開戦から約1年における情報と戦訓のまとめ

2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナへの侵攻から、ほぼ一年が経過しました。現状、双方がインターネット上で膨大な情報戦を展開しており、今回の宇露戦争は人類がかつて経験した事がない形態の情報戦争となっています。当サイトではこれを掲示板で随時追いかけてきましたが、あまりに情報量が多く、時間を遡って情報を調べるのも困難になってきています。

よってこの段階で、ここまでに明白になっている事、そして両軍からリアルタイムで出て来た「全く新しい戦争の戦訓」を一度まとめて置く事にしました。これらの情報の裏では多数の人命が失われている、という事実を忘れないようにしながら、記事を始めたいと思います。



■Photo ARMY INFORM  クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際ライセンスに基づき引用。以下同。

今回の戦争のもう一つの特徴がロシア軍によるウクライナの民間施設に対する無差別に近い攻撃、そしてある程度目標を絞り込んだ上での送電網などエネルギー関係施設への攻撃です。これらは多数の人命を全く無意味に奪っている点で許されざるものであり、ロシアの罪は極めて重いと言っていいでしょう。

そもそも民間人への無差別攻撃が戦争の状況に影響を与えない点は、既に第二次大戦時における連合軍のドイツと日本に対する爆撃調査で確認されています(戦後にアメリカがまとめた報告書「United States Strategic Bombing Survey」。そもそも民間への無差別爆撃への評価はほとんど行っていない。調査に参加したハーバード大学教授のガルブレイス(John Kenneth Galbraith)らの指摘によると、ドイツ都市部への無差別爆撃は戦争への影響はほぼ無く、兵器生産にすら何の影響も与えてない。それどころか無差別爆撃で生き残った人達は職を失い、ドイツ政府が配布する配給切符を入手するために軍需工場に集中した結果、生産性が上がったとする。ついでに言えば民間人への無差別攻撃は戦意を喪失させるどころか、より強い敵への憎悪に繋がり、戦意は高まってしまう傾向がある)。

よって、今回の無差別攻撃も戦争の行方にも大きな影響を及ぼさないでしょう。このため今回の記事ではこの点には触れません。純粋に戦略、戦術的な観点に問題を絞り込みます。
(ただしこの点においてはウクライナが工業国家でない、という面があるのも事実。「F-22への道 」の記事中で指摘したように産業と経済に対して重要な影響を与える致命的な点、中枢点(Hub)があるなら、そこを叩く戦略爆撃は有効である。ただしいずれにせよ、民間人を殺す事に全く意味は無い。今回の戦争におけるロシアの罪は極めて重い)

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