■ムスタングの基礎知識
さて、最初にノースアメリカン P-51ムスタングの
基本中の基本を確認してしまいましょう。
第二次大戦中の軍用機は戦争中にドンドン進化する、というのが普通で、
ムスタングも例外ではありません。
が、それでもアメリカ陸軍だけを見れば、
基本的にはほぼ単純な3段進化のみで、
スピットファイアやMe-109のような悪夢のごとき機種展開は見せません。
ただし、細かく見て行くといろいろあるんですが、
まず最初は単純な進化図でその基本を確認します。
とりあえず大まかな進化の流れは、
最初のアリソンエンジン搭載 P-51A
→マーリンにエンジン換装+プロペラ4枚化 P-51B/C
→武装強化&水滴全周視界キャノピー P-51D
の3段階進化ですね。
この内、B型とC型は同じ機体なのに、製造工場が違うだけで名前が違う、
というちょっと妙な存在になってます。
ちなみにB型がノースアメリカン社の地元、
カリフォルニア州イングルウッド工場製、
C型が大戦中に増設されたテキサス州のダラス工場製。
つまりアメリカ大陸の西で作られたのがB型、
南東で作られたのがC型という事です。
日本で言ったら北海道と大分県に別々に工場を建設、という感じで、
なんでこんな遠隔地で工場を展開したのかはよくわからず。
パッカード工場からのエンジン納品とか、面倒だったでしょうに。
で、ここら辺りをざっとまとめるとこんな感じに。
**P-51B photo /US Air force & US Air force
museum
この内、最初の大進化がアメリカ製アリソンエンジン搭載のA型から、
マーリンエンジン搭載のB/C型になった時です。
(B型とC型は先に見たように工場が違うだけで同じ機体)
アメリカのパッカード社がライセンス生産していたマーリンエンジン、
パッカードV1650型は、本家イギリスのロールス・ロイスの60型以降と同じ、
つまり流体力学の魔術師フカーの魔術によって
最強の2段2速過給機が搭載された後の型でした。
よってスピットファイアのV(5)型からIX(9)型への進化と全く同じ、
チョー強力な出力と同時に、ステキな高高度性能まで一気に手に入れてしまったわけです。
ちなみにそのエンジン性能の向上に伴って、プロペラも4枚になってます。
初代のA型は、運動性はそこそこ、速度もそこそこ、そして航続距離は十分長い。
悪くは無いんだけど、1段(1stage)式のスーパーチャージャー(機械式過給機)しか
積んでたないため、5000m以上の高高度性能がまるでダメ、
ということで、イギリスでもアメリカでも地上攻撃用の戦闘爆撃機として使ってました。
アメリカに至っては後で見るようにA-36という急降下爆撃型まで開発してます。
ドイツで言うなら、Fw-190がよく似た立場にあり、
この機体も戦闘機として優秀なんだけど低高度番長であり、
6000m以上の高高度でだと2段式過給機を搭載したMk.IX(9)
以降のスピットに歯が立たず
戦争後半は戦闘爆撃機として活躍してゆく事になったわけです。
ムスタングはその逆のパターンですが。
ただしドイツの場合、最後まで耐熱性の高い高オクタン価のガソリンが自前で作れなかったため、
シリンダー内の圧縮を十分に上げられず
(高温による自然発火でノッキングが発生、最悪エンジンが壊れる)
このため、ジェット機のMe262が登場するまで、まともな高高度戦闘機がありませんでした。
よってFw-190までもが対戦略爆撃機の高高度戦闘に引っ張り出されてましたが…。
逆にそもそも素性が良かった上に、そこに高高度性能が加わったムスタングは、
以後、戦略爆撃機の護衛戦闘機として、欧米、太平洋の両戦線で、
終戦に至るまで活躍をつづける事になります。
(アメリカの戦略爆撃は基本的には高高度からの昼間爆撃なので、
護衛戦闘機にも高高度性能が要求された。
後に射撃管制レーダーを持たない日本相手の爆撃では
夜間低高度爆撃に切り替えられる事になるが)
で、そのマーリン搭載ムスタングがさらに進化したのがD型です。
普通、P-51ムスタングと聞いて思い出すのがこの型でしょう。
基本的な変更点はキャノピー(天蓋)を水滴型にして、
後部視界を確保した事、武装の12.7o機関銃をさらに2門増やして、
計6門搭載した事が挙げられます。
とりあえず、大まかな流れはこんな所で、これだけ知ってるだけでも、
ご近所のマスタング博士くらいは楽勝で目指せますし、
やりようによっては市大会ベスト8くらいまでなら狙えるはず。
が、実は細かく見て行くと、もう少し複雑なのがP-51ムスタングの機体展開でして、
県大会、さらにはインターハイ出場を狙うなら、そこまで知る必要があるでしょう。
この辺りは、次回の記事で見て行きます。
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