMk.IIの途中からVHF無線になり、MK.V(5)以降ではほぼ全てがアンテナ線無しになってます(例外として米軍に供与されたMk.V(5)がある。1941年では米陸軍はVHF無線を持って無かったのでアンテナ線が張られた。ただし北アフリカで供与された1942年以降はアメリカ軍もVHF化されてる) ちなみに垂直尾翼上のアンテナ線支持部は後にIFF(敵味方識別信号)発振用アンテナに置き換えられてます。 参考までにVHFに置き換えられたMk.V(5)のアンテナ部。アンテナ線を支える上部の三角の支持部が無くなり、当然、アンテナ線も消えて支柱(Mast)をそのままアンテナに置き換えてしまってるのが判ります。 |