■Ju87 G2 /
RAF博物館 ロンドン
今回はロンドンのRAF博物館にある、もう1機のJU87、G2型を見て行きましょう。
G2はJu87のほぼ最終進化型にあたるのですが、
それにいたるまでの進化を、最初に簡単に説明をしておきます。
A型
最初の量産タイプ。ただし生産数300機以下
B/R型
事実上最初の量産型がB型、その燃料搭載量を増や航続距離を伸ばしたのがR型。
(シカゴ科学産業博物館の機体はB型)
いわゆる初期型で、北アフリカやバトル オブ ブリテン時の機体。
C型
艦載型だが、そもそも空母が完成しなかったので試作でオシマイ。
D/G型
ここから後期型。地獄の東部戦線の後半戦に投入されたのがこれ。
高出力エンジンへの換装に伴い、
それまでの悪夢のようなゴチャゴチャした機首を再設計、
爆弾搭載量を増やしたり、空気抵抗を大幅に減らしたりいしてるのがD型。
(それでも20km/h前後しか高速にならず…)
それを対戦車戦用に特化させ、主翼下に37mm機関砲のガンポッドを
搭載できるようにしたタイプがG型。
ただしG型は新規の生産ではなく、全て既存のD型から改造したようです。
最初は急降下爆撃で、空飛ぶ大砲として活躍したJu87ですが、
戦争後半になると、陸上戦の主役は完全に戦車となってしまい、
このスツーカも、37mm機関砲を搭載して、対戦車戦闘に特化してゆく事になるわけです。
ソ連にしろ、アメリカにしろ、どこで何をやるにも、戦車、戦車です。
ソ連にはT34、アメリカにはM4シャーマンという、
ともに5万台近い生産数を誇る戦車があったので、
常にこれを前面に押し出しての戦闘となってゆきます。
この点、それこそ1号戦車からポルシェ博士のマウスまで(笑)、全部あわせても
全戦車生産数でギリギリ5万台前後だったと見られるドイツは、
まさに倍、という敵の戦車によって一方的にタコ殴りにされてゆくわけです。
(連合軍の戦略爆撃レポートによれば駆逐戦車も含めて1940-1945年の全ドイツ戦車生産数は約46000両)
そこで、航空機による対戦車戦闘となるのですが、
戦争後期になると航空優勢も失われており、鈍足のJu87では飛ぶ事だけでも
自殺行為といった状況になってしまいます。
このため、戦争後半になると、元は戦闘機で低高度なら十分高速な
Fw190がその任務に就くようになって行きます。
なので1945年4月の段階で総計150機前後の稼動機体が各地に配備されていただけでした。
このロンドンにあるのは最後のG型、それも最終進化系とも言えるG2です。
…ただし、微妙なトコがある、というのは、最後に書きます。
ついでに、この展示、非常に撮影が厳しい環境でして、そこら辺はご容赦アレ。
G2型はD型のD5として生産された機体をベースに、後から改修されたタイプです。
初期のG型はD3型からの改装ですが、G2はD5型からのみ改修されてるようですね。
対戦車戦闘に特化したG型でも、特にそれ以外の各種装備を
徹底的に取り外してしまったタイプとなります。
ドイツ機の場合、改造パーツを旧型機に取り付けて新しい型にしてしまう、というは結構多いです。
とりあえず、G2に改造された機体はかなり少なく、
総数で200機前後と見られてますから、貴重な機体でしょう。
ただし、G型の特徴である、主翼下のBk37 37mm機関砲は失われてます。
展示の機体は、ドイツ降伏後の1945年の5月、工場で鹵獲されたようだ、
とされてるので、もしかしたら、改修してるうちにに終戦となったのかも。
で、この機体は最初から博物館での展示を目的としてイギリスに持ち込まれており、
このため、テスト飛行などは行ってないようです。
ちなみに、この機体と同時に博物館用にイギリスに持ち込まれたドイツ機は12機。
同じような目的で持ち込まれた日本機は4機でしたから、
いかにイギリス人が日本の機体に興味が無かったか、というのがよく判るかと(笑)…
その12機のうち9機が現存し、イギリス国内の博物館に展示中です。
ついでにこの機体、映画「空軍大戦略(Battle
of Britain)」にも出演してるんだとか。
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